「解放新聞」(2017.07.31-2821)
「全国部落調査」復刻版出版事件で7月11日、横浜地裁相模原支部(荻原弘子・裁判官)は、ウェブサイトでの復刻版の公開や出版予告、「部落解放同盟関係人物一覧」掲載などをしてきたM(示現舎代表社員、鳥取ループ)の行為が、差別助長の意図の有無にかかわらず「差別意識の形成、増長、承継」の助長につながると認定。片岡副委員長のプライバシー権、名誉権、「他者から不当な差別行為を受けることなく円滑な社会生活を営む権利利益」にたいする侵害を認め、その損害賠償のための自宅マンション仮差押決定にたいするMの異議申立を退けた。
Mの自宅マンションの仮差押は、Mの不法行為への損害賠償請求権を保全するための仮の差し押さえとして片岡副委員長が横浜地裁相模原支部に申し立て、昨年4月8日に仮差押決定が出されていたもの。
今回裁判所は、身元調査や戸籍不正取得事件にふれ、「一部の人々の間には、今なお同和地区出身者に対するいわれなき差別意識が厳然として残っている」と指摘。復刻版のデータ公開は身元調査を「著しく容易にする」とし、「かかる機会の提供にともない、特定の個人について、同和地区出身者か否かの身元調査をしようとする動機付けや実際にそのような行動に出る者が増大し、そのような言動の繰り返しが、同和地区出身者や現に同地区に居住する者に対するさらなる差別意識の形成、増長、承継に」つながることは容易に想定できる、とした。差別意識の形成、増長、承継を助長し、差別撤廃に向けた国や個人、組織の「長年の努力を、大きく損なうことになりかねない」と認めた。
また、プライバシー権、名誉権の侵害を認めるとともに「「差別されない権利」という名称を付するか否かはともかく、人格権もしくは人格的利益の一つとして保障されるべきもの」として「他者から不当な差別行為を受けることなく円滑な社会生活を営む権利利益」に言及。差別的言動が長くおこなわれてきた日本社会の現実から「同和地区出身者であることを摘示されることは、それによって、現に差別的取扱いを受けていなくとも、いついかなる時に、知人のみならず見ず知らずの第三者からさえも、差別的取扱いを受けるかもしれないという懸念を増大させ、その平穏な生活を脅かすものとなるという点で、その権利利益を侵害するものといえる」という画期的な判断をおこなった。
ウェブサイト「同和地区Wiki」への「部落解放同盟関係人物一覧」掲載(すくなくとも昨年3月16日~昨年4月9日)については、Mが掲載記事を削除したりデータの掲載停止をしていた事実から、Mを管理者と判断。たとえMが人物一覧を最初に掲載したのではないとしても、管理者として、人物一覧が本人の承諾を得ずプライバシーを侵害する形で掲載されていると容易に知り得たのに、すみやかに削除や掲載停止をしなかった点で、Mみずから人物一覧を掲載したことと同様の責任を負う、とした。
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