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各地の実践と成果をもちより大阪での全人教大会を成功させ、人権・同和教育の輪を拡げよう

「解放新聞」(2016.10.24-2784)

 第68回全国人権・同和教育研究大会が11月26、27日、「差別の現実から深く学び、生活を高め、未来を保障する教育を確立しよう」という大会テーマのもと、大阪府内の各会場にわかれてひらかれる。当初、今年の第68回大会は熊本県で開催することが決定しており、熊本県人権教育研究協議会を中心とした多くの関係者が、地元で開催する責任と期待を胸に、大会の成功に向けて準備をすすめてきた。
  しかし、周知のとおり、4月に発生した熊本地震による被害は甚大であり、その後も断続的に余震が続いていることなど、当初の計画どおりの運営が困難であるとの判断から、熊本での開催を断腸の思いで断念し、全人教の単独主催というかたちで、大阪の地で開催されることになった。
  研究大会の開催受け入れに向けて、多大な尽力をいただきながらも被災された熊本県の皆さまに心からお見舞いを申しあげるとともに、歴史ある研究大会を途絶えさせることなく、短い期間のなかで大阪開催にこぎつけられた全人教関係者のみなさまの奮闘努力に敬服するところです。

 さて、日本社会は、多くの人びとの記憶にのこるだけでも、阪神・淡路大震災、東日本大震災そして今回の熊本地震と、3度にわたる大きな自然災害に直面した。そこでは、一瞬にして多く生命と財産が奪われ、それまでの平穏無事な日常が根底から覆され、生活までもが破壊されてしまう。
  そこから、官民問わず多くの支援のもとで、個個の人びとがそれまでの日常を取り戻すために、並なみならぬ努力を積み重ね、相当の時間とエネルギーを費やしながらも、生活再建への道のりがいかに険しいものであるかをみてきた。
  ところで、日本社会での生活破壊は、非常事態に限らずこれまでもくり返されてきており、今日、新自由主義がまんえんする日本社会のなかで、さらに深刻化していることを理解しておくことが重要である。
  非常時に比べて、生活破壊の状況や課題が顕在化しにくく、資質や能力など個人の問題に還元したり、家庭の問題に矮小化するなど、不当な評価と責任の押し付けがおこなわれでいるが、子どもの貧困に象徴される生活困難層が増大している現実や、インターネットやSNSで被差別部落の地名を暴露するなど、被差別者・マイノリティにたいする誹謗・中傷や、ときには個人攻撃さえもが生じている差別の現実を直視しなければならない。

 労働市場の自由化や社会保障費の削減によって、子どもたちの生活の場である家庭のなかは、外からみるよりもひっ迫した情況に置かれている。また、興信所を使った身元調査や統一応募用紙違反など公正採用選考違反事例が少なからず報告されるなど、部落出身者をはじめ特定の属性にある子どもたちを排除し、未来を閉ざそうとする差別的な雇用慣行がいぜんとして温存されている。
  これが、今日の日本社会の現実であり、いまも続いている差別の現実なのである。差別と貧困の連鎖を断ち切るために、部落解放・差別撤廃、そして子どもたちの未来を切り拓くとりくみを強化しよう。

 目の前の一人ひとりの子どもたちの生活に寄り添いながら、その生活実態を教育課題ととらえ、「今日も机にあの子がいない」にはじまり「進路保障は同和教育の総和である」と確認してきた人権・同和教育の歩みを着実にすすめていこう。
  第68回全人教大阪大会に、各地の人権・同和教育の豊かな実践と成果をもちより「差別の現実から深く学ぶ」ことを合言葉にした教育実践を、全国の仲間に向けて力強く発信し、人権・同和教育の輪を広げよう。


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