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鳥取ループ・示現舎の復刻版差し止め裁判に結集しよう

「解放新聞」(2018.03.05 -2849)

 「全国部落調査」復刻版差し止め裁判の第8回口頭弁論が3月12日に東京地裁でひらかれる。部落差別を拡散・助長する被告(鳥取ループ・示現舎)を徹底的に糾弾し、法的社会的制裁を加えるために全国から東京地裁に参加しよう。

 「全国部落調査」復刻版の出版差し止めとインターネットからの掲載削除、および損害賠償を求める裁判は、2016年4月に提訴してからすでに7回の口頭弁論がひらかれ、2年目に入った。裁判は双方の主張がほぼ出揃い、このあと証人尋問の段階へと移る。

 証人尋問に向けて現在248人の原告全員が意見陳述書を作成しているが、この裁判では、鳥取ループ・示現舎による「全国部落調査」復刻版の出版やインターネットへの掲載が、いかに部落差別を拡散・助長するものかを裁判官に理解してもらうことがもっとも重要な鍵となる。裁判官が部落差別の深刻な実態を理解し、鳥取ループらの行為がどんなに罪深い行為であるかを理解しないかぎり、勝利をかちとることができない。そのために原告の意見陳述書は重要である。

 弁護団は第1次分としてすでに9人の意見陳述書を提出しているが、いずれの陳述書にも原告一人ひとりの受けてきた被差別の体験がリアルに描かれている。差別は、人の一生に大きなダメージを与え、またその人の心に大きな傷を残す。ある原告は、結婚差別によって身近な人が死を選んだ事実を陳述書に掲載した。また、別の原告は職場でおきた差別投書事件にたいする糾弾闘争の狭間で、みずから命を絶った夫婦がいたことを淡淡と報告した。今回の裁判で、それまで封印してきた辛い体験を初めて語ったという人もいる。裁判官は、これら原告の被差別体験に謙虚に耳を傾けてほしい。

 ところで、全国各地で「全国部落調査」のネット掲載によって新たな被害(差別事例)がつぎつぎと報告されている。

 東京都では、昨年夏に「エタヒニンヨツの情報保持者様」などと書かれた差別手紙やハガキが東京都連や支部にたいして郵送されるという事件が続いたが、手紙には「鳥取ループのサイトは不正確な箇所がある」と書き込まれており、投稿者が鳥取ループのネット版「全国部落調査」を見て、正確な部落の所在地情報を送れと主張していることが報告されている。福岡県では、部落解放同盟筑後地区協議会の事務所に差別ハガキが送られているが、その文面に「インターネット版部落地名総鑑を閲覧しておりましたら、久留米市〇町〇〇の地名が掲載されていませんでした。これは不当な差別だと存じます」とのべたうえで、その地区名を追加するよう求めている。一方、滋賀県からは、「全国部落調査」からコピーして県内の部落の所在地一覧表のチラシを作成し、シルバー人材センターの喫茶ルームに置いて自由に持ち帰れるようにした、という事件が報告されている。作成したのは人材センターに出入りする人物だが、喫茶室にやってくる高齢者に話題を提供するために作成したと説明している。

 また、鳥取県のある町からは、ネットで所在地一覧を見た人物から同和地区かどうかの問い合わせ電話がかかってきたことが報告されている。電話の主は、自分の娘の結婚相手がその町の出身で、「ネットで調べたら同和地区一覧に出ている地名なので、本当にこの地区は同和地区かどうか、教えてほしい」と問い合わせてきたというのだ。

 このように、いまネット版「全国部落調査」で部落の所在地を確認する事例が拡大している。

 部落差別が現存するなかで、「全国部落調査」復刻版を出版し、ネットに所在地一覧を掲載する行為は、差別の助長・煽動そのものである。鳥取ループらは掲載しても実害はないと主張しているが、すでにみたように被害が広がっている。2012年のプライム事件では、探偵社が職務上請求書を偽造印刷して身元調査をしていた実態が浮き彫りになったが、主謀者のひとりは「お客さんの依頼の大半は、同和地区かどうか結婚相手の身元調査だった」と説明した。このような現状を考えれば、部落所在地一覧表をネットに掲載する行為は、文字どおり身元調査とそれにもとづく結婚差別や就職差別を煽動する許しがたい差別行為にほかならない。

 また、鳥取ループらの行為は、部落問題を解決するための行政や企業、宗教団体、労働組合などによる戦後のさまざまなとりくみの成果を台無しにする許しがたい行為だ。戦後70年間、部落差別をなくすためにさまざまなとりくみがおこなわれてきた。たとえば、就職差別撤廃のために統一応募用紙がつくられ、公正採用選考人権啓発推進員制度などができ、企業もまた自主的な研修をすすめてきた。最近では、身元調査を防止するために、住民票の写しや戸籍謄本などを代理人や第三者に交付した場合、その本人に通知する本人通知制度を採用する地方自治体が増え、差別調査をなくすために宅建業界はガイドラインを作成してきたが、鳥取ループらの所在地暴露はこうしたとりくみを根底から破壊する行為にほかならない。

 この差し止め裁判は、裁判を通じて鳥取ループのMらの差別行為、犯罪行為を徹底的に断罪し、社会的な制裁を加える闘いである。

 権利侵害はないというMの主張にたいして横浜地裁相模原支部の裁判官は昨年7月、「全国部落調査の内容を、不特定多数の者に広く知らしめようとする行為は、債務者に差別助長の意図があるか否かにかかわらず、実際には差別意識の形成、増長、承継を助長する結果となるであろうことは明らかであるし、そうなれば、差別意識や差別的言動を撲滅しようとしてきた国家やこれに添う活動をしてきた個人や組織の長年の努力を、大きく損なうこととなりかねない」と指摘し、鳥取ループ・示現舎にたいする損害賠償請求権を認めた。

 東京地裁における本訴はいよいよ核心に迫る段階に入る。現在、原告の意見陳述書を作成する作業が続いているが、弁護団はこのなかから複数の原告の証人申請をおこない、証人台に立って発言する機会ができるよう裁判所に申請する。証人尋問では、鳥取ループ・示現舎の行為がいかに極悪非道の所業であるか、いかに部落差別を拡散・助長するものかを裁判官に訴える。

 「全国部落調査」復刻版差し止め裁判は、全国の部落出身者を差別から守る闘いであり、全国の部落差別をなくそうと努力してきた部落解放同盟はもちろん、国や地方自治体、企業や宗教団体、労働組合などの長年の成果を守る闘いだ。3月12日午後2時(午後1時15分、東京地裁前集合)からの第8回口頭弁論に全国から結集しよう。


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