部落解放運動の成果を確認し、人権と平和、民主主義と環境の確立をめざそう
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憲法改悪の策動が強まるなかで、人権や平和の課題が大きく後退している。憲法違反の「戦争法」が施行され、南スーダンに自衛隊が海外派兵された。派兵された自衛隊には、「戦争法」にもとづいて、「駆けつけ警護」「宿営地の共同防護」の任務が付与されている。南スーダンの情勢は、国連人権理事会特別会合でも「全面的な民族間の内戦に陥る危機に直面している」と警告されている。「紛争当事者間の停戦合意」など、国連平和維持活動(PKO)の参加条件が成立していないにもかかわらず、憲法改悪を先取りするために自衛隊を派兵したもので、断じて許すことはできない。
沖縄では、辺野古新基地建設が住民の意思を無視してすすめられ、東村高江では、ヘリパッド建設の強行に反対する住民に、大阪府警機動隊員が「土人」「シナ人」との差別発言を浴びせた。沖縄の米軍基地問題は、沖縄にたいする差別問題であり、日本社会の差別構造を解体していくための闘いとしても、とりくんでいかなければならない。
しかも、12月13日には名護市の海岸近くの浅瀬にオスプレイが墜落し大破する重大事故がおきた。また、そのさい、沖縄県副知事と会談した在沖縄米軍司令官の「住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきだ」との暴言に「まるで占領軍」と非難が集中した。オスプレイ配備は沖縄以外にも横田基地(東京)や岩国基地(山口)が予定され、陸上自衛隊では佐賀空港への配備が計画されており「沖縄の負担軽減」を口実に、構造的な欠陥が指摘されている危険なオスプレイがいま以上に全国各地の上空を飛ぶことになる。
私たちは、この間、国会前の総がかり行動をはじめ、全国でとりくみをすすめてきた。戦争は最大の人権侵害であり、差別である。反戦・平和の闘いの先頭に荊冠旗を打ち立て、共同闘争を前進させよう。
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人権と平和の確立に向けたとりくみでは、「部落差別解消推進法」を12月9日の参議院本会議で可決、成立させることができた。5月に自民・公明・民進の3党による議員提案がなされ、衆議院法務委員会で趣旨説明、審議がおこなわれたが、先の通常国会で継続審議となっていた。
9月26日からの臨時国会では11月16日の衆議院法務委員会で可決、17日の衆議院本会議で可決し、参議院に送付された。しかし、TPP関連法案の審議などの国会情勢の影響を受けて、参議院法務委員会の審議入りは、会期延長されたあとの12月1日となった。とくに6日の参議院法務委員会では、西島書記長が参考人として意見陳述をおこない、結婚差別や鳥取ループ・示現舎による「全国部落調査」復刻版出版事件など、今日の部落差別の厳しい実態を訴えた。また、この法律が「現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ」「部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題である」としていることを評価し、国や自治体があらためて施策を推進していくことに期待したいと強調した。
この間、中央実行委員会加盟団体や都府県実行委員会による東京集会、国会議員要請行動などがとりくまれ、法制定実現に向けた活動が積みあげられた。「部落差別解消推進法」は、5月に制定された「ヘイトスピーチ解消法」と同様、罰則規定のない理念法である。しかし、法律名称に「部落差別」という文言が使用され、部落差別の存在を認めたことの意義は大きい。「障害者差別解消法」「子どもの貧困対策法」など、安倍政権のもとで、個別の差別問題・人権課題にかかわっての法的措置が実現している。それぞれのとりくみの成果と課題を共有化し、総合的な人権の法制度に向けて協働、連帯の闘いをすすめていこう。
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狭山再審の闘いでは、証拠開示された取調べテープ、万年筆のインクに関連した弁護団の新証拠提出によって「石川無実」の世論をいっそう広げることができた。取調べテープに関しての「浜田鑑定」では、石川さんが被害者の財布のことを知らなかったり、手帳と財布を混同するなど「自白」の不自然さが明白になった。また、証拠開示されたインク瓶によって明らかになった、「自白」どおりに発見された万年筆は被害者のものでないという「下山鑑定」も決定的だ。
全国で「下山鑑定」の学習会、情宣活動にとりくむとともに、取調べ再現DVDを活用して、事実調べを実現し、石川無実―再審開始をかちとろう。
さらに、今年は、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争に全力をあげてとりくんできた。「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」復刻版として、被差別部落の地名をインターネット上に掲載するなど、確信犯的で悪質極まりない差別事件である。裁判闘争をとおして、部落差別を許さない断固とした闘いを展開し社会的に鳥取ループ・示現舎の差別性を明らかにしていこう。
昨年は、都府県連と協働して「同和対策審議会」答申から50年をふまえた全国行動にとりくんできた。今後とも、同和行政・人権行政の推進の課題を中心にすえ、部落差別撤廃のための施策を要求することは当然の闘いだ。そのためにも、いまある部落差別の実態を明らかにしていかなければならないことはいうまでもない。
「部落差別解消推進法」をかちとった協働の運動の積みあげを成果として確認し、この法律を実効あるものにしていこう。
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