TPPの狙いをみきわめ部落の農業、畜産・食肉業を守るとりくみを
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TPP交渉もいよいよ山場をむかえている。とくに、農業重要5項目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の原材料)をめぐって日米の綱引きが本格化してきた。
5月30日に米ワシントンでひらかれた日米協議で十分な進展がなかったために、6月にはいって引き続き日米閣僚級会議がおこなわれている。
交渉の困難さは、「聖域」といわれる農業重要5項目を守ろうとする日本政府と米国政府側の農業団体(グローバル資本)からの強い圧力を背景にしたもので、米議会の「日米交渉での妥協はすべきでない」「開放しないなら日本を外せ」という声が高まっているといわれている。
交渉内容が公表されていないなか、マスコミの記事をみると「環太平洋経済連携協定(TPP)が日本の農業に変革を迫っている。4月24日の日米首脳会談では合意にいたらなかったものの、日本が「聖域」としてきた豚肉や牛肉の関税を下げ、コメの輸入枠を広げる方向で交渉が進んだ。厳しさを増す経営環境に対応し、国際競争力を高める攻めの農政が求められている」とある。
つまり、交渉は、実質的には日本側の妥協で終わっており、あとは関税の撤廃に向けたスケジュール調整であり、TPPのもとでの農業政策の方向(農業の変革)であり、安倍内閣によって、企業参入を中心とする農業関係法の改正をふくめ、準備がすすめられているのである。
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TPP交渉は、経済的な論理(経済のグローバル化、市場の開放)が先行しているが、現実との間に大きなギャップがある。その一つが「モノの品質・鮮度・安全性が無視されている」。二つ目が「いつでも金を出せば買えるという幻想」である。そして、三つ目が「農業の機能は、食糧生産だけではなく防災・環境、さらにコミュニティの形成という役割を担っている」という点を無視してすすめられているのである。3
日本の農家の状況をみると販売農家と自給農家が2対1の割合で、第2種兼業農家という農業所得が50万円以下、飯米と若干の販売という農家が多い。とくに部落の農家の多くが、その歴史的経緯も影響して、日本の農業の特徴が凝縮されている。新聞が指摘(安倍政権の狙いに沿った指摘だが)するまでもなく、厳しい農業経営を背景に近年、各種のアグリビジネスなどの起業化、産直施設など産地と消費地を結ぶとりくみ、高品質化やブランド化へのさまざまな努力がおこなわれている。部落の農業者も以前からライスセンター・育苗施設・共同作業所・農機具など共同利用施設を導入し、活性化へのとりくみをすすめてきている。4
TPP交渉の影響によって、畜産(牛・豚)および食肉も大きな打撃をうける。農水省との交渉のなかで、何の対策も講じなかった場合とことわったうえで、「生産高が、約9千億円のマイナス」と試算しているという話がだされた。畜産・食肉は、歴史的にも実態的にも部落の主要産業である。しかし近年、輸入肉の増加とBSEなど安全性の問題の影響による消費者離れもからみ、厳しい経営状況が続いている。全国的にみても「屠畜・食肉処理場」が減少し、開店休業状態のところも少なくない。TPPによる安価な輸入肉の市場への大量流入によって決定的な状況に陥る可能性がある。こうしたことをふまえ、「畜産・食肉産業を守るための対策」を農水省に強く迫ってきたが、「まだTPP交渉の結論が出ていないので」というこたえに終始するだけであった。「解放新聞」購読の申し込み先
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