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第16回3者協議ふまえ、狭山再審実現へ力を尽くそう

「解放新聞」(2014.02.24-2656)

 石川さんの自白では、脅迫状を届けたときに被害者宅の隣の家の前に車が駐車しているのを見たことになっている。この白白と一致する車の駐車をしていたという男性の証言があり、これは自白によってはじめてわかった、犯人しか知らない「秘密の暴露」だとして、確定判決は有罪証拠のひとつにあげた。
  弁護団は、この車の駐車に関する当時の捜査書類を開示するよう求め、昨年1月に検察官から捜査報告書などが開示された。脅迫状が届けられたのは午後7時半頃となっているが、開示された警察の捜査報告書には、被害者宅周辺の当初の聞き込み捜査で、この時刻前後に車の駐車があったという聞き込みは得られなかったと記載されていた。さらに、車の駐車を目撃した人や車を駐車していた男性白身の当初の供述では、車の駐車が午後7時半ではなく、もっと早い時間帯であることも判明した。
  弁護団は、昨年5月1日に狭山現地での検証や車の走行実験もおこない、車の駐車が当日の午後4時半~5時頃と考えられることを明らかにし、脅迫状が届いた時間や自白と一致せず、車の駐車を「秘密の暴露」とした有罪判決が誤りであったと主張している。
  関係者の供述は、その後、自白に合うように遅い時間帯に変遷しているが、事件当日の降雨状況(午後4時半から本降り)や走行再現実験などから変遷後の供述は信用できず、警察が作り上げた疑いがあることも明らかになった。また、5月1日の現地での検証によって、そもそも午後7時30分頃に、自白のように駐車した車が見えないことも明らかになった。
  弁護団は、開示された捜査報告書など5通、狭山現地検証報告書、走行実験報告書など13点の新証拠と、車の駐車の事実は脅迫状が届けられた時間よりもずっと早い時間帯で有罪確定判決には合理的疑いが生じたとする再審請求補充書とを1月30日提出した。今回提出された新証拠をあわせて、第3次再審請求で提出された無実の新証拠は133点になった。
  ことしは確定判決から40年になるが、この40年間一度も事実調べがおこなわれていない。東京高裁はこれら新証拠の事実調べをおこなうべきである。
 

 2014年1月31日、東京高裁で狭山事件第3次再審請求の第16回3者協議がひらかれた。東京高裁第4刑事部の河合健司・裁判長、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団からは、中山武敏・主任弁護人、中北龍太郎・事務局長をはじめ12人の弁護士が出席した。あらたに弁護団に加わった平岡秀夫・弁護士(元法相)も出席した。
  協議に先立つ1月24日、東京高検は手拭い関係の捜 査資料2通を開示した。前回の3者協議で弁護団が開示を求めていたものの一部である。これで、これまでに開示された証拠は135点になった。
  しかし、弁護団が求めている番号が飛んでいる証拠物については開示に応じていない。そのうちの筆跡資料については、検察官はプライバシー侵害につながるので開示できないとしているが、協議のなかで弁護団は、具体的にプライバシーにどうかかわるのか明らかにすべきだとして開示を求めた。また、番号飛びの証拠物は筆跡資料だけではない。弁護団は、これらの証拠物のなかには万年筆など重要な争点にかかわるものがふくまれている可能性があるとして、未開示の証拠物のリストもふくめた開示を強く求めた。証拠開示について協議が続けられることになり、提出した新証拠もふまえて、弁護団は、あらためて証拠開示を求める。
  次回の第17回3者協議は3月末におこなわれる。徹底した証拠開示を東京高検、東京高裁に強く求めたい。

 事件発生から47年になろうとする袴田事件の第2次再審請求は静岡地裁でDNA鑑定、鑑定人尋問がおこなわれ、最終意見書の提出が終了し、いつ決定が出てもおかしくないといわれる。袴田事件では、この間、裁判所の勧告によって、検察官から600点もの証拠が開示された。そのなかから、袴田巌さんの無実を証明する証拠がいくつも発見された。新証拠によって浮かびあがった警察による証拠ねつ造を裁判所が認めるかどうかが注目される。静岡地裁は、袴田さんの健康状態もふまえ、すみやかに再審を開始するとともに袴田さんの身柄を釈放すべきである。
  狭山事件でも、2009年の東京高裁の開示勧告いらい、135点の証拠が開示された。石川さんの逮捕当日の上申書、カバン、腕時計の捜索報告書、犯行に使われた手拭いに関する初期の捜査報告書などが開示され、無実を示す新事実が明らかになっている。
  事件後何年もたった再審請求では、検察官がもつ裁判に出さなかった証拠を弁護側に開示することは真実-究明と公平な裁判のために不可欠である。とくに弁護側には検察官手持ち証拠の内容さえわからないという現状を改善するために、法制審議会の議論もふくめて証拠リストの開示を法制化すべきである。
  昨年10月末に完成した映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」はこの3か月間だけでも全国70か所以上で上映され、2月以降の上映会も50か所以上で予定されている。狭山50年パネル展とあわせてさらに全国で自主上映をすすめてほしい。
  弁護団が積み重ねてきた石川さんの無実を示す新証拠を一人でも多くの市民に伝え、証拠開示と事実調べの必要性を訴えるとともに、映画をとおして半世紀無実を叫ぶ石川さんの姿を多くの市民に見てもらい、署名や要請ハガキのとりくみをすすめ、世論をさらに大きくしよう。

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