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主張

 

とりくみの成果と課題を明らかにし、
新しい年の部落解放運動の闘いを準備しよう

「解放新聞」(2017.12.25 -2840)

 昨年12月に公布、施行された「部落差別解消推進法」の活用、具体化をめぐって全国的なとりくみをすすめてきた。今年3月に開催された第74回全国大会での論議や、ひき続き実施した全国ブロック別支部長研修会での討論をふまえ、「推進法」の周知徹底の課題を中心に、全国の実践を交流、とりくみの前進をかちとってきた。

 多くの都府県や市区町村の広報紙には、「推進法」の公布、施行が掲載され、一定の周知に効果があったものの、まだまだ十分とはいえない。鳥取県のテレビ放映や兵庫県でのリーフレット作成など、自治体によるより積極的な広報活動などを参考に、全国の自治体にとりくみを求めていくことが重要だ。

 「推進法」は、部落差別が今日も厳しく存在しており、部落差別のない社会をめざして、国や自治体が必要な施策にとりくむことを明記している。その目的と基本理念は「部落差別は許されないという認識の下」に「部落差別のない社会を実現すること」にある。まさに、部落差別撤廃に向けた国の責任、自治体の責務を明確にしたものであり、この「推進法」にある基本理念をふまえて、部落問題解決に向けた行政責任、姿勢を明確にさせていくことが求められている。

 国会審議では、1月23日の衆議院本会議で、自民党の二階俊博・幹事長の代表質問にたいして、安倍晋三・首相は「部落差別のない社会を実現することは重要な課題であります」「法律の趣旨をふまえて、今後とも差別の解消に向けてしっかりと対応していきたい」と答弁した。こうした国会審議を受けて、広島や鳥取、兵庫、和歌山など、都府県、市区町での議会質問を通じて、部落解放行政の推進にたいする自治体の姿勢を明確にさせてきた。また、法務省や文部科学省をはじめ、各省にたいする交渉でも、それぞれの共通課題、個別課題を取りあげ、施策の推進に向けたとりくみを強く要請してきた。

 このほかにも、「推進法」にかかわっては、部落差別の実態に係る調査など、まだまだ多くの課題がある。「推進法」を活用、具体化するために、行政交渉や要請行動などで、国や自治体への働きかけをさらに強めていかなければならない。

 「やり方を考えないといけない。本数でなく中身を絞って、どこかの党と取引しないと。国会はそういうところなんですね。特殊部落ですから」

 これは、12月8日の、日本維新の会共同代表である片山虎之助・参議院議員の党の会合での発言である。維新独自で提出した議員立法が、いずれも審議入りしない状況をめぐる発言である。中央本部は、部落差別発言であるとして、差別発言の撤回と謝罪を求めた抗議文を片山議員と党に提出している。

 「推進法」制定に向けた国会審議では、日本共産党や全国地域人権連などは、もはや部落差別は基本的に解決した問題であり、「推進法」は部落差別を固定化するものとして反対してきた。しかし、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争でも明らかにしてきたように、インターネット上の差別情報の氾濫はもちろんのこと、差別と暴力を公然と煽動するヘイトスピーチ、部落の所在を問い合わせる土地差別調査、問い合わせ事件、そして結婚差別など、依然として、厳しい部落差別の実態があり、そのことが「推進法」の立法事実として取りあげられてきた。

 とくに戸籍不正取得事件のとりくみでは、結婚相手の身元調査がいまだにおこなわれていることが、裁判のなかでも明らかになった。「推進法」が施行されたからといって、即時に部落問題が解決することにならないのは自明のことである。しかし、この「推進法」を活用し、具体化することで、部落解放行政を推進させることによって、部落差別撤廃のための行政的な条件整備がすすむことはまちがいない。われわれがそのために努力し、とりくみをすすめることは当然である。

 部落差別の実態、それ自身は差別事件の集約だけでなく、日常的な生活圏域でおきる部落差別そのものを正確に把握し、分析することによって、今日的な部落差別の実態が明らかになる。大阪府連のアンケート調査のとりくみのように、地域の実態把握をすすめることが重要である。意識調査、生活実態調査についても、しっかりとしたとりくみがすすむように、あらためて国や自治体に強く要求していかなければならない。

 10月に実施された衆議院総選挙は、安倍政権による森友学園、加計学園問題の疑惑隠しによる自己都合解散によるものであったが、民進党の希望の党への合流と、そのあとの立憲民主党の結党など、野党側の混乱もあり、改憲勢力が3分の2以上の議席という、厳しい結果となった。自民党は、11月16日に「憲法改正推進本部」全体会合で、「自衛隊の明記」「教育の無償化」「緊急事態対応」「参議院の合区解消」の4項目を中心に党内の意見集約の議論を再開するなど、憲法改悪に向けた策動を強めている。

 この間、安倍政権は、緊張が激化する朝鮮半島情勢への対応や、エルサレムをイスラエルの首都と認定するなどの暴挙に、国際的な非難が集中しているにもかかわらず、米国のトランプ政権への一方的な追従の姿勢をいっそう強めている。すでに「特定秘密保護法」や戦争法、「共謀罪」などを強行し、沖縄の辺野古新基地建設を強権的にすすめ、「戦争をする国」づくりのために、憲法9条改悪を狙う安倍政権の策動を許してはならない。

 沖縄県宜野湾市では、米軍ヘリの部品や金属製窓枠が保育園や小学校の校庭にあいついで落下するなど、大惨事につながりかねない事故がおきている。しかも、米軍が、保育園への落下事故を否定したことが報道されると、保育園などに「自作自演」などの誹謗中傷の電話やメールが続いているという。まさに、大阪府警機動隊員の「土人」発言にも共通する、沖縄にたいする構造的な差別意識によるものである。

 われわれは、差別排外主義が生み出す人権と平和の根底的な危機に抗して、差別と戦争に反対する連帯・協働の闘いを大きく前進させるために奮闘してきた。安倍政権による生活保護費や医療費などの社会保障制度や労働法制の改悪がすすめられ、社会的不安や不満を背景にした差別事件、人権侵害が多発している。「推進法」の活用・具体化と、部落解放行政推進や狭山再審闘争、差別糾弾闘争、「人権のまちづくり」運動などの具体的なとりくみとともに、反戦・反差別の共同闘争の闘いの成果と課題をしっかりと総括し、新たな年の部落解放運動の闘いを準備しよう。


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