「解放新聞」(2017.11.06-2833)
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第69回全国人権・同和教育研究大会が、12月2、3日に島根県で初めて開催される。
島根県の被差別部落は、いわゆる「少数点在型」であり、「同和対策事業特別措置法」下での「未指定」、「未実施」という実態も重なり、現実には厳しい部落差別が存在しながらも、差別の現実は無視、軽視され、「差別はない」とされる厳しい状況に置かれてきた。
こうした部落解放運動や解放教育運動にとりくむうえで、きわめて不利な条件、さまざまな困難を克服しながら、2003年の県人権教育研究協議会結成から、わずか14年での全人教大会の開催にまでこぎつけた関係者の情熱と尽力に心から敬意を表するものである。
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昨年12月16日、「部落差別の解消の推進に関する法律」が公布、施行された。現存する部落差別が許されないものとし、その解消を明確に求めた法律である。「部落差別解消推進法」は、部落差別の解消に向けて国や地方自治体が施策を講じる責務を明らかにし、相談体制の充実や教育・啓発の実施推進、部落差別の実態に係る調査の実施などを規定している。
この「部落差別は許されないものである」と高らかにうたう法律を大きな力として、学校教育や社会教育、啓発の課題として部落差別の解消に向けてのとりくみを今後一層具体化していくことが求められている。
部落差別は、「地対財特法」終了以降、「人権教育・啓発推進法」の施行、「基本計画」の策定をふまえて、「同和問題」として個別人権課題の一つに位置づけられ、とりくみがすすめられてきた。
文部科学省も、「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」を設置し、これまで3次にわたり「人権教育の指導方法等の在り方について(とりまとめ)」(第1次2004年、第2次2006年、第3次2008年)を示し、人権教育の全国的な普及をはかってきているが、これまでの取組状況調査の結果では、地域格差や校種間格差、学習内容や学習分野に偏りがあることなど課題が明らかになっている。また、学校現場では、教員の大量退職がピークを迎えていることや、教職員養成課程での部落問題の履修率が低下、これまでの同和教育の実践の継承が大きな課題となっており、部落差別の現実にたいする軽視や認識不足が広がっている現状がある。教職員をはじめ学校教育関係者にたいして、これまでの政策の経緯と関連させながら、「推進法」の周知徹底にとりくむことが重要である。
また、「推進法」の立法事実として、「情報化の進展」にともなう部落差別に関する「状況の変化」が指摘されている。
インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上では、史実や現実を無視した虚偽情報や差別や偏見を煽る情報が大量に発信されており、部落差別が拡散・助長されている。なかでも、鳥取ループ・示現舎がインターネット上に拡散させた「全国部落調査」復刻版は、歴史的な被差別部落の呼称と現在の地名があわせて掲載されている。部落問題学習の入り口に立ったばかりの子どもたちが、興味本位に、何気なく検索するだけで、自分の居住地や学校区内の部落の所在を突き止められる悪質極まりないものである。学校教育では、こうした今日的な差別の現実をふまえた部落問題学習の創造と実践が求められている。
子どもたちが部落問題を正しく知り、「部落差別は社会悪で許されないものである」と認識し、部落差別をなくすために行動できる、インターネットなどの情報を鵜呑みにせず主体的・批判的に情報を読み解き、差別煽動に対抗する実践力を身につけることができる、そうした部落問題学習の再構築が喫緊の課題である。
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「推進法」の施行を受けて、各地の教育委員会では、人権教育に関する推進指針や推進計画の見直し、法律と制定の趣旨について教職員の理解を促す学習資料の作成、部落問題学習や人権教育の指導に関する手引書など学習資料や教材の改訂などがすすめられている。
行政機関として指針や計画の見直しを前提にして、問われるのは、日日、子どもたちと向き合う教職員一人ひとりの部落差別への認識と理解である。なぜ、部落問題学習にとりくむのか。統一応募用紙や公正採用選考に関する学習が、なぜはじまり、いまも続けられているのか。部落問題学習に関連したとりくみの経過や意義が、教職員の間で十分に共有されているだろうか。ともすれば、従来からの延長線上のとりくみの一環として、漫然とくり返すばかりで、形骸化してはいないだろうか。
「推進法」の制定を機に、部落問題学習の意義と役割について、認識を新たにし、今日の差別実態をふまえ、「差別の現実に深く学ぶ」という原点に立ち返ったとりくみをすすめていこう。
「推進法」の周知徹底にとりくみ、部落差別撤廃の気運を高め、各地域や学校で、草の根からの差別と闘う人権文化の輪を広めていこう。
全国各地で積みあげられた豊かな実践を、島根全人教大会に持ち寄り、成果と課題について活発な議論と交流を深め、人権・同和教育の輪を全国に大きく広げていこう。
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