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人権と平和、民主主義にの危機に抗し、安倍政権による憲法破壊を断固阻止しよう

「解放新聞」(2014.07.07-2673)

 集団的自衛権行使の容認に向けた自民党、公明党による与党協議では、政府案に公明党が難色を示し、安倍政権が当初目標としていた国会開会中の閣議決定はできなかった。しかし、6月22日の国会閉会以降も与党協議は継続され、国会での十分な論議もなく、密室協議のなかで、安倍政権による集団的自衛権行使容認の解釈改憲が閣議決定として強行された。
  与党協議で公明党が強く反発したのは、政府・自民党案に国連決議にもとづく集団安全保障への参加を明示したからだ。国連決議で多国籍軍などが編成された場合、日本の自衛隊もこれに参加し、武力行使できるというものだ。政府・自民党は、閣議決定を優先させる意向から、集団安全保障については言及しないこととしたが、海外での武力行使拡大が狙いであることは明白だ。その後の修正案でも、「他国」から「わが国と密接な関係がある他国」、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」とあるのを「明白な危険があること」に変更しているが、「明白な危険」については、そのときどきの政権が判断するという。しかも、「自衛の措置としての武力行使は認められる」として、これまでの憲法解釈を変更する、まさしく実質的な憲法改悪であり、人権と平和、民主主義の危機である。絶対に認めることはできない。

 「早く結婚した方がいいんじゃないか」「子どもを産めないのか」-東京都議会で問題になった女性差別発言である。一部の発言については自民党都議がようやく認め、謝罪した。また、除染廃棄物保管のための中間貯蔵施設建設地をめぐって、石原伸晃・環境大臣は、「最後は金目でしょ」と発言し、福島県や地元の自治体に謝罪した。さらに、麻生太郎・副総理兼財務大臣は、集団的自衛権行使の論議を、小学校でのいじめを例に、いじめられる条件を無批判にあげる問題発言で批判されている。まさに、安倍政権のもとですすめられる反人権主義の政治が生み出す、差別発言、問題発言の連続である。われわれは、こうした一連の差別発言、問題発言にたいして厳しく抗議する。
  かつて、「女性は(子どもを)産む機械」と発言して批判された厚労大臣もいたが、在日コリアン、障害者や高齢者、難病に苦しむ人びとをはじめ、社会的マイノリティへの差別発言も多い。こうした差別発言への国際社会からの厳しい指摘もある。日本社会の人権意識の低さが問われる重要な問題だ。
  安倍政権は、「経済財政運営と改革の基本方針」と「日本再興戦略改訂版」を6月24日に閣議決定した。このなかでも、医療費抑制、年金支給額の削減や年齢引き上げ、非正規労働者の拡大、「残業代ゼロ」の労働法制の改悪、原発の輸出などを打ち出している。まさに、経済成長のためには、格差拡大社会を固定化し、市民のいのちや生活を守ることなどは考えない、人権無視の政策だらけである。こうした新自由主義政策と国権主義の政治が生み出したものが、深刻な格差社会とヘイトスピーチであり、それを支えているのが差別排外主義の台頭である。

 今日、反人権主義、差別排外主義のもとですすめられているのが、安倍政権による憲法改悪策動である。4月には、政府は武器輸出を基本的に禁止する「武器輸出3原則」を撤廃し、武器や関連技術の輸出を事実上解禁する「防衛装備移転3原則」を閣議決定している。これは、日本の武器を世界に売り込むために、憲法9条にある「戦争の放棄」という平和主義の理念を投げ捨てるものであり、多くの批判があるにもかかわらず、「閣議決定」という安倍政権の恣意的な判断による暴挙である。
  今回の集団的自衛権行使容認を認める書落解釈の変更も、政府と与党協議のみで決定された。これまでの政府解釈を変更し、「自衛の措置」として武力行使を容認し、これまでの憲法解釈では認められていない、他国を武力で守る集団的自衛権と、国連決議による集団安全保障の参加も可能にすることによって、武力制裁をも認めるものである。現行の個別的自衛権だけを認めている憲法解釈の変更は、自衛隊が海外で戦闘行為に加担することであり、日本全体を戦争に巻き込むことになる。
  これでは、もはや憲法前文にある「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」という、理念を根底から覆すものである。
  この間、連日の国会包囲行動をはじめ、全国各地で「戦争をさせない1000人委員会」の活動がすすめられている。2度の世界大戦への深い反省のもとにかちとった人権と平和というかけがえのない人類の財産を次代にしっかりと受け継ぐために、広範な人びとと協働して、憲法改悪阻止の闘いに全力でとりくもう。

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