社会の底から共闘の模索を
雇用身分社会
森岡孝二 著 岩波新書/定価 800円
年末から、3年ぶりの故郷での正月を過ごしたとき、保育所からの幼なじみと「初日の出をみにいこう」という話になった。行きも帰りも家族や恋愛、仕事やアルバイトを掛け持ちしながら学校にかよう友人たちの話。早朝の眠気と懐かしさに浸りながら聞こえてきた「好きなこと(を仕事に)しよるけんいいな」という友人の言葉にハッとした。「何のため働きよるかわからん」とつぶやく彼女。学生時代、将来を語っていた彼女の横顔をぼんやりと思い出した。
「企業中心社会」、「働きすぎ社会」などの言辞で日本の労働社会の変化を書きつづけてきた著者、森岡孝二。「気がつけば日本は雇用身分社会」からはじまる本書では、「戦前の雇用身分制」として紡績工場や製糸工場での女性工員の雇用と長時間労働を概観しながら、今日の「ブラック企業」の原型がその女性工員たちを過労死や過労自殺に追い込んだ体系にあると分析。派遣やパート、正規労働者をとりまく社会情況の変化のなかで、過重労働と貧困が広がりの背景にあるのは何かを考える。「働くとは何か」を社会の底から考え、声をあげるネットワークがさまざまな世代、さまざまな所属、方向から形成されようとしているいま、あらたな共闘の模索が急がれる。(伊)
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