まもられていない憲法9条をまもる意味
憲法の無意識
岩波新書 柄谷行人 著 定価760円
交戦権の放棄・戦力不保持を明記した憲法9条。敗戦と憲法制定から71年のいま、日本の国防予算は5兆円をこえ、事実上「軍事大国」となり、南スーダンに「派遣」される自衛隊は「駆けつけ警護」の訓練をはじめている。また9月16日には沖縄・辺野古をめぐる国と県との対立でのはじめての司法判断で、福岡高裁が県知事の埋め立て承認撤回は違法と判断。9条の外に自衛隊や米軍基地が存在する構造が当然のように成立している。
本書での柄谷の問いは、いまの日本で「9条が実行されていないのにもかかわらず、法を変えようとせず残されているのはなぜか」というもの。それを「無意識」をキーワードに探る。議論は、戦争でPTSDとなった兵士を診察した経験ももつフロイトの考えなどを出発点にするが、無意識という言葉はここでは意識の逆を意味するものではない。「9条は占領軍の押しつけ、自発的なものではない」という訴えがむしろ、「外部から強制されたからこそ意識を超え「無意識」として定着した」と語る柄谷。9条が先の戦争にたいする日本人の強い「無意識の罪悪感」を示すと語り、天皇制をいまに残した1条と9条の成立過程とその関係性についても展開している。(伊)
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