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東日本大震災・福島原発事故から3年、被災者支援の継続と脱原発社会の構築を

「解放新聞」(2014.03.10-2658)

 東日本大震災と福島第1原発事故から3年が経過しようとしている。しかし、東北3県の復興の速度はあまりにも遅く、いまだに28万人が避難生活を続けており、ほとんどの人が仮設住宅や借り上げ住宅で暮らしている。復興支援策も堤防や地盤かさあげなど公共事業が中心で、避難を余儀なくされている多くの人びと、被災した人びとの雇用や生活面の立て直しがすすんでいない。将来に希望がもてず、アルコール依存や精神疾患に陥る人が増え、児童虐待やDVも増えているという。ソフト面の支援、人権の視点から「困難を抱えた人たち」への支援施策を強化することが必要だ。
 

 福島県の被災者は、原発事故の影響が加わりさらに困難な状況にある。3年たったいまも、依然として原発事故は収束の目途もたたず、復興を妨げている。
  震災時に運転停止状態だった4号機は、余震で倒壊の危険性があり、やっと核燃料プールにある大量の使用済み核燃料の移動がはじまった。しかし、1号機から3号機までのメルトダウンした核燃料は、処理方法もなく手がつけられず、建屋内部の状況もいまだに十分わかっていない。メルトダウンした核燃料や使用済み核燃料などは冷やし続けなければならず、汚染水と貯蔵タンクも増え続けている。海や土壌、地下水などへの汚染水漏れがたびたび報道されるが、実態がどこまで調査できているのか、十分に情報が公開されているか疑問である。
  放射性物質が飛散した周辺自治体では、「除染」をして住民が帰還できるようにするというが、放射能がなくせるわけではないので、放射性物質を「移動」させることしかできない。移動先が見つからなければ「除染」はできないので、「除染」がすすまない地域が多い。また、森や林など除染対象にならない場所も多く、「除染」の効果が十分あらわれない地域もある。そして、原発事故から3年近くたったいまでも、14万人をこえる避難者をはじめ多くの被災者が、満足な補償もうけられないまま、暮らしや健康など将来への不安を抱えた生活を余儀なくされている。
  また、原発事故の収束に向けた作業のなかで、被曝労働者が大量に生み出されており、弱い立場の下請けの労働者が犠牲になる構造も明らかになっている。そして、原発事故の収束には今後も莫大な国家予算・国民の税金が必要となる。

 原発事故の収束が先も見えず、事故原因の徹底調査も終わらないうちに、安倍首相は民主党政権がかかげた「2030年代に原発をゼロとする」との方針を見直し、新たなエネルギー基本計画の策定を急いでいる。そして原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原発再稼働と核燃料サイクルを推進しようとしている。現在稼働している原発はゼロだが、7電力会社9原発16基が再稼働に向けた審査を申請しており、安倍政権は、原子力規制委員会で「安全」が確認された原発から順次再稼働させていこうとしている。
  私たちは福島原発事故から学んだ教訓を生かさなければならない。人間の命と健康、そして安心して暮らせる環境が最優先である。そのためにも再生可能エネルギーの開発・普及や地域分散型のエネルギー政策を推進し、脱原発社会の構築をめざさなくてはならない。
  人びとの命と人権に背を向ける安倍政権の施策を批判し、東北3県の震災からの復興の加速、原発事故の収束と事故原因の徹底究明を求めるとともに、復興支援のとりくみ継続と、脱原発社会実現のとりくみを推進しよう。

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