「解放新聞」(2018.02.19-2847)
「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的とした旧優生保護法(1996年に母体保護法に改正)により、知的障害を理由に同意なく15歳で強制不妊手術(優生手術)を受けさせられた宮城県の60代女性が1月30日、子どもが産めなくなったことによる精神的苦痛を受けたとして、国に1100万円の損害賠償を求めて仙台地裁に提訴した。旧優生保護法のもと1948年から96年までに同意なしの手術を強制されたのは全国で1万6500人にものぼるが、子どもを産むか産まないかの選択の自由(憲法13条)と平等の原則(憲法14条1項)を侵害されたと国を訴えるのは全国初。原告女性は、1歳で受けた手術による麻酔の影響で知的発達が遅れたと考えられるのに、「遺伝性精神薄弱」との医師の診断を受ける。宮城県優生保護審査会の審査・決定だけで「優生手術」を強制された。その後、日常的な腹痛に悩み、右卵巣摘出手術も受けている。不妊となったことで縁談が破談になる経験もした。
母体保護法への改正以後も2004年、当時の坂口力・厚労相が旧優生保護法による強制不妊手術の事実を認め、どうしていくか考えていきたい旨の答弁をしながら実態調査も救済措置もなされないままだと弁護団は指摘、国の責任を厳しく問うている。3月下旬に第1回口頭弁論がおこなわれる見込み。
2月2日には「旧優生保護法被害に関する電話相談」が仙台ほか、札幌、東京、大阪、福岡でもおこなわれ、10件の相談が寄せられた。新たな国家賠償訴訟も検討するという。
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