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第24回中央福祉学校に参加し
「人権と福祉のまちづくり」運動を前進させよう

「解放新聞」(2017.11.13-2834)

 10月の衆議院選挙で有権者のもっとも関心の高いテーマは社会保障政策だった。各党の公約にも、子育て支援の充実策が目立った。安倍政権は2019年10月の消費増税の財源の一部を全世代型社会保障への転換に活用するとし、高齢世代に偏っていた消費税の使い道を子育て世代などにも広げるとした。今後30〜40年ほど続くであろう少子高齢化時代のなか、子育て支援と医療や介護などの社会保障の充実はともに重要だ。

 しかし、安倍政権は、厳しい財政のもと制度の持続性を確保することを目的に、給付抑制・負担増による社会保障の削減をすすめている。これまで、医療や介護の負担増やサービスの切り下げ、介護の軽度者への負担増、生活保護費の大幅な削減をはじめ年金などの社会保障制度の改悪をおこなってきた。

 8月1日からは、一定所得のある高齢者の医療・介護サービスの自己負担額が引き上げられ、40〜64歳が支払う介護保険料も大手企業労働者や公務員を中心に年収に応じて負担が引き上げられた。これら一連の動きによって日本社会は、介護保険料の支払い開始年齢の引き下げに関しては、厚労省の社会保障審議会介護保険部会で反対意見が多く、今回は見送りとなったが、負担対象を収入のある人すべてに拡大する動きもある。給付抑制がすすむなか、財源を取りやすいところから取りはじめ、いっそうの負担増の対象者拡大へとつながり、必要な医療や介護サービスを受けられず、高齢になっても働き続けなければ生活できない、長生きを喜べない社会になってしまう。

 2018年4月から同時改定される診療報酬と介護報酬の議論がはじまり、社会保障費を抑えたい財務省は引き下げを求めている。社会保障費を引き下げられると介護の質の低下や事業者の撤退によって自宅で暮らせない高齢者の増加なども懸念される。同じく来年4月からは、国民健康保険(国民の3割(自営業者など)が加入する)の財政運営が市町村から都道府県に移る制度変更にともない、市区町村の35%は、加入者の支払う保険料が上がると予想している。高齢者や低所得者が多い国民健康保険加入者の負担は増加し、必要な医療が受けられないなどの深刻な状況につながる危険がある。また、生活保護制度の医療扶助について、一定の自己負担を課すことも検討されている。

 こうした生活・福祉にかかわる施策をめぐる厳しい状況をふまえ、「自助」「共助」「公助」の理念を最大限に生かしたとりくみをすすめていかなければならない。

  貧困と格差が深刻化するなか、私たちのすすめる、高齢者や障害者、ひとり親家庭、子どもたちが地域のなかで安心して暮らしていける「人権と福祉のまちづくり」運動がこれまで以上に重要だ。昨年から国は、福祉のあり方を見直す福祉改革の理念として「地域共生社会」の実現をかかげている。来年に予定する「生活困窮者自立支援制度」の見直しに向けた検討会でも、制度の見直しを通じて「地域共生社会」の構築をすすめるとしている。

 地域共生社会は、「人と人。人と資源が丸ごとつながり、高齢者・障害者・子どもなどすべての人々が、1人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」とされている。真の地域共生社会の実現には、部落差別をはじめとするあらゆる差別の撤廃が不可欠だ。「地域共生社会」の実現と「人権と福祉のまちづくり」は相反するものではない。

 見え隠れする公的責任のいっそうの後退を阻止するとともに、「人権と福祉」の拠点施設としての隣保館活動(事業)の強化、さまざまな施策での隣保館の役割・位置づけを明確にしていくことが求められる。とくに、「地域福祉計画」のなかに隣保館の役割など部落問題の解決の視点を位置づけ、福祉や医療・介護制度を充実させていくとりくみをすすめていこう。

 この間、「人権と福祉のまちづくり」運動を各地から創り出していくとりくみがされ、国や自治体の福祉政策などにかかわる一般施策を活用しているところや、ほかのNPOと連携した協働のとりくみをしているところ、自分たちで社会福祉法人などを立ちあげて事業を展開しているところなど、各都府県でそれぞれ特色をもった「人権と福祉のまちづくり」運動がすすめられている。また、「人権課題の解決に資する」ことを設置運営目的とした隣保館の果たす役割を明確にしながら、隣保館を中心とし、部落を「核」とした人と地域の活性化にとりくんでいるところなどさまざまだ。とりわけ、「部落差別解消推進法」の第4条にもあるように、相談事業の充実で隣保館の果たす役割はますます重要になっている。

 12月2、3日に第24回中央福祉学校を高知市内でおこなう。1日目は、厚生労働省社会・援護局地域福祉課より「地域共生社会の実現と「「部落差別解消推進法」」をふまえた隣保館の役割」、高知市健康福祉部福祉事務所福祉管理課の坂田弘之・課長より「高知市における生活困窮者の実態と課題解決にむけた取り組み」についての報告を受け学習を深めたあと、グループにわかれて討議する。

 2日目は、前日のグループ討議の報告をおこない、企業組合伊丹市雇用福祉事業団の髙木哲次・代表理事より「地域資源を活かした、フラットな関係づくり」をテーマに就労支援の実践報告を受ける。学習や実践報告、討議をとおして、各都府県連の課題や問題点の共有化と課題解決に向けた具体的なとりくみにつなげていきたい。

 「部落差別解消推進法」や「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」をふまえ、今後も各都府県連のさまざまなとりくみをよりいっそうすすめ、「人権と福祉のまちづくり」運動を大きく前進させよう。



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