部落解放運動の大道を切り拓く勝利の年に
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反人権主義・国権主義に抗して、部落差別撤廃と人権政策確立の闘いを前進させ、部落解放運動の飛躍の年にするために、今後の部落解放運動の方向や新たな部落解放運動の展開について、大いに論議し、実践を積み重ねよう。
この間、経済のグローバル化がすすむなか、新自由主義政策によって格差拡大社会が固定化し、貧困と格差の問題が深刻化するとともに、差別排外主義の台頭が多くの国のなかに分断・分裂を生み出している。昨年の米国大統領選を制したトランプ共和党候補も、差別言動をくり返し、排外主義を煽動しながら「米国第一」を掲げ、「力と力の対決」による核兵器増強を打ち出すまでになっている。
また英国では、難民対策や経済政策の不満からEU(欧州連合)離脱を国民投票で決めた。さらにフランスやドイツ、ハンガリー、ポーランド、デンマーク、オーストリアなどの多くの欧州諸国でも、テロや難民問題、失業問題を背景に差別排外主義政党が伸長し、難民や移民労働者への襲撃が大きな社会問題になるなど、世界的な不寛容の時代ともいうべき事態が現出している。
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こうした世界的な現象は、日本社会でも顕著になっている。昨年11月には、憲法違反の「戦争法」にもとづいて「駆けつけ警護」「宿営地の共同防護」の任務が付与された自衛隊が南スーダンに派兵された。国連平和維持活動(PKO)に参加する要件がすでに崩壊しているにもかかわらず、派兵を強行するのは、自衛隊の海外での武力行使を可能にし、実質的な憲法改悪の先取りをするためでしかない。沖縄での新基地建設反対など、戦争と差別に反対する闘いをさらに強化し、「戦争法」廃止に向けた協働の闘いを前進させよう。一方、国内経済では、すでに破綻しているアベノミクスにあくまでも固執し、円安と株価高騰で好景気を演出しようとしている。しかし、実質賃金は低下し、年金削減や医療、介護などの社会保障制度と労働法制の改悪を強行するなど、貧困と格差はますます深刻化している。さらに、こうした厳しい政治経済情況を押しつける安倍政権のもとで、差別排外主義が台頭している。しかも、ヘイトスピーチによる差別煽動や神奈川県相模原市の障害者施設へのヘイトクライム(僧悪犯罪)などのように、マイノリティにたいする差別意識がより攻撃的な言動となって日常化している。
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こうした厳しい差別実態のなかで、昨年5月に「ヘイトスピーチ解消法」が成立し、12月9日には「部落差別解消推進法」が成立した。それぞれの法律は罰則規定のない理念法的な内容になっているが、「部落差別解消推進法」では、部落差別が許されないものであることを明記し、部落差別を許さない社会を実現することを目的にしていることに大きな意義がある。
「部落差別解消推進法」について、実効性のない法律を成立させて「国民を懐柔している」「与党にすり寄るもの」との批判がある。しかし、この法律の実現に向けて、部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会に結集する団体や都府県実行委員会が、中央集会をはじめ、独自の東京集会、国会議員要請を積み重ねてきた。また、自民党の要請によるヒアリングでも、今日的な部落差別の実態を説明、法案に盛り込むべき内容を訴えてきたし、参議院法務委員会で参考人として意見陳述した西島書記長が、この法案の必要性を強調し、積極面を評価するなど、法案の実現に向けて、部落解放同盟のとりくみが原動力になったことは明らかである。それは、今日の厳しい部落差別と闘っているのが部落解放同盟だけであることの証明でもある。
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いま必要なのは「部落差別解消推進法」の不十分な内容をめぐって、消極的な評論をしたり、何か政治的背景を問題視することではなく、部落解放運動がこの法律を大いに活用して、部落差別の撤廃に役立つものにしていくことである。同和行政は「特別措置法」によってしか実施できないものではない。部落解放に必要という位置づけを明確にして事業を集約し、実現させていくことが重要だ。今後の行政闘争の方向についても大いに論議していこう。
狭山再審の闘いは、この間の証拠開示によって、石川さんの自宅で「発見」された万年筆が、被害者のものではないことを明らかにする「下山鑑定」が提出された。また、こうしたウソの「自白」が強要される「取調べテープ」を再現したDVDも完成した。全国各地で教宣活動や学習会を強化し、石川無実の世論をいっそう大きくし、再審実現に向けて全力をあげよう。
さらに、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争でも、部落差別を許さない社会的世論で包囲し、完全勝利をかちとろう。
今年は、組織と運動の強化、人材育成をすすめながら、こうした闘いの課題にともに果敢にとりくみ、部落解放の闘いの大道を切り拓く勝利の年にしよう。
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