ヘイトスピーチを許さない共同の闘いの輪を広げよう
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大阪高裁(森宏司裁判長)は7月8日、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)による京都朝鮮第一初級学校襲撃事件にたいする民事訴訟の控訴審で、一審の京都地裁判決(2013年10月7日)を支持し、再び在特会にたいして1226万円の支払いと学校の半径200㍍以内での街宣禁止を命じた。
事件の経過を簡単にふり返ってみると、在特会は2009年12月4日から3回にわたり、京都朝鮮第一初級学校の校門前で、「朝鮮人をたたき出せ」「北朝鮮のスパイ養成所」「朝鮮学校、こんなものはぶっ壊せ」「犯罪者に教育された子ども」などと拡声器で脅迫する卑劣なヘイトスピーチの襲撃をおこない、教育活動を妨害した。そのうえで暴挙の一部始終の映像をインターネット上で公開した。これにたいして学校側は幾多の困難を克服して、デモ参加者の一部を相手に損害賠償請求訴訟を京都地裁に起こすとともに、街宣参加者を刑事告訴した。この告訴にもとづいて在特会の副会長ら4人が逮捕・起訴され、2011年4月に懲役1年から2年の有罪判決がいいわたされたが、いずれも執行猶予がつく軽いものだった。
いっぽう、民法上の損害賠償請求について京都地裁は2013年10月7日、1226万円の支払いと200メートル以内の街宣活動を禁止する判決を出した。判決は、在特会のヘイトスピーチにたいして「示威活動で児童らを怖がらせ、通常の授業を困難にし、平穏な教育事業をする環境を損ない、名誉を毀損した」だけではなく「在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図がある」として、「日本が加盟する人種差別撤廃条約が禁じた「人種差別」に該当する」と違法性を認定した。また、「街宣活動による物品の損壊など経済的な面だけでなく、業務の運営や社会的評価に対する悪影響など全般に及ぶ」と指摘し、「差別行為に対する効果的な保護と救済措置となるような高額の損害評価が必要」と踏み込んで1200万円の高額な賠償を命じた。
在特会はこの判決を不服として、「街宣は朝鮮学校側が公園を無許可で占有していた特定の集団への優遇措置を批判する正当な政治的表現活動であり、公益性があった」などと居直り、控訴していたが、大阪高裁は一審判決を支持し、在特会の控訴を棄却した。
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7月8日の大阪高裁判決は、全国に拡大するヘイトスピーチを厳しく断罪するきわめて重要な意義をもつ判決となった。3
ところでヘイトスピーチに関して、これまで日本政府は、「処罰立法を検討しなければならないほどの人種差別煽動は日本に存在しない」「憲法は表現の自由を保障している」「現行の法体系で十分な措置である」などと、事実上ヘイトスピーチを擁護してきた。一審判決直後、菅義偉・官房長官は「こうしたこと(在持会の行為)がないように、関係機関において法令に基づいて適切に対応したい。政府として、関心を持っていきたい」などと空ぞらしい見解を表明していたが、今回の高裁判決は集団的自衛権の行使容認という名の戦争路線を突っ走り、中国や朝鮮半島への差別を煽動してきた安倍政権の差別排外主義に打撃を与えたことは間違いない。安倍政権は度重なる国連からの勧告を無視し、いまだに人種差別撤廃条約の第4条(a)、(b)項(人種差別表現や人種差別を目的とした団体を処罰の対象にしている)の留保の撤回と承認をおこなっていない。「解放新聞」購読の申し込み先
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