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集団的自衛権の行使容認に反対し、平和憲法を守るとりくみを

「解放新聞」(2014.07.21-2675)

 安倍政権は7月1日、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定した。これは立憲主義の否定、憲法違反であり、断じて許すことはできない。第2次世界大戦の反省と教訓から生まれた平和憲法を踏みにじり、日本を戦前の軍事国家へ逆戻りさせようとしている。
  「閣議決定」の根拠になったのは、2014年5月15日、安倍首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が、安倍首相に集団的自衛権の行使容認を求めた報告書だ。
  この「安保法制懇」報告書には、数かずの問題点がある。「安保法制懇」は、あくまでも安倍首相の私的諮問機関である。これまでの歴代政権が、「集団的自衛権」は、憲法9条に違反し許されないとしてきたものを、私的諮問機関の報告書で変更をはかり、しかも「法的基盤の整備」といいながら、委員に法律家はおらず、唯一の憲法学者も集団的自衛権の行使容認派であり、こうした安倍首相のお抱え機関で、十分な議論をしないまま結論ありきの報告だった。
  集団的自衛権の行使は憲法上、許されないという見解は、歴代の自民党政権ですら30年以上、この立場を維持してきた。安倍首相は、長年維持してきたこの憲法解釈変更を国民に十分な説明をおこなわないままはもちろん、理解をえることもなく、閣議決定のみでおしとおした。憲法改正には、憲法96条で定められた手続きが必要で、そのハードルが高いから、時の政権の解釈によって憲法の意味や内容を変えてしまうという、姑息な手法は、「国民主権」に反する暴挙であり、こんなことが、まかりとおるなど絶対許してはならない。
  いうまでもなく日本国憲法は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を3大原則としている。そもそも憲法は「個人の権利・自由を守る」ために権力者を憲法で縛るという「立憲主義」というのが基本理念だ。かつて麻生元首相が「ワイマール憲法もいつの闇にかナチスの憲法に変わっていた。あの手口を真似たらどうか」と問題発言をした。安倍首相も「いつの間にか」「国民に議論させず」政府の解釈で好き勝手に憲法の意味・内容を変更しようとしている。また、「立憲主義」についても「かつて王権が絶対的権力をもっていた時代の考え方だ」「最高責任者は私だ。私が責任をもって答え、その上で選挙で審判をうける」と国会で答弁した。「立憲主義」を古い考え方だと否定し、憲法違反でも選挙で国民の審判をうければ、すべて許されると、ひらき直っている。

 現行憲法のもとで集団的自衛権の行使を容認すれば、戦争できない国から、戦争をできる国になる。安倍首相は戦争をしないための抑止力だと、ウソぶいているが、抑止力はいざという時に戦う用意があることを相手に見せつけることであり、戦って死者がでる、国民に甚大な被害がでることは明白だ。つまり、被害をうけるのは国民であり、これほど重大な被害をうける可能性のある国民にたいして、その意思・信を問わないことは、民主主義にも反している。
  集団的自衛権の行使の名のもと、「侵略戦争」や不当な軍事介入がおこなわれてきたことは、歴史的に見ても明らかだ。ベトナム戦争、アフガニスタン侵攻、グレナダ侵攻、イラク戦争などで甚大な被害や戦死者がでている。とくにイラク戦争にいたっては、開戦の理由となった大量破壊兵器は見つかっておらず、国際的な批判を浴びた。
  ほかにも特定秘密保護法の制定、自衛隊法を「改定」(国家安全保障基本法・国家安全保障会議設置法の国会上程、「武器輸出三原則の見直し」、教育への国家権力の介入・支配など、「戦争のできる国づくり」の準備を着ちゃくとすすめているのが安倍政権だ。敗戦のなかから平和憲法を生み、その平和主義のなか育ってきた日本社会は、いままさに重大な岐路に立たされている。日本は、憲法9条の「一切の戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を堅持し、戦後69年間にわたって、自他国とも一人の戦死者をだしていない。このことを誇りにしなければならない。
  世論調査では、内閣支持率が47%に下落し、集団的自衛権の行使容認にたいしては54%が反対しており、賛成は34%しかない。「戦争は最大の人権侵害だ」を合言葉に、労働組合、平和団体・市民団体とすべての市民と連帯し、平和と人権、民主主義を守る世論を構築しなければならない。

 安倍政権は、集団的自衛権の閣議決定をおこなったあと、内閣官房国家安全保障局に30人規模の作業チームを設置。自衛隊法やPKO(国連平和維持活動)協力法など関連法案の改定に向け検討にはいった。防衛省も小野寺防衛相をトップとする検討委員会を設置し、作業をはじめた。菅官房長官は「法案の整備に最低でも3、4か月かかるので、そういうことを念頭に法整備を一括しておこなっていきたい」などと7日の記者会見で発言。これにたいして大畠民主党幹事長は10日、「9月末からといわれている臨時国会を前倒ししても、国民、国会に説明すべき。関連法案は来年の通常国会で統一自治体選挙後に審議するなどといわれているが、そのような姑息なことは許されない」と批判した。
  こうした状況のなかで、大江健三郎さん(ノーベル賞作家)や鎌田慧さん(ルポライター)、組坂委員長など、100人をこえる人びとのよぴかけに応じて、「戦争をさせない1000人委員会」が結成された。そして、全国各地での「戦争をさせない1000人委員会」のたちあげをよびかけ、「集団的自衛権の行使」容認に反対する著名運動がおこなわれている。
  8月6日の広島集会、8月9日の長崎集会、8月15日の敗戦記念日のとりくみとあわせ、反戦・平和に向けた都府県連のいっそうの奮闘、署名運動の展開と「戦争をさせない1000人委員会」への参加・賛同のとりくみを、いま一度よびかける。それとともに、各地で戦争の悲惨さや命や人権の尊さを訴え、平和憲法を守るとりくみをすすめよう。

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