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第75回全国大会の成功をふまえ、統一と団結のもと
部落解放運動の大道を切り拓こう

「解放新聞」(2018.04.02 -2853)

 憲法改悪を阻止し、差別と戦争に反対する闘いや「部落差別解消推進法」の具体化、狭山第3次再審闘争と鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争の勝利、組織と運動の活性化に向けた人材育成の課題など、今後の部落解放運動の基本方向の意思統一をめざして、第75回全国大会を3月3日から2日間、東京都内で開催した。全国大会では、こうした当面の重要な課題にかかわって、全国各地の具体的な実践報告をはじめ、多くの代議員から、さまざまな意見や提案を受けて、運動方針を採択するとともに、新執行部を選出した。

 この間、われわれは、国権主義、反人権主義の政治をすすめる安倍政権のもとでの困難な情況のなかで、とりくみをすすめてきた。2016年12月に公布、施行された「部落差別解消推進法」は、こうした情勢のなかでのねばり強い中央-都府県実行委員会のとりくみの成果である。

 「部落差別解消推進法」は、あらためて部落差別を社会悪として、それを許さない社会づくりに向けた基本方針を明示したものである。「部落差別解消推進法」施行後の課題として、昨年来、全国的な法の周知徹底のとりくみをすすめてきた。全国大会でも、都府県や市区町村の広報紙での紹介、独自のリーフレットやポスターの作成、テレビ放映、グッズ配布などが報告された。法の周知徹底は、部落差別の実態を広く訴え、部落差別撤廃に向けたとりくみをよびかけるものであり、今後とも、積極的に継続していかなければならない。さらに、「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」の制定、施行をもふまえ、それぞれの法制定の成果と課題を共有し、差別禁止をふくむ包括的な人権侵害救済制度の確立に向けて、当事者団体などとの協働したとりくみも求められている。

 全国大会では、「部落差別解消推進法」の具体化に向けたとりくみについても多くの報告、意見が出された。相談体制の充実にかかわっては、隣保館や教育集会所を軸にした活動の重要性をはじめ、拠点施設のない地域においても、行政機構の体制充実の要求や支部での相談活動のとりくみなど、全国での実践報告があった。隣保館でのとりくみは、厚生労働省や全国隣保館連絡協議会との連携も深めながら、「部落差別解消推進法」具体化に向けた実践を積みあげていきたい。

 また、教育・啓発の推進では、この間後退してきた部落問題学習について、教育現場での課題が多く出された。部落問題学習をきちんとすすめられる教職員の育成が重要であり、社会教育についても同様のとりくみが必要である。こうした人材育成の課題は、インターネット上の差別情報の氾濫という実態をみれば、急務である。文部科学省や厚生労働省など、教育現場や企業研修などに関する積極的な施策を求めていかなければならない。

 今後、全国でのとりくみを集約し、「モデル地区」「モデル事業」としての情報発信をすすめていきたい。そのためにも、自治体が国の指示を待つだけの消極的な姿勢ではなく、行政交渉を強化するなかで、財源問題もふくめて国への働きかけを強めるようなとりくみを求めていくことも重要である。

 部落差別の実態に関する調査については、「有識者会議」のとりまとめがすすんでいる。実態調査は国の事業となっているが、自治体の協力なしには実施できないことは明らかである。この調査が部落差別の実態を正確に把握できるように、自治体の積極的な動きをつくり出す必要がある。今後とも国や自治体にたいして交渉や要請行動を強めていこう。

 狭山第3次再審闘争では、弁護団による精力的な活動で、191点の証拠が開示され、197点の新証拠を提出してきた。とくに、石川一雄さんの「自白」によって発見された万年筆が被害者のものではないと明らかにした下山鑑定や、今年1月には、コンピュータを使用して、犯人が残した唯一の物的証拠である脅迫状の筆跡が、石川さんの筆跡とは、99・9%同一人物のものではないことを結論づけた福江報告書などを提出してきた。いずれも科学的な方法によって、石川さんの無実を証明している。新証拠によって、東京高裁の寺尾判決の誤りが明らかになっているのである。東京高裁は、鑑定人尋問をおこない、再審を早期に開始しなければならないのは当然である。

 われわれは、こうした新証拠の学習、宣伝にとりくみ、石川さんの無実を広く訴え、全証拠の開示と事実調べを求めていかなければならない。狭山事件は事件発生から55年を迎える。石川さん、早智子さんは、全国各地の集会での訴えや東京高裁前でのアピール行動などにとりくんでいる。石川さんの無実の叫びに応え、狭山事件55年をアピールする意見広告や、映画「獄友」上映運動をはじめ、23デー情宣や現調活動などをすすめ、狭山再審を求める世論をいっそう大きくし、再審の実現をかちとるために全力をあげていこう。

 鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争は、原告団の意見陳述書が提出され、被告Mらの言動が、きわめて悪質で確信犯的な差別行為であることを明らかにしていく闘いになる。この間、被告Mらは、部落解放同盟があるから部落差別がおきるなどと、日本共産党と同様の主張や、被差別部落の所在地などをインターネット上に掲載することは学問・研究の自由などと強弁している。

 われわれは、鳥取ループ・示現舎のこうした差別言動を徹底的に糾弾するとともに、裁判闘争に勝利するだけでなく、広く社会にこの差別事件の真相を訴えるとりくみをすすめていかなければならない。

 全国大会では、安倍政権による憲法改悪阻止の闘いの強化、天皇生前退位をめぐる天皇制強化に反対する闘いなどについても提起があった。

 自民党は、憲法改悪の発議に向けて、「自衛隊明記」「緊急事態条項」「合区解消」「教育充実」の4項目を中心に「自民党改憲案」としてとりまとめをすすめてきた。自民党大会での具体的な条文案の提示はなかったものの、憲法第9条については、新設する9条の2で「自衛隊」を明記する内容などが明らかになっている。集団的自衛権もふくめて、無制限の武力行使につながるものであり、こうした憲法改悪の策動を絶対に許してはならない。

 森友学園に関する公文書改ざん問題で、安倍政権の支持率が急落している。この間、「働き方改革」をめぐるデータ問題や、「教育基本法」が禁止している「不当な支配」にあたる、名古屋市教育委員会への問い合わせなど、安倍政権の強権政治への反発が拡がっている。憲法改悪阻止の闘いとともに、疑惑徹底追及と戦前回帰の政治をすすめる安倍政権の退陣に向けて全力でとりくもう。

 生前退位をめぐる天皇制強化に反対する闘いも重要である。来年5月の新天皇即位や元号変更の祝賀キャンペーンのなかで、天皇制の強化と政治利用がすすめられることを許してはならない。天皇制賛美と対決する広範な共同のとりくみの先頭で闘いをすすめよう。

 さらに、来年は統一自治体選挙と参議院選挙が実施される。昨年10月の衆議院総選挙での民進党と希望の党の合流をめぐる混乱の結果、与党と対決する結集軸が、いまだに不確定である。しかし、人権と平和の確立に向けた政治勢力を大きく結集する必要があることはいうまでもない。自治体選挙での組織内候補の必勝と部落解放運動の前進に向けた政治勢力の結集に向けたとりくみをすすめよう。

 全国大会では、組織と運動の強化に向けた人材育成の課題や男女平等社会実現基本方針のとりくみ、宗教教団での差別問題なども論議された。こうした当面の闘いの課題については、大会での書記長集約を基本にしながら、新たに選出された執行部のもと、統一と団結の力で全力でとりくみを前進させよう。


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