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コラム
今週の1冊 第2761号/16.05.02

自然な「老い」を受け入れる介護を求めて
認知症をつくっているのは誰なのか

村瀬 孝生・東田 勉 著 SB新書(SBクリエイティブ)/定価800円 

書籍画像

 2012年には305万人から462万人、2025年には470万人から700万人――「認知症」高齢者数の推計は厚労省発表ごとに上方修正され、早期受診、早期診断、早期治療が推奨される。認知症患者の鉄道事故に関する損害賠償請求裁判で先日、家族に責任はないとの最高裁判決が出たが、認知症の家族を抱えたり自分白身が認知症になることを私たちはとにかく恐れている。
  介護ライターと福岡市内の「宅老所よりあい」代表の対談形式による本書は、自然な「老い」を認めず認知症を薬と訓練で医療の対象とし、「自立」できなくなると一転して「安静強制介護」に追い込む社会のありようを問う。「老い」の過程で人は多くを失っていき、「できる自分」「できない自分」の間をいったりきたりし、その自分を「受け止められたり受け止められなかったり」の心の揺らぎを経験する。「よりあい」の介護者はそれに振り回されつつも、これまでの生活を継続する支援を目標に、丁寧に本人に寄り添い会話しながら一緒に決める。それが、家族ではなく本人の自己決定を尊重すること。家族だけでは難しいことを、地域にもひらいて橋渡しする介護の形が広まれば、認知症を恐れなくてもよくなるかもしれない。 (く)

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