「解放新聞」(2017.07.03-2817)
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テロ対策を口実にした「共謀罪」を強行成立させた安倍政権は、さらに憲法改悪の策動を強めている。
しかし、法案審議がすすむなかで「共謀罪」が監視社会を生み出し、現代の「治安維持法」とまで指摘されるように、市民運動や労働運動を弾圧し、萎縮させる狙いが明白になり、ついに参議院法務委員会の採決を省略して参議院本会議での「中間報告」の提出という暴挙で、強引に成立させなければならないほどに、全国での「共謀罪」反対の闘いが、大きなうねりとなって安倍政権を追い詰めたのである。私たちは「戦争法」とともに、「共謀罪」廃止に向けて、さらに幅広い協働した闘いをすすめよう。
安倍政権による戦前回帰の戦争推進政策に反対する闘いは、人権と平和の確立、いのちとくらしを守る闘いをすすめる部落解放運動の重要なとりくみ課題だ。安倍政権は、オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を、みずからの憲法草案実現の目標にしながら、「安倍一強」のもと、民主主義破壊の政治をすすめている。「特定秘密法」と「戦争法」に続く「共謀罪」強行成立の暴挙を許さず、憲法改悪阻止や沖縄新基地建設反対に向けて、差別と戦争に反対する闘いに全力でとりくもう。
こうした人権と平和をめぐる危機的な情況のもとで、3月に開催した第74回全国大会での運動方針論議をさらに深め、全国での統一的な闘いの方向をしっかりと確立していくために、全国ブロック別支部長研修会で双方向のとりくみをすすめてきた。とくに「部落差別解消推進法」の具体化、狭山再審実現の闘い、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争の課題を中心に、運動方針のいっそうの豊富化をかちとり、今後の具体的なとりくみ課題も明確にしてきた。
こうした全国ブロック別支部長研修会の論議、意見交換をふまえ、部落解放運動の前進をかちとろう。
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全国ブロック別支部長研修会では、「部落差別解消推進法」の具体化に向けたとりくみとして、法の周知徹底に全力をあげることが確認された。2000年に「人権教育・啓発推進法」が制定されたものの、事業法である「特別措置法」が終了した2002年以降、国も自治体も部落問題の解決に向けた姿勢が、かならずしも積極的ではなかったのが実態である。
しかし、この間、直接に部落問題にかかわった法的措置がないなかで、悪質な部落差別事件が続発してきた。いまなお結婚差別事件が報告されており、差別身元調査や被差別部落の所在地の問い合わせは全国で集約されている。しかも、鳥取ループ・示現舎のように、全国の被差別部落の地名情報などを「部落地名総鑑の原典」などと宣伝して販売しようとしたり、そうした情報をインターネットに掲載して開き直るような、悪質極まりない差別事件もおきている。
こうした厳しい部落差別の実態があるからこそ、「部落差別解消推進法」が制定されたのである。法務省、文部科学省、厚生労働省、総務省などが、「推進法」施行を受けて、それぞれ通知を出している。さらに、法制定の周知徹底に向けて、都府県・市区町村への要請のとりくみをすすめよう。要請行動では、今日的な部落差別の実態を訴え、「推進法」のなかの「目的」や「基本理念」に明記されているように、部落差別が今日もなお存在し、部落差別は許されない社会悪であるとした法制定の意義をふまえた施策の推進を要求しよう。
すでに自治体によっては、リーフレットの作成(兵庫県)やテレビCMの放映(鳥取県)などの積極的なとりくみもすすめられている。また、全国隣保館連絡協議会(全隣協)や大阪実行委員会では、独自のポスターが作成されている。こうしたとりくみを積み重ね、法制定の意義を広く社会に訴えていこう。
また、「部落差別解消推進法」では「相談体制の充実」「教育及び啓発」「部落差別の実態に係る調査」がとりあげられている。それぞれの課題で、都府県連、地区協議会、支部などの地域の実情や運動の情況をふまえ、部落解放行政の推進に向けてとりくみをすすめよう。
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「部落差別解消推進法」制定の意義は、何よりも部落差別の存在を明記し、部落差別を社会悪として、部落差別のない社会づくりをすすめるとしていることである。「推進法」の具体化の課題では、必要な施策の充実、推進に向けて、自治体交渉を強め、協議していくことが必要であり、そのためにも、部落差別に関する実態調査の実施を求めていかなければならない。
また、私たち自身のとりくみとしても、地域での差別事件の集約、生活実態などを明らかにするとりくみが重要である。現在、法務省は全国の自治体に、この間の部落問題や人権問題に関する実態調査について照会し、集約をすすめているが、今後は、外郭団体である人権教育啓発推進センターに「6条調査有識者会議」を設置し、実態調査の内容や手法について検討することとしている。
すでに部落問題は解決の過程にあるとして、「推進法」に反対してきた日本共産党や全国地域人権運動総連合、時限立法を主張し、法務省の「人権侵犯事件処理規程」を活用するなどとしてきた自由同和会などは、「推進法」の「目的」や「基本理念」で明記されている、今日の部落差別の実態を意図的に無視したり、重要視しないことで、部落差別撤廃に向けたとりくみを放棄しているといえる。
私たちは、この「推進法」具体化のとりくみを地域で全力ですすめるなかで、部落差別の実態を訴えていかなければならない。「推進法」は、部落差別に関する現状認識と今後の部落解放行政の推進に向けた必要な施策を明らかにしたものであり、部落解放運動の力で実効性のあるものにしていこう。法律だけで部落解放が実現できないことは自明のことである。また、法制定の政治的背景も十分に分析しなければならない。しかし、「推進法」の具体化に向けた闘いをすすめていくことも重要である。
「推進法」は、「特別措置法」のような被差別部落に限定して環境改善などの事業をすすめるものではない。部落差別撤廃に向けて全国的な施策の推進を求めるものである。部落差別撤廃にとりくむすべての人たちとの協働の営みをすすめ、「推進法」の具体化をかちとろう。
これまで「障害者差別解消法」や「ヘイトスピーチ解消法」など、個別人権課題にかかわる法律が制定されてきた。それぞれ成立に向けた当事者団体を中心にした協働のとりくみの成果である。今後は、「推進法」の具体化とともに、そうした成果や課題を共有化しながら、部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会としてすすめてきた人権侵害救済制度をはじめとする包括的な人権の法制度の確立をめざす協働のとりくみをいっそう強めていこう。
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