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寺尾判決の「秘密の暴露」を崩す新証拠提出をふまえ、狭山再審を求める5・24狭山市民集会に結集しよう

「解放新聞」(2016.03.28-2756)

 狭山再審闘争は、弁護団の粘り強い闘いによって証拠開示がかちとられ、開示された証拠をもとにつぎつぎと新証拠が提出されるなかで重要な段階を迎えている。部落解放同盟と部落解放中央共闘会議、狭山事件の再審を求める市民の会を中心とする実行委員会は、事件発生から53年目を迎える5月24日に東京・日比谷野外音楽堂で「5・24狭山事件の再審を求める市民集会」をひらく。全国からこの集会に参加しよう。いまこそ証拠の全面開示と事実調べをかちとって再審開始を実現しよう。
  狭山再審弁護団は、2月26日付けで、「秘密の暴露」とされた被害者宅付近の駐車車両の目撃について、三宅洋一・千葉大学名誉教授の鑑定書、実験報告書、再審理由補充書を提出した。寺尾判決は、脅迫状を届けたときに被害者の家の東に車が駐車していた、とする石川さんの自白のように貨物自動車が駐車されていたとして、これを犯人しか知らない「秘密の暴露」として、石川有罪の証拠の一つにあげていた。しかし昨年5月1日、画像解析の専門家である三宅洋一・千葉大学名誉教授が狭山現地で車両の目撃の再現実験を実施した結果、寺尾判決のいう駐車時間帯(午後7時~7時40分)に、約64メートル離れた場所から車両の識別はできないことが科学的に明らかになった。秘密の暴露にあたるとした寺尾判決の有罪の認定が、さらに一つ崩れた。寺尾判決は、脅迫状が届けられた午後7時30分頃と一致する午後7時過ぎから午後7時40分頃に車の駐車があったとしていたが、はたして見えるのかどうかについて三宅鑑定人は、照度測定、被験者による科学的な視認実験をおこなった。その結果、寺尾判決のいう午後7時過ぎからという時間帯では、約64メートル離れたところから駐車車両を目撃したとする証言はありえない、目撃できないと結論づけた。今回の実験は、車を駐車させた人や車両を目撃していた人たちの調書、捜査報告書が2013年1月に証拠開示されたことをふまえておこなわれたものだが、開示証拠と今回の三宅鑑定、実験報告書などによって、車両が駐車されていたのは寺尾判決のいう時間帯ではなく、もっと早い時間帯であることが科学的にはっきりと明らかになり、「秘密の暴露」にあたるから有罪だとした寺尾判決の根拠が崩れたのだ。

 3月4日に東京高裁で第27回3者協議がひらかれ、弁護団が強く開示を求めていた「万年筆」「財布」「手帳」関係の証拠開示について、検察官は検討すると回答した。被害者がもっていた「財布」「手帳」について、開示された取調べの録音テープのなかで、石川さんが何も知らないことがはっきりあらわれている。被害者の「財布」「手帳」について警察がどのような捜査をおこなったかについての証拠を開示することは、事件の真相を究明するうえできわめて重要だ。
  ところで前回の3者協議で、弁護団は「秘密の暴露」とされた脅迫状を届けたときの「車の追いこし」「車の駐車の目撃」について強く証拠開示勧告申立てをおこなった。これにたいして検察官は、すべて調べたが不見当(みあたらない)であるという回答をくり返したため、弁護団が、当初から存在しないのか、存在しない理由や経緯を説明すべきではないかと追及し、裁判所は検察官に書面で回答するよう検討を求めていた。今回弁護団はその回答に注目したが、検察官はこれらの証拠は不見当であり、当初から存在しないかどうかは不明だ、というまことに不誠実で無責任な意見書を出してきた。また、弁護団は、事件直後に複数の警察官が被害者宅周辺の聞き込みをおこなったことを法廷で証言していると指摘し、これら捜査官らの作成した捜査報告書の証拠開示勧告申立書を提出していたが、これについても検察官は、不見当と回答した。弁護団は、捜査段階で存在したはずの「犯行現場」を撮影した8ミリフィルムが不見当としていることを指摘し、埼玉県警など東京高検以外で作成された証拠物一覧表の開示を求めたが、検察官はこれも開示の必要はないとして拒否した。検察官は、一貫して証拠開示を拒んでいる。しかし、2月末には4300件もの事件の捜査資料や証拠品10000点以上が30年以上にわたって検察に送られず放置されていた、という大阪府警のずさんな証拠管理が明るみに出て問題になった。東京高検の不誠実、不公平な対応を厳しく弾劾し、埼玉県警などの証拠物一覧表を開示せよとの世論をさらに大きくしなければならない。

 狭山第3次再審では、2010年5月以降、この6年の間に185点の証拠が開示された。開示された証拠のおもなものをあげれば、逮捕された当日の狭山署長にあてた上申書、取調べの録音テープ、腕時計の捜査資料、遺体についていた手拭いの捜査資料、カバンの捜査資料、駐車の目撃に関する捜査資料などがあげられる。いずれもきわめて重要なこれらの証拠の開示によって、①脅迫状は石川さんが書いたものでない②発見された腕時計は被害者のものではない③犯行に使われた手拭いは石川さん宅のものではない④カモイの万年筆は被害者のものではない⑤「自白」はつくられたものである、ことが明らかになった。
  第3次再審請求からまる10年、開示された証拠によって、いよいよ石川さんの無実が明確になってきた。今回の三宅鑑定を含めて、これまで弁護団が提出した新証拠は182点になった。再審開始を実現するために、弁護団の提出した新証拠や証拠開示についての学習と教宣を強化し、世論を広げていこう。次回の第28回3者協議は5月下旬におこなわれる予定だ。ちょうど、狭山事件が発生し、石川一雄さんがえん罪におとしいれられて53年目を迎える。不当逮捕を糾弾し、事実調べ―再審開始を訴えて5月24日に東京・日比谷野音で市民集会をひらく。全国の同盟員、共闘、住民の会の仲間はこの集会に結集しよう。各地で学習会や街頭宣伝、署名活動、要請ハガキ運動などのとりくみをすすめ、証拠開示と事実調べをおこなえ、という世論をさらに大きくしていこう。


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