証拠開示と新証拠提出をふまえ、不当逮捕52年糾弾、5.21狭山市民集会に結集しよう
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隠されていた証拠がつぎつぎと開示され、それをもとに弁護団が新証拠をつぎつぎ提出するなかで、狭山第3次再審は重要な段階をむかえた。部落解放同盟と部落解放中央共闘会議、狭山事件の再審を求める市民の会は、石川一雄さんの不当逮捕から52年目をむかえる5月21日、東京・日比谷野外音楽堂で「狭山事件の再審を求める市民集会」をひらく。全国から集会に参加し、証拠の全面開示と事実調べをかちとろう。
狭山第3次再審では、2010年3月に証拠が開示されてから、断続的に165点の証拠が開示された。開示された証拠のおもなものをあげれば、逮捕された当日の狭山署長にあてた上申書、取り調べの録音テープ、腕時計・手拭い、鞄、駐車の目撃に関する捜査資料などである。これらの証拠の開示と専門家の鑑定などの新証拠によってつぎのことが明らかになってきた。①脅迫状は石川さんが書いたものでない②発見された腕時計は被害者のものではない③犯行に使われた手拭いは石川さん宅のものではない④鴨居の万年筆は被害者のものではない⑤石川さんの「自白」に秘密の暴露といえるものがない⑥「自白」は、つくられた虚偽であること⑦犯行現場を裏付けるものがなにもないこと、などである。この6年のあいだに開示された証拠によって、いよいよ石川さんの無実が明確になってきた。そして1月22日には、狭山弁護団が長年開示を求めてきた証拠物のリストが開示された。
検察が開示を拒み続けてきたこの証拠物リストには、東京高検にある279点のすべての証拠物の名前と数量が記載されていた。ただし、すでに裁判所に提出されていたり、開示済みのものもあり、未開示のものは44点だった。しかし今回のリスト開示は、検察がなにを証拠物としてもっているかが明らかになった点で、またこれまでの検察の〝証拠隠し″態勢を崩したという意味で、裁判にとってきわめて重要な意味をもつ。弁護団および支援運動の粘り強い闘いの成果だ。
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弁護団は、44点のリストのうち石川さんの筆跡に関係すると思われるものや航空写真のネガフィルムなど5点の証拠開示を求めた。検察は、3月24日の第22回3者協議で、航空写真112校を開示した。航空写真というのは、事件直後の5月5日にヘリコプターで撮影されたもので、遺体が発見された麦畑や佐野屋などが空から撮影されている。弁護団はすでに新証拠として殺害現場や鞄の投棄について、それが石川さんの自白と違っていることを示す新証拠を提出しているが、今回の航空写真が弁護団の主張を裏付けることに期待が寄せられている。
しかし検察は、埼玉県警やさいたま地検など東京高検以外の官庁で作成されているはずの証拠物の一覧表の開示請求にたいして、きわめて不誠実な回答をおこなっている。「証拠物はすべて東京高検に集められているので、これ以外に証拠物はない」というのだ。だが本当にないのか。たとえば、事件直後の新聞には、犯行現場を8ミリで撮影したという記事が報道されているが、この8ミリフィルムがどうしてリストのなかにないのか。埼玉県警やさいたま地検の一覧表を開示すれば、すぐにわかるはずだ。いっぽう、弁護団は開示された証拠を丹念に検討したうえで、石川さんの無実を証明する新証拠をつぎつぎと裁判所に提出した。その数は155点となった。2月13日には、弁護団は第3次再審の大きな焦点になっている手拭いに関する新証拠と補充書を裁判所に提出した。
狭山事件では、被害者は手拭いで後ろ手に縛られ、麦畑の農道に埋められていた。この手拭いは、地元の米穀店が毎年新年に得意先に配布しているものであったが、この年は165本が配られた。捜査本部はすぐにこの手拭いの配布先を調べた。その結果、155本が回収された。犯行に使われたのは、残る10本のうちの1本であることは間違いない。では、石川一雄さんのところはどうだったのか。石川さんのうちにも1本配布されており、石川さんの家はのし袋をつけた新品の状態であり、警察に提出している。本来ならばこの段階で、石川さんと事件は関係ないことになる。しかし、どうしても石川さんと犯行を結びつけたい検察は、「テレビニュースで手拭いが使われていることが報道されたのを見て、石川の家人が義兄の石川仙吉宅か、隣の家から調達して警察に提出した」という主張をおこなってきた。しかし、義兄・石川仙吉さんの家も手拭いはちゃんととってあって警察に提出している。これで義兄のうちも事件とは関係ないことになる。そこで検察は、義兄のうちには2本配られていたと主張してきた。
ところが2013年に開示された手拭いに関する捜査報告書によって、捜査官が石川さんの家に手拭いが保存されているのを現認したのは、5月6日の午後0時20分であることがわかった。TBSのニュースが放映されたのは0時2分からである。したがって、ニュース報道から警察官の現認までの時間は約17分しかない。その間にあわてて義兄の家に走り、手拭いを受けとって自宅に駆け戻り、捜査官に提出した、というような話があるはずがない。検察は、つじつまを合わせるために、こんな無茶苦茶なストーリーをこしらえたのだ。
また、開示された捜査資料のなかの米屋の配布先一覧表には、石川仙吉の欄に「1」と表記されていたものが「2」と改ざんされていたことがわかった。警察による手拭いのでっちあげはいよいよ明らかになった。
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弁護団は昨年、取り調べの録音テープの反訳書と、この録音テープを分析した浜田鑑定、脇中鑑定を提出した。反訳書とは、テープを文字にしたもので、取り調べのようすが文字になって記録されている。
この反訳書は、石川さんの無実を証明する第一級の証拠だ。詳細はぜひ『虚偽自白はこうしてつくられる』(浜田寿美男著・現代人文社)を読んでほしい。石川さんが事件のことをなにも知らないことがはっきりわかる。たとえば、遺体はタオルで目隠しされ、手拭いで後ろ手に縛られて発見されているが、録音テープでは石川さんは、そのことをまったく知らなかった。あるいは農道に埋められていた遺体の衣服は、比較的きれいな状態であって、畑のなかをひきずられたようすがないにもかかわらず、石川さんは穴までひきずって行ったなどと語り、取調官から何度も実際と違うことを指摘されている。録音テープには、無実の石川さんが刑事に誘導されて、警察の筋書にそって犯行を認めていくさまがしっかりと記録されている。弁護団は鑑定書をつけてこれを新証拠として提出した。録音テープは、きわめて重要な無罪の新証拠だ。
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狭山第3次再審闘争は、いよいよ山場をむかえた。部落解放同盟中央本部は4月30日の中央委員会で、証拠開示と新証拠提出によって切りひらかれた再審闘争の現状を確認し、いまこそ事実調べ・再審開始を実現しようと誓い合った。そして、5月21日に日比谷野音でひらく「狭山事件の再審を求める市民集会」に向けて全国でとりくみをすすめることを確認した。5.21に向けて全国各地で狭山の集会や学習会、街頭情宣、署名活動、要請はがき、狭山パネル展にとりくもう。また、東京高裁前の石川さんのアピール行動を支援し、映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」の上映運動を引き続き全国ですすめよう。
「東京高検は、すべての証拠物をすみやかに開示せよ」「埼玉県警・浦和地検の証拠物リストを開示せよ」「捜査書類をふくめた全証拠のリストを開示せよ」「東京高裁は、証拠開示で明らかになった新証拠の事実調べをおこなえ」。全国の都府県連・支部、すべての狭山支援者は、5.21に向けて行動を開始しよう。
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