「解放新聞」(2017.07.24-2820)
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部落解放文学賞は今年で43回を数える。昨年10月末までの応募期間に、識字部門19編、記録・表現部門9編、詩部門69編、小説部門21編、児童文学部門14編、戯曲部門5編、評論部門5編、総数にして142編の作品が寄せられた。第1次選考と最終選考をへて、入選5編、佳作7編を決定し、7月8日、大阪市内のホテルで表彰式をおこなった。
受賞者は、鎌田慧・実行委員会代表から一人ひとり表彰状を授与され、日頃の創作の苦労が受賞という形で実を結んだことを喜び合った。交流会ではまず、昨年の表彰式以降に亡くなった、小説部門の第1次選者、直原弘道さんと評論部門の第1次選者で、実行委員会運営委員である笠松明広さんに、冥福を祈り感謝の意を込めて黙祷を捧げた。その後、選者と受賞者がともにテーブルを囲み、親しく懇談した。反差別・人権確立の立場で創作に励む人たちが、今年も本文学賞に集い、執筆の苦労を語り合いつつ、いっそうの創作への決意を誓い合えた。審査の先生方、応募者の皆さんのご協力に心から感謝したい。
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近年、労働者文学などの文学賞が減少傾向にあることから、平和と反差別を標榜する部落解放文学賞の重要性が高まっている。「戦争法」や「共謀罪」法など、「戦争のできる」国へと突きすすむために準備された一連の法律が、形だけの国会審議、民主主義を骨抜きにする強行採決によって、可決、成立させられ、差別・排外主義が煽動される状況のなかで、反戦・平和と反差別・人権の立場からの文学運動の高揚が求められているのだ。
とりわけ私たちの部落解放文学賞は、「識字部門」を有し、他の6部門(記録・表現、詩、小説、児童文学、戯曲、評論)をあわせた7部門のなかでも、とくに重要な位置を占めている。差別や貧困、戦争によって文字を奪われた人たちの、生きるために、自分自身を人生を取り戻すために、文字を取り戻そうとする必死のとりくみのなかで、多くの作品が生み出されてきた。生い立ちや生活のなかにある差別を捉え返すことで、自分の生き方が大きく変わる。差別に満ちた社会の変革のために、自己の変革を遂げてゆく姿は部落解放運動の原点といえる。部落解放文学賞がそうした作品を掘り起こし、光を当て、多くの共感を得てきたことの意義は大きい。
識字学級についていえば、今日、自治体財政の逼迫(ひっぱく)や隣保事業の後退とともに、運営が困難になっている現状があり、そのことは識字部門の応募数の減少にもあらわれている。夜間中学校、日本語教室との連携を視野に入れつつ、とりくみの充実をめざす必要があるし、昨年12月に成立した「部落差別解消推進法」の具体化のなかで、現状打破の方向を探る必要もある。
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第43回部落解放文学賞の表彰式を終えたばかりだが、すでに第44回に向けた作品募集がはじまっている。「戦争のできる」国づくりに抗い、平和と反差別の力をさらに広げていくためにも、また、複雑化する社会と差別の状況に深く切り込むためにも、部落解放文学賞へのいっそうの結集をお願いしたい。
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