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人権と平和、民主主義の政治勢力を結集し、衆議院総選挙に怒りの一票をたたきつけよう

「解放新聞」(2014.12.01-2693)

 安倍首相は11月18日、衆議院を21日に解散し、総選挙をおこなうことを表明した。解散理由は、来年10月の消費税率10%再引きあげを先送りし、その判断を「国民に信を問う」としている。
  これは、2年間の安倍政権が打ち出したアベノミクスが完全に破綻したことにはかならない。今年4月からの消費税8%への引きあげで、日本経済が決定的打撃をうけた。日本銀行は、消費税率再引きあげの経済環境を演出するために、昨年4月からの「異次元の金融緩和」政策をすすめてきたが、追加金融緩和を決定しなければならないほどに追いこまれたのである。
  アベノミクスは、景気回復に向けた具体策として「大胆な金融政策」をすすめてきた。当初は、株価高騰と円安によって、一時的な好景気が演出されたものの、その後は、円安進行による衣料品、食料品などの物価上昇となり、生産や消費などの実体経済はむしろ悪化した。とくに物価高によって、実質賃金は低下し続けている。株価高騰と円安で資産を多くもつ富裕層はより豊かになり、輸出産業の業績改善がすすんだが、名目賃金から物価上昇を差し引いた実質賃金は9月までの15か月連続で減少しているのが現実だ。また、多くの中小企業は原材料の価格値あがりで苦しんでおり、賃上げの余裕などない。アベノミクスによって、格差拡大社会の問題はますます深刻化しているのだ。
  10月末の日本銀行による追加金融緩和や、年金積立金管理運用独立法人(GPIF)が株式による資金運用の拡大を表明したことは、株価高騰を狙ったものであり、消費税率10%再引きあげへの地ならしであった。しかし、7~9月期の実質国内総生産は(GDP)は、2期連続マイナスという結果となり、アベノミクスで景気回復をすすめることによって支持率を維持してきた安倍政権の経済政策が破綻したことが明らかになったのである。予想以上の景気低迷に追いつめられた安倍政権は、みずからの失政を隠蔽し、ひたすらアべノミクスの実績を訴えているが、アベノミクスこそ、貧困と格差を拡大し、深刻化させたのである。
  発足当初こそ、アベノミクスでの株価高騰と円安進行で景気回復を演出し、支持率を維持していた安倍政権だが、その本質が「戦後レジーム(体制)」からの脱却をめざす、国権主義と反人権主義の政治路線であることはいうまでもない。この戦前回帰の復古主義の政治をめざす安倍政権は憲法改悪をすすめ、「戦争のできる国」づくりをすすめてきた。
  安倍政権は「積極的平和主義」を掲げ、「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設置と「特定秘密保護法」を強行に成立させた。この法律は、文字通り「何が秘密なのかは秘密」ということで、政権の恣意的な判断で、すべての情報が明らかにされないまま、「テロリズムの防止」という目的のために隠されてしまうものだ。しかもこうした情報を入手しようとすれば罰せられるわけで、市民の知る権利を根底から否定する悪法である。情報を取り扱う者について「適性評価制度」を導入し、家族や同居人の生年月日や国籍までもが調査の対象となる。まさに国家が公然と差別身元調査をおこなう人権侵害の法律でもあるのだ。
  さらに安倍政権は、7月1日、閉会中であるにもかかわらず、集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行した。憲法改悪をすすめようとする安倍政権は、当初、改憲手続き条件の緩和を狙い、憲法96条の改悪を強行しようとしたが、広範な反対運動が盛りあがり、断念したのである。安倍首相は、この集団的自衛権の憲法解釈の改悪の批判にたいして、国会答弁で「憲法解釈の最高責任者は私だ」と暴言を吐いた。
  まさに選挙で勝てば、白紙委任をうけたも同然とする安倍政権を許してはならない。

 今回の総選挙は、安倍政権を退陣に追いこむ絶好の機会である。わが同盟は衆議院解散―総選挙に向けて臨時中央執行委員会で、あらためて中央選挙闘争本部の体制、政策協定の内容を確認するとともに、各都府県連に推薦候補の集約を急ぐように要請した。
  安倍政権は、9月末からはじまった臨時国会に向けて内閣を改造し、地方創生と女性活躍推進を重要課題として取りあげてきた。しかし、改造内閣で抜擢した女性閣僚二人が不祥事で早ばやと辞任、ほかの閣僚にも「政治とカネ」にかかわるさまざまな醜聞が報道されている。しかも、沖縄県知事選挙では、滋賀県知事選挙に続いての大敗北を喫しているのだ。まさに、沖縄基地問題や原発再稼働での安倍政権の暴挙に、民意は絶対反対の意思表示をおこなった。
  こうして追いつめられた安倍政権は、みずから重要法案としてきた地方創生関連法はかろうじて成立させたものの、女性活躍推進法案の成立を投げ捨て、「一強多弱」の政治情況を利用し、政権維持の目的のためだけに総選挙をおこなうのである。
  この間、安倍政権のもとで、人権や平和の課題は大きく後退してきた。しかも、格差拡大社会をさらに深刻化させ、そうした不安、不満を背景としたヘイトスピーチが社会問題化し、国際的にも大きな批判が出され、国連人権条約機関からも厳しい勧告をうけている。アジアはもちろんのこと、世界からも孤立する強権的な外交政策は、あくまでも米国に追従し、集団的自衛権の行使を前提としたものである。
  日本の未来を決する選挙である。安倍政権にたいする怒りの一票をたたきつけ、「戦争のできる国」づくりをすすめる安倍政権を退陣に追いこもう。


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