『#鶴橋安寧ーアンチ・ヘイト・クロニクル』
李信恵(リシネ)著 影書房 (定価1700円)
最近の本屋さん。気分が悪くなる店がある。いわゆる嫌韓本とよばれる類いの本を平積みにしている店だ。手にとっている客など見かけないが、なぜか幅をきかせている。その中身といえば韓国と韓国人にたいする悪口のオンパレード。「ヘイトスピーチと変わりないんじゃ…。いや、それ以上」と読んだ感想をもらす人もいるほどのおぞましさ。
1980年代の国際化の波にあわせ、多民族共生の社会を求めるとりくみがおこなわれてきたが、どこかうわすべりしていたのかもしれない。いま一度、在日コリアンの声に耳を傾け、歴史に学んでヘイトスピーチに向きあう必要があるだろう。
そのための一冊として、おすすめなのが『#鶴橋安寧』。著者の李さんはヘイトスピーチの被害者だ。名指しで「殺せ」とコールされた体験をもつ。「日々、刻まれていれば、完全に治癒することも望めない。薄いかさぶたのように、ちょっとした刺激でまた血が噴き出す」ような思いをしているが、泣き寝入りすることなく、現在の在持会顧問を相手取った裁判など2件の民事訴訟をおこして闘っている。けっして闘士ではない女性ジャーナリストの思いがつまっており、差別の本質に迫ろうとする姿勢に学ぶところが大きい。(土)
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