寺尾判決40年を糾弾し、いまこそ狭山第3次再審闘争勝利へ
1
いまから40年前の1974年10月31日、東京高裁の寺尾正二・裁判長は、日比谷公園を埋め尽くした支援者の無罪判決を求める声を尻目に、第1審の「死刑判決」を破棄したうえで、あらためて「無期懲役」をいい渡した。浦和地裁の死刑判決が無期懲役に変わったとはいえ、無実の石川一雄さんは、またしても「殺人犯」の汚名をきせられ、長い長い獄中生活を送ることになった。いまふり返れば、あのころ東京高裁には公判のたびに万余の支援者が結集し、石川さんの最終意見陳述がおこなわれた9月26日には、日比谷公園は10万人の支援者で埋め尽くされていた。参加者のだれしも無罪判決を心から期待していた。石川さんの生家では風呂まで焚いて、石川さんの帰りを待っていた。その期待を根本から裏切っていい渡された寺尾判決は、いま思い出しても悔しいかぎりの判決だ。寺尾判決を徹底的に糾弾しよう。
そして、この寺尾判決が確定判決となり、狭山事件の裁判はその後40年にわたって争われることになった。寺尾判決こそ、2度の再審請求を棄却した差別裁判の原因であり、事件の真実をゆがめ、権力犯罪を覆い隠した元凶そのものだ。また「みえない手錠」でいまも石川さんを縛りつけ、半世紀におよぶ長い裁判闘争を強いている原因そのものだ。
2
寺尾判決は、本当に許せないペテン判決そのものだ。寺尾は判決のなかで、たとえば石川さんの自白と客観的な事実がまったく食い違っていることについて、「捜査がずさんだったから食い違いが生じた」とした。捜査を批判したようにみえるが自白の矛盾をごまかしているだけだ。そして「自白が激しく変動して一貫性がなく犯行事実ともかみ合わないのは、むしろ自白の任意性を証明している」という屁理屈を並べて有罪の根拠にした。捜査がずさんで自白偏重だというなら、その結果出された自白はあやしいと考えるのが常識ではないか。また、「(自白に)犯行事実と矛盾する箇所がある」といったが、それなら自白にもとづく起訴事実そのものを疑うのが常識ではないか。
いっぽう、寺尾裁判長は、就任当初、部落問題関係の本を10数冊あげ、それを読んだ自分は部落問題を理解している、という芝居をうって弁護団や支援者を欺いた。しかし判決文では、部落問題に一言もふれなかった。そのうえ、捜査は客観的証拠にもとづくもので予断偏見をもってねらいうちしたことはないといい放った。また担当裁判長に就任するや、口先では、弁護団に「前裁判長のような訴訟指揮はとらない。公正に裁判をおこなう」などといい、再開第1回公判では石川さんに、「からだの具合はどうですか」などと語りかけ、石川さんの身を案ずるような素振りさえみせた。そのあげく、人びとを見事に裏切って無期懲役の判決をいい渡した。寺尾判決はでっち上げとペテンそのものだ。その判決から40年、私たちはいまも「第3次再審請求」という形でこの不当な寺尾判決と闘っていることを肝に銘じたい。
3
狭山第3次再審請求は、2006年5月23日に申し立ててから9年目となり、いよいよ大詰めをむかえようとしている。この間弁護団は確実に証拠開示をかちとり、開示された証拠をもとにつぎつぎと新証拠を提出し、その数は137点を数える。8月20日におこなわれた第19回3者協議では、裁判所は未開示の筆跡資料について、開示の方向で検討中であることを弁護団に伝え、これが近いうちに開示される見通しが出てきた。また裁判所は、一歩ふみこんで証拠物のリストの開示を検察に求める姿勢を示した。弁護団の粘り強い活動が、たしかな前進をかちとっているのだ。
狭山第3次再審請求は文字どおり山場をむかえている。10月下旬には、つぎの20回目の3者協議がもたれるが、証拠物のリストが開示されるかどうか、弁護団が求める証拠開示がおこなわれるかどうか、また、事実調べがおこなわれるかどうか、第3次再審闘争のきわめて重要な正念場をむかえようとしていることはまちがいない。
こうした状況のなかで、部落解放同盟中央本部は狭山事件の再審開始を求める市民の会とともに、10月31日午後1時から東京・日比谷公園野外音楽堂で「寺尾判決40年糾弾!・狭山事件の再審を求める市民集会」をひらく。集会では、狭山弁護団の中山武敏・主任弁護人、中北龍太郎・事務局長が証拠開示をめぐる弁護団の現状を報告する。また、足利、布川、袴田などのえん罪被害者がえん罪の実態を報告する予定になっている。当日は、集会前に東京高裁と高検にたいして要請行動をおこない、集会終了後、都内をデモ行進する。
狭山事件は事件発生から51年、寺尾判決から40年をむかえ、石川一雄さんはいまもみえない手錠をはずすために無実を訴え続けている。証拠開示によって再審開始決定が出された袴田事件に続き、狭山事件でもいまこそ証拠の全面的な開示と事実調べをかちとろう。
全国の兄弟姉妹、支援者は10.31狭山市民集会に結集しよう。
「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)