「解放新聞」(2017.07.17-2819)
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昨年は、4月に「障害者差別解消法」が施行され、5月に「ヘイトスピーチ解消法」、12月に「部落差別解消推進法」が成立した。どれもが理念法であり、「差別は許されない」と法律に明記した。このことの成果はいうまでもないが、部落差別解消の実効性をもたせるためには、私たちのこれからの闘いが重要である。具体的なとりくみをどのようにおこなうのか、予算措置はどうするのか。課題は山積している。法律を絵に描いた餅にしないためにも全力で闘わねばならない。
このような法律をつくりあげた一方で安倍政権は、「戦争する」国へ、2013年には「特定秘密保護法」、2015年には「戦争法」を強行成立させた。そして、6月15日午前7時46分には、「共謀罪」法案を強行可決して成立させ、6月21日に公布、7月11日に施行させた。「共謀罪」によって市民運動や労働運動、解放運動までもが、弾圧される危険性をもっていることを自覚しなければならない。国家権力が市民を丸裸にする社会をだれも望んでいない。民主主義が崩壊し、自由に意見をいえない戦前への回帰、戦前の「治安維持法」を彷彿とさせるもので、とても不安な生活をおくらなければならない。
安倍政権の最終的なねらいは「憲法の改悪」によって9条も変えよう、というもの。「戦争する」国づくりをすすめるために、「武器輸出三原則」を撤廃し、防衛装備庁を設置するなど武器輸出をすすめている。また、大学や研究機関との協力体制を強化し、今年度の「安全保障技術研究推進制度」の予算は昨年の18倍の110億円に増額、防衛省の当初予算も2年連続で5兆円をこえている。
私たちの生活に目を向けると、日本銀行の「異次元の金融緩和」による株価高騰が景気回復を演出したものの、連続する実質賃金の低下は、貧困と格差をいっそう拡大し、固定化した。また、非正規労働者の増大、年収200万円未満のワーキングプアや貯蓄ゼロ世帯が増大し、子どもの貧困も深刻な社会問題になっている。
安倍政権は医療費負担増、年金や生活保護費、介護サービスの削減など社会保障費の削減をおしすすめている。消費税を5%から8%へ増税したにもかかわらず、社会保障にその財源が回されていない実態についても強く訴えていかなければならない。
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石川一雄さんの不当逮捕から54年が経過した狭山事件は、第3次再審請求開始から11年が経過した。
2009年からはじまった3者協議では、187点の証拠が開示され、弁護団は石川さんの無実を示す191点の新証拠を提出してきた。昨年提出された「下山鑑定」は「発見」万年筆が被害者のものでなかったということを明らかにした。この科学的な鑑定は、「殺害後に被害者の万年筆を持ち帰った」という石川さんの自白が虚偽であり、警察による証拠ねつ造の疑いを示している。また3月に提出した流王報告書は開示された航空写真をもとに、当時の地形を調査し、「被害者の鞄を捨てた」という石川さんの自白地点と実際の発見地点が大きく食い違っていることを明らかにした。
弁護団は時計・鞄・万年筆の3大物証の「秘密の暴露」のすべてが崩壊したことを明らかにした。裁判所は一日も早く再審開始決定をすべきだ。
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「部落差別解消推進法」制定の根拠となったのは、部落差別事件が多発している現実、部落差別が社会的に存在する事実であった。土地差別調査事件、戸籍等個人情報大量不正取得事件、インターネット上で「部落地名総鑑」を拡散させるという事件もおこっている。部落差別を助長・拡大させる確信犯である鳥取ループ・示現舎の行為はけっして許されず、現在、鳥取ループ・示現舎との裁判闘争をおこなっている。なにが差別であるかをしっかり学ぼう。そして、この裁判闘争にかならず勝利しよう 。
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8月19、20日、群馬でひらく、第49回全国高校生集会・第61回全国青年集会に多くの高校生・青年が結集しよう。そして、おおいに語り合おう。
同じ立場の兄弟姉妹が全国各地で悩みながら、もがきあいながら日日を一生懸命生きている。若者が、真剣に部落差別について語り合い、学び合う場がこの集会だ。はじめて参加する高校生や青年をおおいに歓迎したい。この集会に参加して、社会にたいする見方や考え方が少し変わったといえるような集会にしよう。
群馬の地で待っている。みんな集まろう。
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