pagetop
部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

人権と平和、民主主義の確立に向けて全国各地で闘いを大きく前進させよう

「解放新聞」(2014.10.20-2687)

 安倍首相は、9月29日からはじまった第187臨時国会での所信表明演説で、「地方創生」と「女性の活躍推進」を重要課題として取りあげた。また、アベノミクスの成果を強調し、経済最優先の姿勢をあらためて表明した。
  この臨時国会に先立って、9月3日に発足した安倍改造内閣では、5人の女性閣僚や地方創生担当大臣を任命した。しかし、主要閣僚の多くは留任しており、安倍政権が「戦後レジームからの脱却」をめざし、「戦争のできる国」づくりをすすめることに変わりはない。
  しかも、国会審議で問題になったように、「在特会」幹部と記念写真を撮影するような拉致担当大臣など、まさに反人権主義の政治をおしすすめるための政権である。安倍政権は、昨年末に、多くの反対にもかかわらず、「特定秘密保護法」を成立させ、集団的自衛権行使容認の閣議決定も強行した。
  しかし、この臨時国会では、姑息にも集団的自衛権の関連法案を先送りにし、来年の統一自治体選挙を念頭に、地方重視の姿勢を打ち出したり、「女性の活躍推進」などを掲げている。かつての小泉政権による「構造改革」路線のもとで地方の疲弊が深刻化した。同じように新白由主義による経済最優先の安倍政権のもとで、地方創生などを実現できないのは明らかである。

 安倍政権は「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、経済政策の効果を地方にも波及させていくとしている。しかし、長年の自民党政権によって深刻化してきた地方の人口減や高齢化問題は、安倍政権がすすめるアベノミクスのような新自由主義にもとづく経済優先政策では解決しない。
  地方への企業誘致推進のための法人税の軽減や特産品の販売支援などは、たんに企業活動のみで地方を活性化させるという幻想であり、まさにバラマキ政策にほかならない。しかも、東京への人口集中に対応するための地方中枢拠点都市構想では、周辺の白治体を切り捨てる結果になるのは明らかである。
  「女性が輝く社会」づくりに向けた「女性の活躍推進」に関連した政策でも、女性の低賃金や不安定雇用を固定化させる「労働者派遣法」改悪をはじめ、女性が働くために必要な子育て支援策でも、公共福祉の充実とは逆行する、女性の白己責任を強めるものばかりである。男女共同参画の理念や女性の自己決定権を否定する安倍政権の「女性の活躍推進」のとりくみが強化されるなかで、一部の女性の「活躍」を支える存在として、多くの働く女性がさらに劣悪な労働環境に追いやられるのである。
  このように、少子化による労働力の不足を、低賃金で劣悪な労働条件のもとにある働く女性の自己負担をさらに増大させることで解決しようとする政策を断固阻止しよう。男性中心の働き方、家事労働の責任分担はあくまでもそのままで、女性の労働力や「産む機械」としての女性性を徹底的に利用し、管理することを許してはならない。


 「戦争のできる国」づくりをすすめる安倍政権は、この間、「武器輸出3原則」を撤廃し、武器や関連技術の輸出を事実上解禁する「防衛装備移転3原則」を閣議決定した。また、「特定秘密保護法」の制定と「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設置、集団的自衛権行使を容認する閣議決定など、いずれも憲法9条の実質的な改悪策動を強めてきた。
  しかし、今臨時国会では、集団的自衛権の行使に関連した「自衛隊法」改定など、関連法案を提案せずに、来年の通常国会に先送りした。いっぽう、日米両政府は10月8日、外務・防衛局長級協議(防衛協力小委員会)で、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しの中間報告をまとめた。この中間報告では、日米防衛協力の地理的制約である「周辺事態」を削除し、米軍を世界中で支援することを明記した。いまだに関連法案の骨子さえ示していないのに、すでに集団的自衛権の行使を前提にしたものになっている。これは、安倍政権の奢りであり、国会軽視もはなはだしい。
  これまで、アフガニスタン戦争やイラン戦争へ自衛隊を派遣することができず、「周辺事能還」や特別措置法を成立させて対応してきたが、地理的な制約がなくなれば、米軍支援に自衛隊が世界各地に派遣されることになる。
  すでに安倍政権による憲法破壊がすすんでいる。全国各地で、安倍政権の暴走と妄想を許さず、人権と平和、民主主義を確立する闘いを大きく拡げよう。


「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)