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狭山事件再審弁護団は昨年12月25日に新証拠と証拠開示勧告申立書を提出した。
提出された新証拠は、昨年7月に証拠開示された被害者が当時使用していたインク瓶を閲覧・写真撮影し、ブルーブラックとは異質のインクであることを示す報告書である。石川さんの家から自白通り発見されたとして有罪証拠となっている万年筆のインクはブルーブラックであり、これが被害者のものではない疑いを明らかにした新証拠である。
さらに、これまでの再審を棄却した決定は、異なるインクが補充された可能性があるとして、インクの違いを説明しているが、今回提出された同種の万年筆による筆記再現実験報告書によれば、1回の補充で十分なインクが補充され、事件当日のペン習字の授業後にインクを補充することはありえないことも明らかだ。そもそも、家に帰ればインク瓶があるのに、万年筆を使う必要のない下校後に、立ち寄った郵便局で違うインクを補充することは常識的に考えてありえない。
カモイから発見された万年筆にはインクがほとんどなかったとされており、被害者の万年筆とは考えられないことも今回の弁護団の実験で明らかになった。
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これまでの15回の3者協議で開示された証拠は130点をこえる。とくに、2010年に開示された石川さんの逮捕当日の上申書は重大な新証拠である。狭山事件で確定判決となっている2審・東京高裁の有罪判決(1974年10月31日)は、脅迫状の筆跡が一致することが犯行と石川さんを結び付ける客観証拠の主軸だとしているが、これを出した寺尾裁判長も上告や再審を棄即した裁判官もこの上申書を見ていない。この上申書をもとにした筆跡鑑定もふくめて裁判所が事実調べをおこなうことはだれが考えても不可欠であろう。
また、裁判所は検察官に犯行現場を裏付ける血痕検査報告書の開示を勧告したが、検察官は不見当としている。弁護団はこのほかに犯行現場の裏付けに関する捜査報告書等の開示を求めたが、検察官はすべて不見当としている。結局、狭山事件では殺害現場を裏付ける証拠は何もないことになる。本来、検察官が犯行現場を特定し、犯人と結びつける証拠を明らかにしなければならないはずなのに、それがないままに自白頼みで有罪判決が出されている。犯行現場の根拠が自白以外にないのであれば、自白が真実かどうかの証拠調べは不可欠である。事件当日、隣接した畑にいて悲鳴を聞いていないと証言しているOさんの証人尋問や現場検証、殺害方法が自白と食い違うと鑑定している法医学者の尋問など、事実調べを東京高裁はおこなうべきである。
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昨年12月25日に弁護団は、有罪判決が「秘密の暴露」(犯人しか知らない事実を自白した)にあたるとした自白について、現地での走行実験にもとづく報告書も提出し、初期の捜査資料など関連する証拠の開示を求めた。また、これまで開示された証拠物のうち、検察官がつけた番号の抜けているものも開示するよう求めている。しかし、弁護団のこうした具体的な証拠開示の要請にたいして、検察官は存在を認めながら「必要性がない」「プライバシーに関わる」などとしておうじようとしていない。
これまで裁判所が勧告した犯行現場の血痕検査報告書や現場を撮影した8ミリフィルムなどは「不見当」として終わっている。そもそも、弁護団には検察官手持ち証拠の内容さえわからないのである。検察官だけが、手持ち証拠の内容を知っていて、一方的に「不見当」「必要性がない」「プライバシーに関わる」として開示を拒否するというのは誰が見ても不公平・不公正である。50年以上たった狭山事件で「プライバシー侵害のおそれ」は考えられないが、少なくとも具体的に指摘し開示の方法を協議すべきだろう。
また、「不見当」というだけでなく、検察官は手持ち証拠のリストを弁護側に提示すべきである。証拠リストの開示制度は、かつて司法改革の審議会でも捏起され、国会でもえん罪防止のための取り調べ可視化とあわせて議論され、証拠リスト開示をもりこんだ刑訴法改正案は参議院で2度にわたって可決された経緯もある。公正・公平な証拠開示を保障するために再審請求での証拠リストを弁護側に提示する法制度を一日も早く確立すべきである。私たちは、証拠開示を求める世論をさらに大きくしていかなければならない。
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弁護団は、ことし春には取り調べテープを分析した鑑定などを提出し、事実調べを求めていくとしている。東京高裁が事実調べを判断する段階に入る今年は第3次再審闘争の正念場の年である。半世紀間、無実を叫び続ける石川一雄さん、早智子さんを3年間撮り続けたドキュメンタリー映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」の上映会がすでに昨年までで30か所以上でおこなわれた。映画を通じてえん罪と50年闘い続ける石川さんの姿をより多くの人に知ってもらい、証拠開示・事実調べ・再審無罪にむけた運動を広げたい。狭山事件50年のパネル展とあわせて映画「SAYAMA」の上映運動をすすめよう。東京高裁に要請ハガキを送ろう。
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