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憲法改悪を先取りする「秘密保護法案」の阻止に向けて全力で闘い進めよう

「解放新聞」(2013.12.02-2645)

 憲法改悪をめざす安倍政権の暴走が続いている。11月7日には、「国家安全保障会議(日本版NSC)設置関連法案」を衆議院特別委員会で強行採決し、「秘密保護法案」を審議入りさせた。日本版NSCは、「官邸機能の強化」を目的に、首相、官房長官、外相、防衛相による4大臣会合を定期開催し、首相が外交や安全保障に関する事項を決定するというものだ。
  この日本版NSCと一体として位置づけられているのが、「秘密保護法案」である。それも、秘密保護の法律がなければ、外交・安全保障の情報を一元化するために設置する日本版NSCに、米国から安心して情報を提供してもらえないという、お粗末な理由である。
  しかし、いかにお粗末な理由であれ、市民の基本的人権を侵す天下の悪法であることには変わりない。
  「秘密保護法案」では、何が秘密であるのかがわからないうえ、行政機関の長が「国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」と判断すれば国会に提供しなくてもよいとされている。これでは、一部の権力者に都合のよい恣意的な運用があらかじめ公認されているに等しい。しかも、指定された「秘密」を知ろうとする報道機関や市民を罰するというように、監視の対象にさえしている。こんな民主主義破壊の悪法を許すことはできない。法案の阻止に向けて全力で闘いをすすめよう。

 日本版NSCは、米国のNSCの模倣である。米国NSCは、これまでもアフガニスタンやイラクへの軍事介入を指揮してきた。こうした軍事司令塔の機能をもつ機構を設置すること自体が、戦争の放棄を明記している憲法違反である。米国NSCの活動を支える国家安全保障局(NSA)は、メルケル独首相の携帯電話を傍受するなど、世界各国での違法な諜報活動が大問題になっているが、日本版NSCでも、まったく同様な国家安全保障局を置くことになっている。そもそも、米国のイラクへの軍事介入は、イラクに大量破壊兵器が隠匿されているという情報をもとにおこされたもので、いまやこの情報がウソであったことは明らかになっている。当時の小泉首相は、こうしたウソ情報をもとにした軍事介入をいち早く支援したが、その根拠になったウソ情報の検証、誤りを認めていない。
  「秘密保護法案」が成立してしまえば、こうした情報へのアクセスを試みたり、追及したりすれば罰せられることになる。「政府が持つ情報は、その国の市民のものである」というのが世界の基本原則であり、今年の6月に公表された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)でも規定されている。安倍政権は、こうした国際的常識が理解できていないのだ。

 「秘密保護法案」には、人権にかかわる大きな問題点もある。特定秘密をあつかいそうな公務員、企業関係者への「適性評価」である。本人はもとより、家族、親族、同居人の犯罪や懲戒歴をはじめ、住所、国籍などの身元調査を公然と容認している。また、配偶者の「過去の国籍」も調査項目にあげられている。まさに「人種差別撤廃条約」違反であり、今日大きな社会問題になっている興信所・探偵社などによる差別身元調査を国が公然とおこなうのである。この法案は、差別容認の法案でもある。
  「アベノミクス」なる経済成長路線で支持率を維持している安倍政権は、経済発展を最優先の課題にしながら、そのためには民主主義や人権を制限してもかまわないという政治理念が根底にある。みずからの誤った歴史観をもとにした言動で米国依存を深めつつ、アジアで孤立し、緊張関係を作り出す自作自演で戦争をする国づくりをすすめる。そのためには、民主的な政治システムにかわって、みずからの政権に都合のよい社会制度をつくろうとしているのである。それが憲法改悪の狙いであり、かつての侵略戦争に突きすすんだ道につながっている。
  「秘密保護法案」は、その先取りであり、政府が都合の悪い情報を隠蔽するのみならず、民主主義を否定し、市民を監視し、弾圧する社会につくり変えるきわめて危険な法案である。
  野党の一部がすすめる法案の修正協議もまったく理解できない。人権と平和を求めるすべての力を結集して、法案の成立を断固阻止しよう。

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