71年目の8・15に向けて反戦・反核のとりくみを強めよう
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第24回参議院選挙が7月10日に投開票された。結果は、自公政権が「改選議席の過半数」の61議席を上回り、非改選議席と、自公両党と憲法改悪に前向きな政党や無所属議員を加えると、改憲発議に必要な3分の2の議席を確保する結果となった。この結果を受けて、安倍首相は、会見で今後の改憲議論について、衆参両院の憲法審査会で秋から議論をすすめていく考えを示した。「集団的自衛権行使合憲」の閣議決定、「戦争法の強行採決」に続き、憲法「改正」に向けて大きな流れがつくられたといっても過言ではない。私たちは、敗戦・被爆から71年を迎えるなか、「戦争をする国」へと舵をきる危機的政治状況をふまえ、反戦・反核のとりくみを強めなければならない。
昨年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、合意文書を採択できずに閉幕し、核軍縮は大きく停滞した。世界には、いまなお1万5700発もの核兵器が存在し、そのほとんどがアメリカとロシアによって保有されている。冷戦時代からみれば、約4分の1に削減されたものの、アメリカとロシアは、核兵器の一部を即時に発射できる態勢を維持しており、数千の核ミサイルが約10分で発射できる状態だ。こうした厳しい状況のなか、今年5月27日、アメリカのオバマ大統領が初めて広島を訪れ、被爆者と対話をし、「核廃絶」の演説をしたことは大きな意義があった。しかし、核廃絶に向けた具体的行動が何ひとつ語られず、核大国の核軍縮への壁がいまだ高いことを物語っている。あらためて、被爆国日本の原水禁運動の果たす役割がますます重要となっている。
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福島第1原発事故から5年が経過した。事故が発生した5年前の「緊急事態宣言」は、いまだに解除されていない。
現在も、核燃料が溶融した原子炉を常に冷却しているため、大量の高濃度汚染水が発生し、貯水タンクのあらたな設置に日日追われている。このままでは、汚染水対策だけでも早晩行き詰まることは確実だ。現在7000人の作業員が事故の収束にあたっているが、冷却に使用した汚染水対策、地下水の汚染対策、溶融燃料の確認と取り出しの技術確立など、まったく先の見通しが立っていない。
しかし、国は「自主避難者」への住宅の無償提供、商工業者への営業損害補償、避難住民への精神的賠償などを終了させようとしている。同時に、2017年度末までに居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示をすべて解除することを決定している。国の強硬な帰還政策と補償などの打ち切りは、福島県民を切り捨て、原発事故をなかったことにしようとする姿勢だ。これを断じて許してはならない。
福島第1原発事故の被災者が中心となった福島原発告訴団は、2012年6月に東電元幹部3人を「津波の規模を知りつつ恣意的に対策を取らなかった」として告訴・告発した。東京地検は2度不起訴としたが、東京第5検察審査会は2015年7月、東電元幹部3人を2度目の「起訴相当」にし、これにより3人は業務上過失致死傷罪で強制起訴されることになった。
しかし、全町避難が続く浪江町住民が、2013年に起こした「裁判外紛争解決手続き」で、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)が、東京電力に賠償金増額の和解案を受け入れるよう勧告したのにたいし、東電は再三にわたって受諾を拒否した。しかも、東電は、6回もの和解案を拒否している。事故の責任を曖昧にして公的和解に応じない姿勢は、許されるものではない。
福島第1原発事故により避難生活を余儀なくされている人たちは、いまだに福島県だけで9万2154人(2016年5月現在)存在している。被災住民は各地で長期にわたる避難生活を強いられ、生活や就労、健康、住民差別などの問題を抱えており、被災住民に寄り添ったとりくみが求められている。
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鹿児島県の川内原発は、福島原発事故後の新規制基準による再稼働第1号となり、昨年10月には、川内原発の2号機も再稼働させている。さらに、今年1月には、福井県の高浜原発3号機が再稼働し、高浜原発3号機は、MOX燃料を使用するプルサーマルとして新規制基準で最初の稼働となった。福島原発事故以降、原発周囲30㌔圏内を「緊急時防護措置準備区域」(UPZ)として、国は地方自治体にたいして避難計画の策定を義務づけた。しかし、避難計画の実効性にたいしては大きな疑問が多くの市民や団体から寄せられている状況にある。
高浜原発3・4号機は、2015年4月に福井地方裁判所によって運転差し止めの仮処分命令がだされた。しかし、電力会社の訴えにより、同年12月に、基準値振動をこえる地震が起きる確率を「1万年~10万年に1回程度のきわめて低い数値、社会通念上無視しうる程度」との判断のもと、仮処分命令が取り消された。
そのようななかで、2016年3月、滋賀県民が訴えた、高浜原発3・4号機の運転差し止め仮処分申請で、大津地裁は、新規制基準でも、「過酷事故対策や緊急時の対応方法に危倶すべき点がある」として、住民の訴えを認めて運転差し止めを命じた。原発立地自治体以外での運転差し止めを認めた大津地裁判決は画期的であり、また、これまでの脱原発運動と市民の思いをくみとったものとして高く評価される。
重大事故の再発を前提として国民の人格権や生存権を侵害する「憲法違反の原発再稼働」に反対する闘いだ。国の「原発=安全」「原発再稼働」ありきの姿勢を絶対に許さず、多くの市民や団体と連携し、再稼働阻止に向けた運動を全国で展開しよう。
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私たちは、敗戦のなかで、侵略と植民地支配の反省の上に立って生まれた、日本国憲法の「平和主義」「民主主義」「基本的人権の尊重」という三大原則を、絶対に守っていかなくてはならない。
参議院選挙では「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と連携し、32の1人区すべてで「市民連合」との政策協定を締結するとともに、戦後初めて野党共闘を実現し、11人もの当選をかちとった。参議院選挙と同時に闘われた鹿児島県知事選挙では、脱原発を訴え、全国で唯一稼働する川内原発の停止・点検を公約とした候補者が勝利し、脱原発運動が力強く前進した。
また、7月10日付けの新聞で、オバマ米大統領が来年1月の任期満了までに、核軍縮に向けた核政策の大転換を図ることを検討していると報道された。対象の1つが、今年9月で採択20年を迎える包括的核実験禁止条約(CTBT)だ。核保有国の核実験全面禁止は、いずれ核兵器そのものをなくすことにつながり、条約が発効すれば核兵器のない世界が実現すると期待された。しかし、署名国183、批准国161を数えるが、発効要件国の未批准や署名も批准もしていない国が存在し、いまだに発効していない。米連邦議会は上下院とも核軍縮に消極的な野党共和党が多数派のため、困難が予想されるが、実行されたならば画期的なことだ。
こうした状況のもと、8月4~6日に被爆71周年原水爆禁止世界大会・広島大会、8月7~9日に被爆71周年原水爆禁止世界大会・長崎大会がひらかれ、8月15日には被爆と敗戦から71年目を迎える。
私たちは、「戦争をさせない1000人委員会」や「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」に積極的に参加し、原発再稼働を許さず、脱原発とすべての核兵器廃絶にとりくみ、核と戦争のない平和な21世紀を実現しなければならない。そして、すべての市民と連帯し、「戦争法」廃止、憲法改悪阻止に向け、全力でとりくもう。
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