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「戦争のできる国」づくりに向けた策動を許さず、憲法改悪阻止の闘いに全力でとりくもう

「解放新聞」(2014.05.12-2666)

 4月1日、政府は武器輸出を基本的に禁止する「武器輸出3原則」を撤廃し、武器や関連技術の輸出を事実上解禁する「防衛装備移転3原則」を閣議決定した。日本の武器を世界に売り込むために、憲法9条にある「戦争の放棄」という平和主義の理念を投げ捨てるものである。これまでの「武器輸出3原則」は、政府自身が「憲法の平和主義の精神にのっとったもの」としてきたものであり、敗戦後、武器を輸出しなかったことで築きあげてきた世界平和への貢献と国際的信頼を損なう暴挙である。
  不断の努力によって、人権や平和の確立をめざす平和憲法の理念を放棄する安倍政権の憲法改悪策動を許してはならない。
  新原則は、紛争当事国や国連安全保障理事会決議に違反する場合は輸出や移転はしないとしているが、これは、旧原則では国際紛争当事国またはその恐れのある国としてあったものである。「恐れのある国」が削除され、「紛争当事国」の定義を狭めたことによって、おおよそあらゆる国に武器の輸出、関連技術の移転が可能になる。
  これでは、国際紛争の一方に肩入れすることによって、日本から輸出された武器が、国際紛争そのものを助長することになるのは間違いない。  

 これまでも安倍政権は、「積極的平和主義」を掲げ、「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設置や「特定秘密保護法」の強行成立など、憲法改悪に向けた策動を強めてきた。しかし、本来の積極的平和主義とは、国際社会で構造的暴力のない世界、つまり戦争や紛争のないこと、さらに差別や貧困が根絶されることをめざしたものであり、安倍政権のように、国際情勢を敵味方で区別して、軍事的貢献によって平和と安定のために役割をはたすことではない。
  いま、安倍政権は「積極的平和主義」のために集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の見直しをすすめようとしている。「憲法解釈の最高責任者は私だ」との国会答弁には、自民党内でも「選挙に勝てば、憲法解釈は自由という危うい発言」として異論や批判が出されている。しかし、安倍首相は、私的諮問機関にすぎない「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)での議論を主導させる形で、憲法解釈を変更しようとしている。
  しかも安倍首相は「北朝鮮が米国を攻撃した場合、阻止しなければならない」と国会答弁で北朝鮮を具体的な例にあげるなど、アジアの平和的安定に向けて求められている対話協調の姿勢も放棄している。こうした言動が日朝関係をさらに悪化させており、民族排外主義を煽り、ヘイトスピーチを生み出している。まさに自作自演である。

 安倍政権は、靖国神社参拝や尖闇諸島、竹島問題などで、中国や韓国との対立を深めており、来日した米国のオバマ大統領でさえ、集団的自衛権については「行使に関する事項の検討を支持する」というように、共同声明でも容認していないにもかかわらず、歓迎、支持されたと強調している。まったくのウソである。
  自衛権には、国際法上、自国が攻撃をうけたときに武力で阻止する個別的自衛権と、他国が攻撃をうけたときに反撃する集団的自衛権がある。これまで政府は、個別的自衛権の行使だけを認め、集団的自衛権は、憲法上許されないという見解を示してきた。
  安保法制懇は、こうした個別的と集団的という表記をしないで、「自衛権」とし、自国、他国にかかわらず、自衛権を行使できると解釈することを検討している。しかも個別事案は、日本版NSCで判断するという政府の恣意歴な判断が優先する。こうした解釈改憲のごまかしを許してはならない。
  いま、全国で憲法改悪阻止に向けて、「戦争をさせない1000人委員会」のとりくみがすすめられている。当面、戦争をさせない全国署名1000万署名運動と、各都道府県、各地域での地方組織の結成がよびかけられている。人権と平和、民主主義の実現をめざす私たちも、広範な人たちとの協働したとりくみをすすめていこう。
  殺す、殺されることを拒否し、最大の差別であり、人権侵害である戦争に反対し、憲法改悪阻止の闘いに全力をあげよう。

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