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主張

 

今日の部落差別の実態を広く訴え、
「部落差別解消法」の具体化をかちとろう

「解放新聞」(2017.09.04-2825)

 テロ対策を口実にした「共謀罪」を強行成立させた安倍政権の支持率が低落している。森友学園や加計(かけ)学園問題をはじめ、南スーダン日報隠蔽など、さまざまな疑惑にたいして、各種の世論調査でも、「安倍首相は信頼できない」という回答が圧倒的だ。安倍政権は、こうした危機的な事態を打開するために、第3次改造内閣を発足させたが、疑惑解明に都合の悪い閣僚を交替させただけでは、疑惑隠しの姿勢は明らかで、支持率の回復もみられない。

 安倍政権は、この間の支持率を支えてきた経済回復策であるアベノミクスをさらにすすめ、成果をあげるとしているが、アベノミクスそのものがすでに破綻しているのは明らかである。株価高騰だけを指標に、景気回復がすすんだとしているが、実体経済が低迷し、非正規雇用や生活保護受給世帯の増大と、医療や年金などの社会保障費の削減で、貧困や格差の問題は深刻化している。

 しかも、安倍政権は、こうした経済政策をすすめるとする一方で、あくまでも憲法改悪をすすめようとしている。改憲発議に必要な3分の2の衆参の議席があるとしながら、憲法9条の改悪を軸に、「戦争をする国」づくりを強行しようとしているのだ。こうした安倍政権の戦争推進政策を絶対に許してはならない。人権・平和・民主主義の確立をめざす全国的な闘いのなかで、部落解放運動はその先頭で大きな役割を果たすために奮闘しよう。

 今日、こうした反人権主義、国権主義の政治がすすめられるなかで、社会にたいする不安や不満を背景に、悪質な差別事件や人権侵害が続発している。しかも、在日コリアンにたいするヘイトスピーチでも明らかなように、差別言動はエスカレートする一方である。昨年6月に「ヘイトスピーチ解消法」が公布、施行されて以降も、いまだにヘイトスピーチが続けられている。

 また、「障害者差別解消法」も、昨年4月に施行されたが、7月には相模原市の障害者施設での大量殺害事件がおきた。元施設職員の犯行とされているが、犯行の動機は「障害者には生きている価値がない」という優生思想が背景になっているとされる。さらに、本年5月頃から、三重県連事務所や中央本部、解放新聞社に、カッターナイフを封筒の開口部に貼り付けた差別封書が届けられており、中央執行委員長宅に届いた封書では、開封した委員長が負傷した。このように、最近の差別事件は、直接的に傷害を狙った、より悪質なものになっている。

 部落差別にかかわっては、この間、土地差別問い合わせ事件も全国で報告されている。いまだに被差別部落を忌避・排除する差別意識が根強く残っている。また、仏教寺院による「過去帳」開示問題でも、各仏教教団がすすめてきたとりくみの形骸化が背景にあるのではないか。差別身元調査に利用され、加担してきた「過去帳」の取り扱いについて、その背景となった差別の歴史をしっかりと学習してもらいたい。いくら歴史的な史資料として存在している「過去帳」であり、開示の結果に実害はなく、実害があるなら示すべきであるとするような総括は、これまでの「過去帳」開示問題を真摯に反省する姿勢とは反するのではないか。こうした課題は、厳密な検証が必要であることはいうまでないが、「過去帳」開示問題を風化させることは許されない。

 われわれは、「部落差別解消推進法」の具体化、活用をめざして、全国でとりくみをすすめている。「推進法」の周知徹底はもちろんのこと、相談体制の充実、教育・啓発の推進などの課題では、自治体への要請、議会質問、行政交渉の強化などを中心に、自治体の部落問題解決に向けた姿勢を明確にさせてきた。また、法務省などにたいしては、実態調査の手法、内容などについての要請を重ねてきた。

 (公財)人権教育啓発推進センターでは、法務省からの委託で「推進法」第6条の「部落差別に係る実態調査の実施」に関連して、「6条に係る調査」の内容、手法等に関する有識者会議が設置され、検討がすすめられている。部落解放同盟も、この有識者会議からのヒアリングの要請を受けて、西島書記長が、部落差別の実態を正確に把握するための手法、内容について説明をおこなった。

 ヒアリングでは、とくに最近の悪質な差別事件として、鳥取ループ・示現舎による「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」復刻版出版差別事件を取りあげ、大量差別文書配布事件などとともに、こうした確信犯的な差別事件が続発している現状を強く訴えた。さらに、部落差別事件は、インターネット上の差別情報の氾濫だけでなく、生活圏域内でおこる日常的な事象が多いことも説明し、差別事件のみならず、今日の被差別部落の生活実態、全国的な部落差別に関する意識調査を総合的に実施することでなければ、部落差別の実態は把握できないことを、過去の政府による実態調査の事例説明もふくめて提案した。

 法律が制定されただけでは部落差別は撤廃できないことはいうまでもない。「推進法」を具体化、活用することは、その第一歩だ。この第一歩を大きく、しっかりとふみ出すためにも、差別事件のとりくみや、日常活動の強化をすすめ、部落差別の実態を集約し、行政交渉のなかで、課題解決のための相談体制の充実、教育・啓発の推進に向けた具体的施策の実施を迫るとともに、実態調査の重要性を強く訴えよう。


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