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保育実践、現状・課題もちより、第36回全国人権保育研究集会で論議・交流を

「解放新聞」(2013.12.09-2646)

 世界保健機構(WHO)は、一人の女性が一生に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」世界保健統計を2013年5月に発表した。日本は1.41人で前年の1.39人から0.02増えていると発表した。1.4人台の回復は1996年いらい16年ぶりとなった。
  一方、出生数は、前年より1万3705人減り、103万7101人と過去最少となった。また、年年上昇している第一子出生時の母親の平均年齢は、前年から0.2歳あがり30.3歳で過去最高となり、「晩産化」がすすんでいる。
  国立社会保障・人口問題研究所の「第14回出生動向基本調査」(2010年)では、夫婦にたずねた理想的な子どもの数(平均理想子ども数)は、前回調査に引き続き低下し、調査開始以降もっとも低い2.42人となった。また、夫婦が実際にもつつもりの子どもの数(平均予定子ども数)も、初めて2.1を下回り、2.07人となった。子ども数が下回る理由としてもっとも多いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」であった。とりわけ30歳未満での若い世代ではこうした経済的理由を選択する割合が高い。政府は子育て支援や制度の見直しと、そのための財源確保をおこなうべきだ。

 2012年5月、ユニセフの研究機関であるイノチェンティ研究所が発行する、先進国の子どもたちの状況を調査・分析した報告書「Report Card10-先進国の子どもの貧困」が発表された。現在、日本の子どもの相対的貧困率は14.9%、約305万人の子どもたちが貧困のなかで暮らしており、OECD35か国中、相対的貧困率の高い方から9番目にランクされ、先進国のなかでも高い数値を占めている。
  また、貧困の拡大・固定化に加え、地域コミュニティーが希薄になり、子ども自身や子育て世帯(保護者)が孤立化を強め、自死や虐待をはじめ、体罰やいじめといった子どもにたいする人権侵害が増加している。厚生労働省は2012年度の児童虐待相談対応件数は前年度比6888件増の6万6807件となり、過去最多に更新したと発表した。これには、児童虐待にたいする社会への関心が高まり、近隣住民などの通報や情報提供が寄せられ増加したという要因もある。しかし、子どもたちの命にかかわる深刻な状況がおこっている。

 2013年4月1日時点での保育所入所待機児童数は、前年の同時期より2084人少ない2万2741人で3年連続減少した。しかし、自治体によって「待機児童」の数え方が異なっており、判断にばらつきがあるため、正確な実態を把握しきれず、潜在的な待機児童は数十万人ともいわれている。
  こうした少子化や子どもの貧困問題、また、経済大国でありながら保育・幼児教育にかける公的支出が先進国で最低レベルという状況のなか、2012年8月、子ども・子育て関連3法が成立し、2013年4月子ども・子育て会議が設置された。6月には結婚・妊娠・出産への支援を柱にした少子化危機突破のための緊急対策を決定。さらに、子どもの貧困対策の推進に関する法律が成立し、子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることのないよう、国と自治体が協力して、教育支援、生活支援、就労支援、経済的支援などの施策を策定し、実施することを義務づけた。
  安倍政権は「待機児童ゼロ」をめざし待機児童解消加速化プランを打ち出し、小規模保育事業を柱の一つに位置づけた。消費税増税分を使って費用を補助し、2017年度までに保育のうけ皿を40万人分増やす方針だ。10月には、小規模保育運営支援事業等の要綱を示し、配置基準についても、保育士の資格者が半数、またはゼロでも可とする類型を設定した。また、子ども・子育て会議の資料のなかにも「質の高い教育・保育を実施する」といった言葉がみられるが、社会的疑念は払拭できない。
  その意味からも、国際的にも低いといわれる現行の保育基準をさらに悪化させる可能性が高くなるのではないかといわざるをえない。

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  来年1月11、12日の2日間、大分県での開催は初めてとなる第36回全国人権保育研究集会を、別府市・ビーコンプラザを主会場に開催する。
    2015年4月から新制度が本格施行され、これまでの保育制度が大きく変わろうとしている情勢をふまえ、子どもたちの「最善の利益」を考え、すべての子どもたちの0歳からの全面発達が社会的に保障されなければならない。私たちが現場で培った「皆保育」の理念、解放保育運動の理念をいま一度確認する集会としよう。そして、すべての地域で差別を見抜き、打ちかつ力を育てるとともに、すべての子どもたちに差別を許さない、人権を尊重する価値観を育てる解放保育・人権保育運動をよりいっそうすすめていかなければならない。全国各地の子育てをとりまく現状と課題を明らかにし、理論と実践を交流し、第36回全国人権保育研究集会を成功させよう。

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