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マイノリティへの支援を重点的にすすめる震災復興支援のとりくみを求めよう

「解放新聞」(2016.12.12-2790)

 10月21日午後、鳥取県倉吉市で震度6弱、鳥取市などでも震度5強の大きな地震があり、重軽傷者が21人、住宅関係で1万3335棟が被災という大きな被害が出た。また、地震直後には避難所が7市町70か所に設置され、3000人が避難した。
  鳥取県連の報告では、とくに震源地に近い倉吉市内の支部で、住宅や集会所に瓦の落下や棟のずれ、外壁のひび割れなどの被害が大きい。また、同和対策事業による集会所や老人憩いの家などにも、大きな被害が出ている。倉吉市内のこうした施設は譲渡され、地元の自治会や支部の管理となっており、自主財源での修繕が必要になっている。施設は、地区住民の集いの場であり、部落解放運動の拠点として活用されている。早急に修復をすすめなければならない。
  中央本部では、すでに、鳥取県連からの要請を受けて、都府県連に支援カンパをよびかけている。この間、2011年の東日本大震災、今年4月の熊本・大分を中心にした熊本地震での復興支援に向けたカンパ活動をすすめてきたが、今回も、部落解放運動の拠点である施設の修復・修繕のために積極的な支援にとりくもう。

 熊本・大分を中心にした熊本地震でも、震源地近くの益城町内の支部をはじめ、熊本県内で大きな被害が出た。道路が寸断されたため、全国からの救援物資は福岡県連の協力で現地に搬送された。支援カンパのとりくみもすすめられ、熊本県と、住宅が全壊、半壊の被害を受けた支部員に届けられた。
  地震は自然災害ではあるが、山間部などの環境条件が悪い被差別部落では、さらに被害が大きくなる場合が多い。東日本大震災いらい、全国で耐震問題などの災害対策が課題になっており、国土交通省との交渉のなかでも津波対策とともに、切実な要望が出されている。しかし、災害復興は、大型公共事業としてすすめられ、地区住民の生活支援は置き去りにされている。また、この間の震災で指摘されているのは、障害者や高齢者、女性、在日・滞日外国人など、マイノリティが震災支援から遠ざけられ、十分な措置がとられていないという深刻な問題がある。
  東日本大震災では、障害者が避難所に入ることができずに被災した施設に取り残されたり、必要な情報や支援物資が届かないなどの問題がおきた。私たちは、全国から寄せられた支援カンパの一部で、障害者用自動車を気仙沼市の知的障害者施設に寄付した。このように移動や情報収集に制約のある障害者、高齢者をはじめ社会的弱者にたいする支援は、今後とも継続的にとりくまなければならない。自然災害が、差別や排外主義のなかで人災になることを許してはならない。

 東日本大震災では、津波での大きな被害と、福島第1原発事故によって、いまだに避難所生活を余儀なくされている多くの住民がいる。死者は1万5000人以上で、いまだに行方不明者も2500人以上となっている。津波による被害が広範囲になっているうえに、いまだに震度6程度の地震がおこるなど、復興支援がすすんでいないのが実情だ。
  しかも、原発事故で避難した住民や子どもたちは、移転先の地域や転校先の学校で差別やいじめにあうなどの問題が深刻化している。
  九州でおこった地震でも、「在日朝鮮人や部落民が井戸に毒を入れた」などの、差別デマがインターネット上に流された。まさに関東大震災のときの在日朝鮮人虐殺や社会主義者への弾圧につながった差別・排外主義が今日でもなお安易に流布し、受け入れる社会意識が存在する。「障害者は生きていても無駄」と、7月に神奈川県相模原市の障害者施設の入所者19人を殺害、26人に重軽傷を負わせたヘイトクライム(憎悪犯罪)も同様だ。
  自然の力にたいして人間の存在はあまりにも無力である。しかし、復興支援をはじめ、被災地支援のとりくみのなかで、社会的マイノリティが置き去りにされ、差別、排除されるような「人災」を許してはならない。被災地支援への継続したとりくみを強めよう。


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