「解放新聞」(2018.05.28 -2860)
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厚生労働省が今年1月に発表した2017年平均の有効求人倍率は1・50倍で、統計史上、1973年の1・76倍につぐ2番目の高水準となった。
また、今年3月の有効求人倍率も、1・59倍と、1990年のバブル経済期をこえた高水準を維持している。一方で、採用選考時の「就職差別につながる恐れがある事象」は増加傾向であり、2016年には「職業安定法5条の4」に違反となる面接時の不適正な質問や不適切な項目をふくむ社用紙等の提出を求める事象が1134件報告されている。さらに、連合がおこなったアンケート調査では、いまだに身元調査をおこなっている事業所があることが明らかになっている。この間、「部落地名総鑑」差別事件発覚から42年をへて、「全国部落調査」復刻版を発行販売しようとする動きをはじめ、インターネット上での被差別部落の所在地一覧や、差別を煽動する情報が掲載され続けている実態がある。この状況のなかで、「部落差別解消推進法」の意義を広め、就職差別撤廃のとりくみもいっそう強化することが求められている。
「部落地名総鑑」事件を契機に、労働省(当時)によってつくられた「企業内同和問題研修推進員」制度は、「公正採用選考人権啓発推進員」制度にひき継がれ、一定の役割を果たしてきた。2016年の従業員100人以上の事業所での「公正採用選考人権啓発推進員」設置率は97・2%と高い設置率となっている。しかしそのなかで、過去3年間の推進員研修の受講率は47・3%と半分にも満たない。就職差別撤廃へのとりくみをもう一歩すすめるためには、ハローワークによるチェックのシステムをつくり、改善していく必要がある。そして推進員の位置づけを法的に明記し、その実効性を高めていく必要がある。
「統一応募用紙」のとりくみも「職業安定法5条の4」が1999年の法改正で追加され、大臣指針も施行され、法的裏付けができた。また、今年1月の職業安定法の改正では、求人サイト・求人情報誌などによる求人・求職の情報を提供する事業をおこなう場合のルールも定められた。そのなかで、求職者の適切な職業選択のための相談窓口の明確化など、苦情を迅速かつ的確に処理するための体制の整備や個人情報の収集や、適正な管理を求めている。しかし、違反企業にたいする指導が徹底されていない現状も明らかになっている。労働局には、法令違反を見逃さないという厳しい姿勢と、ていねいな指導が求められる。
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就職差別をなくすために労働組合の役割も大きい。企業や事業所の内部からチェックするとりくみも大切だ。また、労働者の権利を守り、差別や人権侵害のない職場をつくるためにも、採用という雇用関係の入り口で、差別を許さないことが重要だ。
部落解放中央共闘と全国共闘は、毎年6月を就職差別撤廃月間と位置づけ、リーフレットを作成し啓発活動にとりくみ、職場での点検活動をよびかけている。また、各府県共闘会議では、労働局や府県行政・教育委員会などにとりくみ強化の申し入れをおこなっている。
そして連合は2016年に、2008年以降2回目となる連合構成組織を通じての「採用選考に関する実態把握のためのアンケート調査」(2806〜2809号掲載)にとりくみ、その報告書で「「統一応募用紙」使用状況が8年前と比べて改善していないことが明らかになった」とし、「問題の解消には労働組合の積極的な取り組みが功を奏することも明らかになった」として、各職場での点検活動をよびかけている。
このとりくみを新たな契機として、各地で共闘会議や連合との連携を深め、就職差別撤廃のとりくみを強化していこう。
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就職差別撤廃とともに、安定した雇用を促進していくとりくみも重要だ。地域での生活相談とあわせて職業相談活動を充実させる必要がある。
「生活困窮者自立支援法」にもとづく「自立相談支援事業」を活用し、就職困難者の自立を支援していくことや、「ハローワークの求人情報のオンライン提供」を活用し、隣保館などでの職業相談活動を充実させていくことも大切だ。また、「部落差別解消推進法」の具体化として、隣保館がない地域でもハローワークや自治体などと連携を密にし、隣保館活動の実施と充実を求めていくとりくみが重要だ。
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不安定雇用の増加による格差の拡大と貧困化がすすみ、雇用をめぐる状況は悪化している。安倍政権が強行した労働者派遣法の改悪は不安定雇用をさらに悪化させている。そして、今国会では「働き方改革関連法案」から切り離されたものの「裁量労働制」も長時間労働の常態化と、残業代ゼロを容認する可能性をふくんでいる。非正規雇用が雇用労働者の4割となり、不安定かつ低賃金の労働者が増え続ける現状も方向転換させなければならない。その意味で、庶民の生活を圧迫し、平和を脅かす安倍政権を退陣させることも大きな課題だ。
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