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一昨年11月19日、和歌山県伊都振興局(県の出先機関)に、Y社(中古住宅販売)和歌山支店から建物(競売物件)に関する建築計画概要書の閲覧の申し入れがあり、数枚の住宅地図などがファックスで送付されてきた。そのなかにY社の内部資料である「競売仕入れチェック表」が3校混じっていた。「チェック表」は、再販を目的に物件の詳細な状況と本社への購入申請書をあわせたもの(Y社統一用紙)で、通常は社外に出ることがない内部資料であるが、担当者が誤って送付したものである。
「チェック表」を確認すると、「特記事項」の欄に「同和地区であり、需要は極めて少なくなると思われます」と記載され、欄外の余白に「同和地区」と書かれ、それぞれ「同和地区」という文言が「○」で囲われていた。ほかの2校もほぼ同様の書き込みがされていた。
和歌山県は、重大な差別として同和歌山支店にたいし、支店長と担当者(チェック表の記載者)をよび、11月から12月にかけ事情聴取(確認)をおこなった。さらに、明けて1月にY社の本社がある群馬県に情報提供をおこなうとともに、2月に国土交通省に情報提供をおこない、Y社への指導を依頼した。
Y社は、群馬県桐生市に本社があり、東京本部を中心に北海道から沖縄まで全国に107か所の事業所を置く、業界大手の中古住宅販売会社である。
和歌山県からの依頼をうけた国土交通省は、「宅建業法」にもとづきY社への事情聴取・報告書の提出など指導を継続しておこなってきている。また、和歌山県も知事名での文書指導をはじめ継続したとりくみがおこなわれてきている。さらにその後、本社による和歌山支店への調査で、同様の「チェック表」が、新たに4枚(1枚は大阪)が発見されている。なお、Y社は現在、社名が「Y」から「K」に変更されている。
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一連の経過をふくめ、部落解放同盟和歌山県連に事件の報告があったのは昨年5月中旬である。以降、中央本部、和歌山県連、群馬県連(本社の所在地)が連携し、8月と11月の2度にわたって「事実確認会」を和歌山で開催した。
確認会で、「チェック表」の記載者Aは「以前、同和地区の物件を担当し、売れずに苦慮した」「同和地区の物件を担当したくない」「(競売物件)入札しないでほしい」という気持ちで書き込みをしたと動機を語った。これにたいし、支店長は、「何も気にせず、そのまま本社に送った」「県からの指摘後も本社に報告していない」とあきれた回答をくり返し、本社は「書き込みに気づかなかった」「通常に処理をした」と、まったくチェックしていないということであった。参加者から、「会社として、同和地区をチェックしているのでは」との疑問を投げかけられ「会社として、そういうことはおこなっていない」「Aが勝手におこなったこと」と、疑問を否定した。
確認会では、さらに、「今回のことは、氷山の一角であり、ほかにもあるのではないか」という指摘をおこない、全支店への調査を要請し、終えた。
第2回確認会で、Y社から「13府県26件」で「チェック表」に同様の書きこみがあったことが報告され、なかには「特殊地区」「D地区ど真ん中。地域性注意」「同和内ど真ん中。安く買う」という記述もあった。これまで、「和歌山支店のAによるもののみ」としていたことが大きく崩れたのである。「全体的に見れば件数は少ない。報告したことが会社の誠意であり、会社くるみではない」と、ひらき直りともとれる会社側の発言まで飛び出した。だが、どういい逃れをしようとも、こうした行為が全体的に常態化していたということであり、人権問題にまったくとりくんでこなかったということもあわせ、「Y社の体質」と指摘せざるをえない。
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和歌山に端を発した「Y住宅販売会社差別事件」は、全国的な差別事件へと広がり、現在、当該の各府県連で事実調査、確認がおこなわれている。しかし、このことは今回の「Y社」だけの問題ではない。これまで、大阪をはじめ各地でおこった土地差別調査事件、日常化している行政窓口への「同和地区所在地」の問い合わせなど、市民(社会)のなかに根強く存在する部落にたいする「忌避意識」がその背景にあるということは明らかである。今回のY社の場合も記載者Aが「以前、売れなくて苦慮した」とその動機を語っている。さらには、個人情報大量不正取得事件や『週刊朝日』差別記事掲載事件、また、「過去帳」開示問題など一連の差別事件と軌を一にするもので、部落の所在地を確認し、身元調査や「出自」を探る行為が社会に横行しているのである。
かといって、Y社の責任が免れられるものではなく、差別行為をおこない、拡大再生産した責任は重く、全国的な状況を把握したうえで、厳しい糾弾をしていかなくてはならない。また同時に、この事件を「Y社」だけの問題ではなく、不動産・住宅関係業界全体の体質をかえていく方向へととりくみをすすめていく必要がある。
昨年7月23日付けで、国土交通省から全国宅地建物取引業協会をはじめ業界8団体に「不動産業に関わる事業者の社会的責務に関する意識の向上について」という文書が出された。そのなかで「未だ一部において人権尊重の観点から不適切な事象が見受けられる」として、「同和地区、在日外国人、障害者、高齢者等をめぐる人権問題の意識の向上を図るため不動産業として不断の努力が求められる」と業界のとりくみを求めている。これは、一連の「土地差別」の続発を背景にしたものであるが、大阪府など一部を除いて、業界全体でのとりくみがきわめて弱い実状にある。
こうした状況をふまえ、国土交通省や各府県に積極的な行政指導を求めるとともに、「ガイドライン(行動基準など)」の策定など業界自身の主体的な体制の構築やとりくみを追及していかなければならない。
Y住宅販売会社差別事件を糾弾するとともに、部落にたいする「忌避意識」に迎合するのではなく、差別を許さない不動産・住宅業界を構築するために、いっそうのとりくみをすすめていこう。
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