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1966年に静岡県でおきた袴田事件で、静岡地方裁判所(村山浩昭・裁判長)は3月27日、死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(78)の再審を開始する決定をおこなった。また、47年の長きにわたって獄中で苦しんできた袴田さんを東京拘置所から即日釈放した。死刑囚が再審開始と同時に釈放されるのは初めて。裁判所は「再審を開始する以上、死刑の執行を停止するのは当然」としたうえで、「これ以上拘置するのは耐え難いほど正義に反する」として釈放した。
再審開始決定のカギとなったのは、有罪の決め手とされてきた、味噌樽のなかから「発見」された「5点の衣類」についての証拠開示と事実調べだった。今回の第2次再審では、600点の証拠が開示されたうえで、犯行時の着衣とされた味噌樽から発見されたズボンや白半袖シャツなどの衣類についた血痕のDNA鑑定が実施され、裁判所は「5点の衣類が元被告のものでも、「犯行着衣」でもなく、後日ねつ造されたものであったとの疑いを生じさせる」とのべ、検察を厳しく弾劾し、再審開始を決めた。
袴田事件のえん罪の構図は、狭山事件とまったく同じだ。袴田さんは連日連夜、長時間におよぶ取り調べで虚偽の自白を強いられ、証拠ねつ造によって犯人にされた。狭山事件の石川さんも長時間の取り調べで虚偽の自白を強要され、決め手の物証とされた万年筆や腕時計のねつ造によって犯人にされた。
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袴田事件の再審開始は、えん罪防止と誤判救済で多くの教訓を残した。その一つは、証拠開示である。裁判所、検察側、弁護側の3者協議で、裁判所が証拠開示を検察に迫った結果、弁護団も驚く600点におよぶ証拠が開示された。その証拠のなかから「5点の衣類」のねつ造が浮きぼりになり、再審開始へとつながった。狭山事件でも、136点の証拠が開示されたが、いまだに検察は「証拠リスト」や「犯行現場」を撮影した8ミリフィルムなど重要な証拠の開示を拒み続けている。
証拠の開示は、誤判救済につながるきわめて重要なものなのだ。
二つ目は、事実調べである。静岡地裁は、弁護団がおこなった「犯行着衣」のDNA鑑定や味噌漬け実験、ズボンのサイズについて鑑定人尋問をした。それが捜査当局による証拠のねつ造を浮きぼりにした。狭山事件でも弁護団は、逮捕当日に石川さんが書かされた開示された上申書の筆跡鑑定、殺害方法に関する法医学者の鑑定書、腕時計のバンド穴の鑑定書、犯行手拭いが石川さんの家のものではないことを明らかにした開示された「捜査報告書」、カモイから発見されたとする万年筆が被害者のものではないことを示す新証拠など、数かずの鑑定書、新証拠を提出し、証人尋問や鑑定人尋問を強く求めているが、いまだに実現していない。
狭山事件は確定判決である寺尾判決からことし40年をむかえるが、この40年間、鑑定人尋問など事実調べは一度もおこなわれていない。あまりに不当、不公平な裁判ではないか。
袴田事件は、えん罪再審事件の裁判のあり方を司法関係者に教えている。すなわち検察官のもっている証拠の開示と、弁護側提出の新証拠について、裁判所が事実調べをおこなうことが、誤った裁判から無実の人間を救済するために欠かせないことを教えている。袴田事件では事件から48年をへて再審が決定された。袴田事件の再審開始を教訓として、あらゆるえん罪の防止、誤判救済のための司法改革、とりわけ弁護側への証拠開示を検察官の義務とする証拠開示の法制化を実現する運動を幅広くすすめていこう。
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狭山事件は今年5月1日、事件発生から51年目をむかえる。裁判官、検察側、弁護側の3者協議が5年間で17回続くなか、136点の証拠が開示され、それをふまえて弁護団はつぎつぎと新証拠を提出している。弁護団は、もう事実調べをしなければいけない、確定判決には合理的疑いがあると、裁判所がそう判断するまで証拠を積み重ねる必要がある、としている。今年5月以降は、東京高裁第4刑事部が、弁護団提出の新証拠について、鑑定人尋問などの事実調べをおこなうかどうかを判断していく、大きな山場をむかえることになると予想される。
こうした情勢をふまえて、部落解放同盟中央本部は4月7日、東京で全国狭山活動者会議・住民の会交流会をひらき、狭山第3次再審の今後の闘いについて意思統一をはかった。中央本部は、中央共闘、再審を求める市民の会とともに、5月23日、東京・日比谷野音で市民集会をひらく。全国の都府県連は、支援者とともに日比谷に結集しよう。また、映画「SAYAMA」の上映運動をすすめ、狭山事件の真相を市民やマスコミにアピールしよう。証拠開示が進展し、新証拠が積み重ねられているいまが、最大のチャンスである。
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