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狭山事件第3次再審請求の第15回3者協議が10月28日にひらかれた。東京高裁第4刑事部の河合健司・裁判長、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団の中山武敏・主任弁護人、中北龍太郎・事務局長ら10人の弁護人が出席した。
弁護団は、3者協議に先立って、10月17日に手拭いに関する新証拠と証拠開示勧告申立書を提出し、さらに10月25日には、殺害方法について検察官の意見書に反論し、殺害方法が白白と一致しないことを明らかにする法医学鑑定書と再審請求補充書などを提出した。
被害者の死体を後ろ手に縛っていた手拭いは市内の米穀店がこの年の正月に得意先に配付したものであり、警察は5月4日の死体発見直後から配付先を捜査した。石川さんの家にも手拭いが1本配られていたが、5月11日付けで警察に提出されている。素直に考えれば石川さんは事件とは関係ないことになるはずだ。しかし、捜査に携わった検察官は2審の法廷で「TBSテレビが手拭いについて放送したので家族が手拭いを義兄か隣家から都合をつけて警察に提出した」と証言し、東京高裁の有罪判決も家族による偽装工作として、手拭いの入手可能性を有罪証拠のひとつにあげたのである。
ところが事件発生から50年たって、ことし3月にようやく証拠開示された捜査報告書には、事件直後の5月6日昼過ぎの午後0時20分に警察官が石川さん宅で手拭いを確認していることが書かれていた。
さらに、弁護団の弁護士会照会による事件当時の放送内容の問い合わせにたいするTBSテレビの回答書によれば、TBSテレビが手拭いについて放送したのは1963年5月6日の昼のニュース(午後0時2分過ぎから50秒程度)であった。すなわち、開示された当時の捜査報告書とTBSテレビの回答書で、手拭いのニュース放送から警察官が手拭いを確認するまでわずか17分しかないことが明らかになった。この間に石川さんの家で手拭いを都合つけたことは考えられない。
また、同じくことし3月に証拠開示された死体発見直後の5月5日の捜査報告書の手拭い配付一覧表では石川さんの義兄の家へ配られた手拭いは1本と書かれており、「2本配付され1本は警察に提出し、もう1本が石川さんの家にまわった」とする検察官の主張と食い違う。しかも、この配付数を示す「1」が上下に線を書き加え「2」と見えるようにされているのだ。弁護団は、別の筆記具による書き加えによって数字が変造されているとする鑑定意見書もあわせて提出した。警察、検察の捜査が犯行に使われた手拭いの出所をつきとめる捜査から石川さんにどう結び付けるかという捜査に変質した疑いを示している。
これら今回提出された新証拠によって、検察官の手拭い入手可能性についての主張が成り立たないことは明らかになり、それを根拠にした有罪判決に合理的疑いが生じたというべきだ。今回の新証拠は、犯行に使われた手拭いが石川さんの家のものではないこと、石川さんの自白が虚偽の自白であり、石川さんの無実性を示すきわめて重大な新証拠である。
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弁護団は、これら新証拠を提出するとともに、手拭いについてのTBSの放送内容に関する捜査報告書や石川さん宅周辺の手拭い配付先にたいする聞き込み捜査報告書などの証拠開示を求めた。しかし、今回の3者協議で、検察官は開示におうじず、河合裁判長は検察官に検討を促し、継続して協議する課題となった。検察官はすみやかに開示すべきだ。
今回の3者協議では検察官がつけた番号が飛んでいる証拠物の開示も問題となった。とくに、未開示の証拠物のなかに当時集められた筆跡資料があることを検察官も認めており、弁護団は開示を求めてきた。
第14回3者協議で河合裁判長も、証拠物など客観的証拠については開示の方向で再検討を促した。しかし、検察官は10月11日付けで、これら未開示の筆跡資料について、開示の必要性はなく、プライバシーにかかわるので開示しないとする意見書を提出し、3者協議でも開示におうじなかった。
弁護団は、狭山事件では筆跡が確定判決の証拠の主軸となっており、関連性も必要性もあること、プライバシー侵害のおそれはないとして開示を求め、今後の協議で開示の方向性を検討することになった。徹底した証拠開示と新証拠の事実調べが必要だ。
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次回の第16回3者協議は来年1月末にひらかれることになった。手拭いについての重大な新証拠も証拠開示によって発見された。当時の捜査報告書などの証拠開示がいかに重要かを物語っている。しかし、弁護団の具体的な証拠開示の要請にたいして、検察官は「必要性がない」などとしておうじようとしていない。そもそも、弁護団には検察官手持ち証拠の内容さえわからないのである。検察官だけが、手持ち証拠の内容を知っていて、一方的に「必要性がない」「プライバシーにかかわる」として開示を拒否するというのは誰がみても不公平・不公正である。私たちは、証拠開示を求める世論をさらに大きくしていかなければならない。
半世紀無実を叫び続ける石川一雄さん、早智子さんを3年間撮り続けたドキュメント映画「SAYAMAみえない手錠をはずすまで」の上映が各地ではじまっている。映画を通じてえん罪と50年闘い続ける石川さんの姿をより多くの人に知ってもらい、証拠開示と事実調べを実現し再審無罪に向けた運動を広げたい。狭山事件50年のパネル展とあわせて映画の上映運動をすすめよう。
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