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教育の国家統制を阻止し、人権・同和教育を前進させよう

「解放新聞」(2014.04.21-2663)

 第2次安倍政権の政策の柱でもある「教育再生」の号令のもと、教育委員会制度、教科書検定制度、道徳教育の教科化など、現政権がもくろむ「改革」が強権的にすすめられている。
  教育に限らず、経年とともに制度や内容を点検し、必要に応じて修正をはかるなど実情に即した改善にとりくむのは当然のことである。しかし、いますすめられている「改革」は、教育学の専門家による識見や、現場の教師や保護者からの切実な要望とはまったく無関係に、過去の歴史や現実の課題を直視しようとしない一部の人たちが、長年にわたって積み重ねてきた教育制度や内容を全否定し、破壊しようとするものである。
 

 近年、子どもたちの学力低下を喧伝する声に押されて、07年度から「全国的な学力調査」が実施されてきた。すでに耳塚調査(09年・お茶の水女子大)によって、子どもの学力格差は、家庭の経済力や保護者のかかわり方などのちがいが、学力格差の大きな要因の一つであるとの実証データと知見が示されており、莫大な費用を毎年投じる調査にかえて、子ども、家庭、学校支援など、学力保障に向けたきめ細かな支援策の充実と展開が求められている。
 また、子どものいじめ問題や犯罪など問題行動を、規範意識の低下など心のもち方の問題に矮小化し、道徳教育の教科化を強引におしすすめようとしているが、警察庁の公表資料でも、少年の犯した凶悪犯罪の件数は昔とくらべて減少しており、規範意識が低下していることを根拠とするのは誤りである。つまり、道徳教育を強化し、規範意識を高めれば、いじめや問題行動が減少するのではないか、という過去を美化する情緒的な復古主義者の希望的観測にすぎないのである。
  以前にもふれたが、いじめ自死が発生した中学校が 「道徳教育実践研究事業」推進校であったことは周知の事実だ。「生活保護」叩きや外国籍住民にたいするヘイトクライムなど、弱者いじめが横行する今日、人間の尊厳への理解を深め、憲法の基本原理でもある 「基本的人権の尊重」を基調とする人権・同和教育のいっそうの充実と実践こそが求められている。

 国家による一面的な道徳観、価値観の押し付けや、一方的に政府の主張のみを教えこむ国家統制の強化は、過度な競争に晒される子どもたちや多忙をきわめる教師たちから、さらに自由を奪い、これまで以上の抑圧を生み出す。また、さまざまな歴史や属性を有する人たちがともに生きる地域社会に、差別と分断をもちこむものであり、あらゆる差別を許さず、すべての人びとの人権が保障される社会をめざしてきた人権・同和教育とは、とうてい相いれないものである。
  政治には、いじめの背景にある経済的格差の拡大による貧困問題など、差別や人権侵害を温存する社会的諸問題の解決、教育行政に求められているのは、子どもたちの豊かで自由な学びを支える教育条件整備をはかることである。
  教育と学校を国家統制の装置とすることを断固として阻止し、すべての子どもたちが安心して学ぶことができる教育環境と教育内容を保障するために、各地で闘いの輪を広げ、人権・同和教育のとりくみを前進させよう。

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