【和歌山支局】「学校側に部落問題の認識がまったくなかった」。2011年2月に明らかになった新宮市内にある高校の生徒による差別語を用いた「いじめ」事件で、加害生徒、その保護者、学校のとりくみや指導の総括として1月30日、東牟婁総合庁舎で、県連と新宮支部、行政関係者らが参加して今回の差別事件での学校側のとりくみ報告会がもたれた。
この差別事件は、2010年9月以降、部落の生徒にたいして嫌がらせや暴力行為、部落民を侮辱するしぐさを継続的におこなっていたというもの。これにたいして学校側のとりくみは、「たんにいじめ行為」としての対応であり、部落問題の認識がまったくなかったと同時に、被害生徒への具体的な救済のとりくみもなかった。その結果、加害生徒の意識はかわらず、同様の行為が継続され、さらに加害生徒の保護者からは、さらに被害生徒の保護者の職業など、差別を煽るかのような情報が加害生徒に伝えられるなど、問題解決に向かう傾向をみせていなかった。こうした背景には、教育現場での差別事件へのとりくみ体制がないことや、根強い差別意識をもつ新宮市民の存在が明らかになった。
こうしたことからとりくみは、新宮支部、新宮市子ども会を中心に、被害生徒へのサポートをはじめ、学校側の人権意識の向上や行政のとりくみをすすめることによって、加害生徒と保護者の人権意識の向上、被害生徒の救済、進路保障、行政の組織的問題の改善、学校のとりくみ姿勢、具体的とりくみの計画を作りあげてきたことが報告された。
県連は、こうした問題は、教育現場では「たんなるいじめ問題」としてあつかわれることが多く、これまでも被害生徒が自傷(自殺)するなど、部落差別を無視したなかでのとりくみがされている実態をふまえ、今後、教育現場での教職員の人権意識の向上、具体的なとりくみの体制づくりをすすめ、差別事件を処理するのではなく、解決していくというとりくみに転換していく必要があると訴えた。
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