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大震災の記憶を風化させず、被災地支援と原発再稼働反対にとりくもう

「解放新聞」(2015.03.09-2706)

 2011年3月11日の東日本大震災から4年がたった。復興庁によると東北3県ではいまだに約23万4000人が避難し、約17万3000人が仮設住宅で暮らしている。しかし、被災地の復興は遅遅としてすすんでいない。津波で被害をうけた三陸沿岸部では、各地で復興事業がはじまっているが、巨大な堤防や地盤かさあげなどの土木事業ばかりが目立ち、住宅、雇用、教育、医療、福祉など生活の再建はすすんでいない。
  とくに生活の基本となる復興住宅や集団移転の事業が遅れている。復興工事が遅れているもっとも大きな原因は、作業員不足と資材の高騰だ。2020年の東京オリンピックが決まって工事業者が引きあげはじめ、工事の遅れに追い打ちをかけている。街や住宅街が復活するにはまだ相当の時間がかかりそうだ。
  仮設住宅では、自力で家を建ててでて行く人が増える一方、多くの人はまだ仮設住宅で東北の寒い冬に耐えている。たとえば、大船渡中学校仮設住宅では、当初130世帯だった入居者がいまは80世帯に減った。残った人は、「自分たちが置いてきぼりを食っているような感じで悲しくなる」と語る。
  仮設住民の間には将来の見とおしが立たず精神的な焦りやストレスが広がっており、うつ病や引きこもり、アルコール依存症に追いこまれるケースが増えている。不安定な生活と環境から、子どもの不登校や児童虐待、DVもおきている。
  復興住宅がようやく建設され、やっと入居できた地域でも、あらたな問題がでている。入居者は、「隣近所にだれも知り合いがいない。仮設住宅のコミュニティがばらばらになってしまった。隣の家とも行き来できないし、高齢者はますますひきこもりになってしまう」と話す。

 福島では、原発事故から4年目をむかえて、いまだに事故収束の見とおしが立っておらず、大量の汚染水が海に垂れ流されている。東京電力は2月24日、福島第1原発2号機原子炉建屋の屋上で高い濃度の放射性汚染水をふくむ雨水を検出したと発表した。検出地点は、港湾外に通じる排水路につながっており、東電は同排水路を通じて放射能をふくんだ雨水が流れていると認めているが、港湾外での観測では大きな変動はみられないとしている。しかし、地元の漁協関係者は「まったく信用できない」と不満をぶつける。
  原発事故のあと、放射能で汚染された建物・土・草木などあらゆるものが除染された。除染廃棄物は捨て場所がないため、その場に積みあげられた。それがさらに住民の帰還を困難にしている。政府はこの除染廃棄物を集めて保管する中間貯蔵施設を大熊町と双葉町に建設することを決め、両町は大もめにもめたあとうけ入れを容認した。福島県の内堀雅雄・知事は2月24日、施設への廃棄物搬入のうけ入れを表明した。
  県と大熊、双葉両町の廃棄物搬入うけ入れによって、中間貯蔵施設はようやく稼働する条件が整った。しかし、施設完成の見とおしは立っていない。環境省は施設建設に要する期間を少なくとも2~3年としているが、完成時期を明確に示していない。用地確保の交渉が難航し、約2300人の地権者のうち、連絡が取れたのは半数にとどまる。また、最大2800万立方メートルとされる廃棄物搬入の受け皿として、うけ入れ用地は十分な規模を確保できていない。
  廃棄物の輸送が本格化すると、一日に最大1500台以上のトラックが走行すると予想される。当然、渋滞の発生や、事故による放射性物質の飛散などが懸念される。同省は安全対策として、輸送車両を一元的に管理するシステム計画を打ちだしているが、予定どおりに機能するかは不透明だ。大熊町は、「みんなで帰町する」という方針だが、戻りたいという町民は8.6%にとどまっている。


 一方福島では、甲状腺ガンの元となる嚢胞や結節の疑いが見つかる子どもが増えている。2014年12月25日に公表された調査報告書によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いのある子どもは、112人になった。通常、子どもの甲状腺がんは「100万人に一人か二人」といわれているが、通常のおよそ300倍の高い数字だ。
  事故後、福島第1原発から半径30キロ圏内が立ち入り禁止区域となり、約16万人が住み慣れた自宅から離れることを余儀なくされた。放射線量が比較的低いその他の地域では、公園や校庭の表土入れ替えのほか、歩道など公共スペースの除染や子どもの屋外活動制限といった措置がとられた。しかし、調査結果をみる限り、原発事故の影響がいま徐じょに表れはじめている。体力の低下や協調性の欠如のほか、自転車に乗れなかったり、すぐに怒ったりといった感情面の問題をかかえる子どもが増えている。1986年のチェルノブイリ原発事故では、3~4年たったころから子どもの甲状腺がん増加が表れてきたが、福島でも同じような現象が出てきた。福島では甲状腺がんの増加だけでなく急性心筋梗塞の死亡率が全国平均の2.40倍、慢性リウマチ性心疾患の死亡率が2・53倍で、どちらも全国1位になっている。
  原発事故が収束できないにもかかわらず、政府は原発の再稼働を強引にすすめている。周囲を日本有数の火山に囲まれ、地震・津波のリスクに加え、火山による噴火のリスクが高い九州電力の川内原発(鹿児島県)にたいして、政府は安全対策が新規制基準を満たしていると結論づけて再稼働を許可した。「まず再稼働ありき」の無責任で危険な政策を放置してはならない。部落解放同盟は、大震災および原発事故の被災者を支援すると同時に、脱原発にとりくむさまざまな団体と連帯して再稼働に反対してきたが、さらに原発廃止の運動をすすめていこう。


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