運動方針案の議論を積みあげ、部落解放運動の前進に向けて、第72回全国大会を成功させよう
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3月2日から東京でひらく第72回全国大会に提案する一般活動方針案(第1次草案)がまとまった。すでに『解放新聞』にも掲載し、2月10日の第4回中央委員会での論議をふまえた修正のうえ、全国大会であらたな運動方針を採択する。厳しい社会的政治的情勢のもとで、差別と戦争に反対する部落解放運動の前進に向けて、どのようにとりくみを具体化させていくのか、都府県連・支部での論議を積みあげて、全国大会での運動方針案にたいする建設的な代議員の意見を期待したい。
今日の国内外の情勢は、あらゆる分野でのグローバル化の進行で、政治不安や経済的危機など、すべてが、それぞれの国のなかだけでなく、世界的な規模で生み出されている。格差や貧困問題も、日本だけでなく、世界的な規模で深刻化している。一方、極端な規制緩和と金融市場の自由化によって、富裕層はより豊かになり、ますます世界の富(所得)が一部に集中し、多くの人びとが人間らしい生活や労働、文化を奪われている情況におかれている。しかも、こうしたことのすべてが「自己責任」とされ、問題はますます深刻化している。
こうした情況のもとで、世界的にも社会不安が増大している。米国の政治的軍事的な一元支配が崩壊したいま、ヨーロッパ連合(EU)、ロシア、中国、中東など、それぞれが不安定な国際関係のもとで、みずからの国や地域の利益を優先させようとしており、軍事的な衝突もおこっている。また、日本人男性二人を拘束し殺害した「イスラム国」には、格差や貧困問題が深刻化する現状にたいする不満をもつ若者たちが参加するなど、テロや紛争の背景にこうした問題があることも今日的な社会情勢の特徴となっている。
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今年は敗戦・被爆70年にあたる。部落解放運動は、敗戦後一貫して、戦争に反対し、部落差別撤廃、人権と平和の確立に向けて闘いをすすめてきた。それは、平和憲法の基本的人権の尊重、主権在民、平和主義の理念の具体化に向けた闘いでもあった。今日、国家安全保障会議(日本版NSC)による安全保障と外交政策の一元化と、「特定秘密保護法」の施行や集団的自衛権行使容認の閣議決定など、安倍政権による戦争推進政策がすすめられている。
この安倍政権の「戦争のできる国」づくりと対決し、憲法改悪を阻止する闘いこそ、部落解放運動の今日的な重要な課題である。戦争は最大の人権侵害であり、多くの女性や子どもたちが犠牲になってきた。安倍政権は、かつての侵略戦争の反省もなく、「従軍慰安婦問題」ではその存在さえも認めようとしていない。当然、アジア諸国からの大きな批判がおこり、中国や韓国との対立も深まるばかりだ。
しかも安倍政権は、15年度予算案で防衛費を3年連続で増大させ、過去最高とした。一方、生活保護費などの社会保障費の削減、沖縄振興費の削減と労働法制の改悪など、生活と労働を徹底的に破壊しようとしている。しかも昨年4月の消費税率8%への引き上げいらい、実質国内総生産(GDP)と実質賃金の連続マイナスが続いている。
まさにアベノミクスの失敗が明らかになってきているのである。しかし、昨年末の衆議院総選挙では、アベノミクスの失政を隠し、「この道しかない」との脅し文句で解散前の議席をほぼ維持させた。安倍政権がすすめるこの道とは、まさに「戦争への道」である。
こうした人権と平和の危機に抗して、安倍政権の強権的な反人権主義、国権主義の政治を阻止するための協働したとりくみが求められている。「戦争をさせない1000人委員会」の活動や反戦・平和のとりくみを強め、憲法破壊の安倍政権と厳しく対決することが全国大会の基本課題で取りあげられている。全国大会では、地域でのとりくみをふまえ、さらに具体化に向けた論議をすすめよう。
また、統一自治体選挙闘争のとりくみについて、まずは安倍政権と対決する政治勢力を地域から結集するために、組織内候補、推薦候補の必勝を全力でかちとることが重要である。自治体選挙の闘いについての意義も全国大会で再確認しよう。
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部落解放運動にとって、本年は「同和対策審議会」答申から50年、『部落地名総鑑』差別事件発覚40年という大きな節目の年でもある。
答申は「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である」として、「その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」と明記している。しかし、今日でもなお、差別身元調査事件や土地差別調査事件、インターネット上での差別情報の氾濫など、部落差別の実態が解消したとはいえない。
差別があるかぎり同和行政・人権行政の推進を求めていくのは当然である。また、「特別措置法」時代33年間では、地区の環境改善事業を中心に一定の成果をあげてきたが、残された課題をふくめて総括をすすめ、その解決の方策も模索していくことが重要である。そのためにも行政交渉の強化に向けて、中央執行部と都府県連が連携を深め、統一的な行動にとりくむことも具体化させていきたい。さらに、人権侵害救済制度の確立も急務の課題だ。中央集会-政府交渉の定期的効果的なとりくみと各都府県実行委員会の活動をつなげ、政府に法制定を迫ろう。
差別糾弾闘争のとりくみでも、事件の背景、原因を丁寧に分析し、再発防止策など社会変革につながる闘いをすすめていく必要がある。この間、戸籍等個人情報大量不正取得事件では、本人通知制度の導入を全国的にすすめてきたが、すでに530以上の自治体で制度が導入されている。このように、部落解放運動の闘いは、人権問題の解決に向けた具体的な制度・政策の実現をかちとってきた。この間、国連人権条約機関からも厳しい内容の勧告が出され、社会問題化しているヘイトスピーチ規制法などについても、「差別禁止法」の論議と合わせて論議していこう。
さらに狭山再審闘争では、第21回3者協議で東京高検は、これまで拒否してきた「証拠物リスト」を弁護団に開示したことが明らかになった。3者協議では、これまで164点の証拠開示がかちとられ、139点の新証拠を提出している。今回の証拠物リストでも40点以上の未開示証拠があり、これらの開示を求めていかなければならない。狭山の闘いは、再審実現に向けて大きく前進している。弁護団の活動を支え、石川一雄さん、早智子さんの高裁前アピール行動など、各地の住民の会のとりくみと合わせて、狭山再審実現を訴え、石川無実の世論を大きく盛りあげていこう。
こうしたわれわれの闘いの原点は、「全国水平社創立宣言」の精神である。まさに部落民白身によるみずからの解放宣言であり、人権宣言である。これまでユネスコ世界記憶遺産登録を方針化してとりくんできたが、本年9月の国内選考に向けて、全国で登録に向けた活動を盛りあげていきたい。
こうした基本課題について、全国大会での論議で、方針案をより豊富化しよう。運動方針は、これからの闘いの指針である。全国の代議員は、地域での実践をふまえ、次代を担う人材育成と、運動と組織の改革に向けて、みずからが運動の展望を切り拓く想いを重ねながら、厳しく建設的な意見を活発に出し合い、全国大会を成功させよう。
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