人権と平和の危機に
世界人権宣言65周年を記念し東京・大阪集会
「解放新聞」(2013.12.23-2648)
【大阪】世界人権宣言65周年記念大阪集会を12月10日午後、大阪府立労働センター(エルおおさか)でひらき各界から800人が参加。作家の大江健三郎さんが「これからの日本と世界の平和と人権を考える~広島、長崎、沖縄、東日本大震災をふまえて」を講演した。主催は世界人権宣言大阪連絡会議。
主催者あいさつで上杉孝實・代表幹事は、憲法を 「改正」、骨抜きにしようとする動きについて、戦争でアジア・太平洋諸国に大きな被害を与えたこと、広島と長崎への原爆投下、いまも米軍基地が集中している沖縄、東日本大震災と原発事故などをふまえた考察が必要と指摘した。
安田 浩一(ジャーナリスト)
在特会結成の前年、警察官に射殺された中国人の国賠裁判の取材時、ネット掲示板を見て集まり「不逞シナ人」を「射殺せよ」などとシュプレヒコールする若者や主婦らに出会った。こうしたヘイトスピーチは日本社会で連綿とうけ継がれてきたもの。翌07年に結成した在特会の背景にも、ずっと妄想をもとに特定の人を排除し、傷つけてきた日本社会がある。メディアもヘイトスピーチを容認してきた罪深さを自覚せねばならない。日本には現在も、電車内の週刊誌の広告など、さまざまな形で対立や憎悪のメンタリティを増幅するものもある。しかし、日本社会には確実にもう一つの力があり、在特会などのヘイトスピーチに抗議するカウンター行動も大きくはじまっている。「あなたがたの敵は在日でも左翼でもメディアでもない。敵はこの社会だ」と在特会にいえる社会をともに創ろう。
辛淑玉(のりこえねっと共同代表)
「秘密保護法」も外国人を犯罪者、スパイ、テロ要員と扱う。私たちはずっと管理され、犯罪者予備軍とされてきた。こういう「上からのレイシズム」と、「いい韓国人も悪い韓国人も殺せ」という「下からのレイシズム」がはじまっている。戦争になれば、日本でも韓国でも北朝鮮でも一番先に殺されるのが、国境の境目で生きる私、在日である。だからこそしっかりと社会を築きたい。人種差別が人類史をこんなに過酷にした。だから、つぎの世代はそうあってはならない。この先人たちの思いにヘイトスピーチは唾を吐く。だから「のりこえねっと」を立ちあげ、当事者が声をあげた。ホームページを立ちあげ、ヘイトデモ・ヘイトスピーチ対策、エンパワメント、ホワイトリボンキャンペーンなど活動をはじめている。新大久保の事務所は1月10日にひらく。ともに生きる社会を創ろう。
大江健三郎(作家)
3・11以降、新しい現代の続きを考えようとしている人びとは原発のない世界をつくろうという構想をもち続けている。それはつぎの世代の生きる場所をつくるということ。
しかし政府はいま、それをもう⊥度、元に戻そうとし改憲しないまま、日本の国の形を変えようとしている。福島の公聴会ではすばらしい発言が続いたが、その翌日、秘密保護法を衆院特別委でとおした。これは明らかな侮辱だ。検挙される人がきっとでてくるし、人は本当のことを話さなくなり、日本社会がゆらぐだろう。法ができたために人間が追いつめられていることを文学で表現しなければならない。あらためて廃案にしよう。侮辱への抵抗は人権を守ること。つぎの世代が生きていく社会をつぶさないことが私たちのモラルだ。世界人権宣言は根本的なモラルを一番まとめている。
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