「解放新聞」(2017.04.24-2808)
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昨年4月に「障害者差別解消法」、6月には「ヘイトスピーチ解消法」の施行、12月に公布・施行された「部落差別の解消の推進に関する法律」(以下、「部落差別解消推進法」)と、差別解消に向けた法律が大きく前進した1年となった。
「部落差別解消推進法」の意義は、今日もなお部落差別が存在することを認め、部落差別のない社会を実現することを目的としたことにある。さらに、部落差別が社会悪であることを訴え、国および自治体がその解決のために、相談体制の充実、教育・啓発の推進、実態調査を実施することを明記している。
本年は憲法施行から70年である。しかし、安倍政権は「特定秘密保護法」や「戦争法」を成立させ、集団的自衛権容認による憲法を無視した「戦争のできる国」づくりに向けての策動をすすめ、「共謀罪」の制定をもおこなおうとしている。
一方、不十分ながらもマイノリティの個別課題の法律が実現していることをふまえ、制度・政策にかかる研究もすすめなければならない。
東日本大震災から6年となり、被災地では復興住宅の建設や集団移転などの復興事業として公共事業をすすめるだけで、生活再建につながる支援はすすんでいない。さらに、昨年4月に熊本県を中心に震度7をこえる大地震が発生、10月には鳥取県中部で震度6の地震が発生した。複数の部落で家屋が被害にあい、運動の拠点である教育集会所や老人憩いの家などにも被害が出ており、ひき続き全国的な支援をよびかけ、カンパ活動などの支援のとりくみを強め、差別のない安心・安全な社会づくりに向けて、協働したとりくみをすすめていかなければならない。
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男女平等の幕開けともいえる「女性差別撤廃条約」の批准(1985年)、「男女雇用機会均等法」制定から、32年がたった。社会に根強く残る性差別やジェンダー(社会的文化的な性的役割・分業の固定化)意識は一向に是正されることなく、現在にいたっている。
現在、子どもの貧困が拡大している。親の貧困が子どもの貧困に結びつき、より深刻な状況であるにもかかわらず、実効ある対策がとられていない。生育環境の不利によって教育の機会が制限され、高校進学率が低いという現実がある。低学歴傾向や不安定就労の実態は、その後の人生に大きな影響をおよぼすものである。このような負の連鎖は、部落女性にたいして教育や就労、子育て等の場面で、より重くのしかかる。女性差別と部落差別が複雑に絡み合った複合的な差別の克服が大きな課題としていわれるように、社会や家庭、教育や就労の場面で、部落女性の実態が改善されることが必要だ。
2006年から2013年に7府県連(愛知・埼玉・大阪・兵庫・奈良・京都・大分)でとりくまれたアンケート調査(1万1765人が回答)でも、20〜30歳代の若年層にみられる低学力傾向や不安定就労、教育や就労、非識字、DVなど部落女性の実態が明らかになっている。まずは課題の改善に向けたとりくみをすすめていかなければならない。
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男女平等は憲法にも定められている大切なことだが、現実には女性にたいする差別が厳然と存在している。男女平等の意識をつくるには、なにがジェンダーなのかということに気づくことが大切だ。女性にたいする差別意識や、日常生活・メディアのなかに存在するジェンダーなどに気づき、身近なことから制度や慣習について、見直すことができるような「ジェンダーにとらわれない意識」を積極的に形成していくことが重要だ。また、部落解放同盟でもセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどについても、しっかりとした相談窓口をはじめ実効ある対策が必要だ。
第73回全国大会で採択・決定された「男女平等社会実現基本方針(第2次改訂版)」をしっかりと学習し、各都府県連で、男女平等社会推進本部を立ちあげていこう。
国際女性デーの3月8日に、マイノリティ女性フォーラムが正式に発足した。部落、在日コリアン、そしてアイヌ女性たちは、女性を理由にした差別とマイノリティコミュニティにたいする差別がもたらす複合差別という共通の課題でつながり、「女性差別撤廃条約」を活用し、それぞれの実態について国内・国際レベルで可視化する努力を重ねてきた。とくに、2016年の女性差別撤廃委員会による日本審査では、そうしたマイノリティ女性の直面する課題について委員会は懸念をあらわし、日本政府にたいして是正を促す勧告を多数だした。実態の可視化とともに求められるのは行動だ。これまでとってきた協働行動の経験を将来の活動につなげることをめざし、マイノリティ女性フォーラムを結成した。今後とも、さまざまな女性団体との協働したとりくみをすすめ、勧告の完全実施をかちとっていくことが必要である。
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部落解放第62回全国女性集会を5月13、14日、岐阜市内でひらく。分科会では、部落解放・人権政策の確立に向けた闘い、狭山再審闘争や鳥取ループ・示現舎などの確信犯的な差別者にたいする差別糾弾闘争の強化、複合差別の視点での男女平等社会の実現、自立自闘に向けた闘いと人材育成をはじめとした女性部組織の拡大、人権と福祉のまちづくりの実現など、7つのテーマにわかれて運営する。分科会によっては、学習講演形式ですすめる分科会もある。各分科会で女性部の活動の実践交流と論議を深め、活発な意見を出し合おう。 女性をとりまく状況も大きく変化している。集会で学んだことをふまえ、部落解放運動だけではなく、さまざまな差別と闘う国内外の女性と反差別・反貧困のネットワークをつくることが求められている。すべての女性たちとの連帯をさらに強化し、人権と平和の確立、いのちと生活を守る協働のとりくみを地域ですすめよう。 私たちは、あらためて憲法違反の「戦争法」の廃止をはじめ、差別と戦争に反対する闘いを強めることを確認しよう。そして、男女がともにジェンダーによって役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない男女平等社会の実現に向けて、部落女性の力を総結集して第62回全国女性集会を成功させよう。
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