「解放新聞」(2017.10.09-2830)
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狭山事件では鞄・万年筆・時計が「自白」によって発見された3大物証とされてきたが、万年筆・時計に続いて鞄の発見も警察のでっちあげであることを明らかにした新証拠が提出され、3大物証のすべてが崩れた。下山鑑定をはじめとする新証拠を武器に広範な支援運動をつくりだし、事実調べ、再審開始をかちとろう。10月31日の狭山市民集会に全国から結集しよう。
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狭山事件の第3次再審請求の第33回三者協議が、2017年7月24日にひらかれ、裁判長が証拠開示の勧告をおこなった。開示勧告が出されたのは、2015年に開示された領置票で存在が明らかになった証拠物4点で、犯行動機に関係した資料である。有罪判決では、バイクの支払いで父に借金していたので身代金を取ることを考えたことが犯行動機のひとつとされたが、そのような動機が実際にあったのかどうかにかかわる資料の開示を弁護団は求め、今回開示が勧告された。検察はいまだに開示していないが、弁護団の粘り強い活動の成果である。
しかし植村裁判長は、この間弁護団が求めてきた手帳や財布に関する捜査資料や自白直前の石川さんの健康状態に関する証拠の開示勧告はしなかった。狭山事件では、被害者はチャック付の財布と手帳をもっていたが、捜査で発見されていない。犯人が奪ったと考えられるが、石川さんの自白では「チャック付の財布は盗っていないし知らない」「身分証明書は三つ折り財布からとった」となっている。開示された取調べの録音テープでも石川さんはチャック付の財布や手帳についてはのべておらず、被害者の所持品そのものを知らなかったことが浮かびあがっている。
身分証明書は脅迫状と一緒に封筒に入っていたので犯人が奪ったことは間違いないが、自白に出てくる三つ折り財布を被害者はもっておらず、チャック付財布には入らない。石川さんの自白は明らかに不自然で犯人でないゆえの「無知の暴露」だ。
財布・手帳の自白の矛盾について寺尾判決は、石川さんが真実を語っておらず、燃やすなどして証拠を隠滅した疑いがあるとしたが、殺害を認め、万年筆や時計の処分を自白しているのに、財布と手帳の存在や処分についてしゃべらないというのはきわめて不自然だ。寺尾判決のような有罪ありきの認定は許されない。財布・手帳・身分証明書について捜査経過と自白にかかわる資料を開示し、自白が犯行体験をのべたものか誘導と想像によってつくられたものか検証するべきだ。裁判所は開示を勧告し、検察はすみやかに開示すべきだ。
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弁護団は3月2日、流王・土地家屋調査士による調査報告書等を新証拠として提出した。提出された報告書は、証拠開示された事件当時の航空写真をもとに、①鞄の発見現場と鞄を捨てたという自白の場所が食い違っていること、②鞄発見は自白にもとづいて発見された「秘密の暴露」ではないこと、を明らかにしたきわめて重要な新証拠だ。
鞄が発見された幅1・3㍍、深さ0・75㍍の溝は久保川とよばれる水路であるが、石川さんの自白では「山(雑木林)と畑の間の低いところ」となっており、形状も地形も違っている。自白図面でも久保川は「みぞ(溝)」と書かれ、それとは別にひかれた線上に「かばん(鞄)」と書かれている。鞄が発見された地点は、石川さんの自白した地点と大きく食い違っており、鞄発見は自白にもとづいて発見された「秘密の暴露」ではないのだ。
また、寺尾判決では、石川さんが殺害後、被害者の万年筆で脅迫状を訂正し、その万年筆を自宅にもち帰り、カモイに置いていたものが発見されたと認定している。ところが、昨年10月、石川さん宅から発見された万年筆を使って被害者の兄が書いた数字(数字が書かれた供述調書)が証拠開示され、弁護団はこの数字をもとに万年筆のペン先の太さ(ペンポイント)の鑑定を川窪鑑定人に依頼したところ、川窪鑑定人は、脅迫状の訂正か所(「五月2日」「さのヤ」)の万年筆は中字で、発見万年筆で書いた数字は細字で太さが違う万年筆であると鑑定した。
発見万年筆については、昨年8月のインクに関する下山鑑定によって被害者のものではないという決定的な新事実が明らかにされているが、川窪鑑定によって発見万年筆は脅迫状を訂正した万年筆ではないことが明らかになった。有罪の証拠とされた万年筆は事件とまったく関係のないものなのだ。
下山鑑定に続く川窪鑑定によって、被害者の万年筆で脅迫状を訂正し、その後もち帰ってカモイに置いていたものが自白どおり発見されたという事件の根幹となる有罪判決のストーリーが完全にくつがえった。2度の家宅捜索のあとに発見されたことや自白の不自然さと合わせて考えれば、万年筆は警察がねつ造したものといわざるを得ない。
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狭山第3次再審では、これまでに187点の証拠が開示され,開示された証拠にもとづいて弁護団は鑑定書などを作成し、つぎつぎと新証拠を提出した。その数は191点になっている。誰がみても脅迫状とははっきり筆跡の違う逮捕当日の上申書、犯行に使われた手拭いは石川さんの家のものではないこと、自白の虚偽と誘導を明らかにした取調べテープ、発見万年筆が事件と無関係であることを示す下山鑑定、川窪鑑定、そして自白と食い違う鞄発見現場。開示された取調べの録音という客観的事実にもとづいて当時の石川さんが非識字者であり脅迫状を書けなかったことを明らかにした森鑑定、魚住鑑定。これらの新証拠によって、寺尾判決は完全に崩れ、石川さんの無実が明らかとなった。
全国の支援者は下山鑑定や川窪鑑定、筆跡識字能力鑑定などの新証拠についての学習を深め、教宣にとりくもう。全国各地で、狭山パンフや取調べ再現DVDなどを活用し、事実調べ・再審開始と証拠開示を訴えよう。石川さんと弁護団が再審を請求して40年になるが、これまで一度も鑑定人尋問などの事実調べがおこなわれていないという不当性を訴えよう。
狭山事件で確定有罪判決となっている寺尾判決から43年目を迎える10月31日に、東京・日比谷野外音楽堂で狭山事件の再審を求める市民集会が実行委員会の主催で開催される。全国から東京・日比谷に結集しよう。事実調べ・再審開始と証拠開示をかちとろう。
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