「解放新聞」(2018.07.23-2868)
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大阪北部を震源とする震度6弱の地震が6月18日発生し、大阪を中心に近畿地方に大きな被害をもたらした。また、7月の西日本豪雨でも多くの被害者が出た。被災された方がたには心からお見舞い申しあげる。
今夏の第50回全高・第62回全青は、8月18、19日、兵庫県神戸市で開催する。その神戸でも、いまから23年前、1995年1月17日早朝、阪神・淡路大震災が発生し、市内を中心に甚大な被害をもたらし、被差別部落も大きな打撃を受けた。いまでは、復興に向けたとりくみと経年により、都市の外観を一見しただけでは、とりわけ他所からの来訪者には、平時を取り戻した都市にしか映らないだろう。しかし、その復興の内実を直視し、教訓化していかなければならない。
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この間、阪神・淡路大震災以降、中越地震、東日本大震災と原発事故、熊本地震など大きな災害を経験してきているが、平時でもその存在や抱えている課題が可視化されにくい障害者、子ども、女性、高齢者、外国籍住民など社会的・経済的弱者が、その存在を忘れ去られたり被災地の避難所から排除されたり、過度な自助努力が求められる復興の過程で取り残される事態を少なからずくり返しているのではないだろうか。
すべての個人が尊重され、人間としての尊厳が守られる、という当たり前のことが、被災地・被災者だから、緊急事態だからということを理由に、軽視され、我慢を強いられるような風潮とは、いいかげんに決別しようではないか。こうした風潮は、平時でも、生活保護受給者にたいするバッシングや、社会的弱者の実態や差別や人権侵害の被害を隠蔽するものであり、「この道しかない」とくり返すペテン師に惑わされ、「お国のために」という「いつか来た道」に容易に導かれてしまいかねない。
本当の教訓とは何なのか、社会的弱者に視点を据えた、一人も取り残さないとりくみが重要だ。部落解放運動にとりくむなかで、一人ひとりが仲間とのつながりや社会とのつながりを捉えなおし、たった一人にあらわれた困難をも見捨てない、そうした部落解放運動を構築していこう。
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今年は、世界人権宣言が採択されて70年である。第2次世界大戦の惨禍を二度とくり返さないという反省のもと、1948年に国連総会で「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として採択された。しかし、いまだ世界各国でテロや戦争があいつぎ、人権・平和が脅かされている。日本でも、民主主義・立憲主義を顧みず、アメリカに追従する安倍政権は、憲法違反の「戦争法」や「共謀罪」を強行成立させ「戦争する国」づくりに向けての策動をますます強めている。
戦争は、最大の人権侵害であり、差別である。軍国主義への道をふたたび歩ませないため、憲法改悪と戦争を推進する一切の策動を阻止するため、青年の力を結集し、差別・戦争に反対する闘いを強化していこう。
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2016年12月、いまなお部落差別が厳しく存在することをふまえ、部落差別は許されないものであることを明記した「部落差別解消推進法」が成立、施行されたが、差別文書が大量にばらまかれる事件や公然とおこなわれるヘイトスピーチをはじめ、インターネット上でも悪質な差別情報や差別書き込みが蔓延している。なかでも、鳥取ループ・示現舎が「部落地名総鑑」の復刻版をインターネット上で拡散させるという悪質な差別事件については、現在、裁判闘争を展開しており、確信的に、部落差別を助長・拡散させる鳥取ループ・示現舎のおこないは決して許されないし、この裁判闘争にかならず勝利しなければならない。
この法律の意義を広く訴え、部落差別撤廃のとりくみを前進させるために、その具体化に全力でとりくむとともに、被差別マイノリティの連帯をより強固にし、包括的な人権の法制度確立に向けたとりくみをすすめていくことが求められている。
さらに狭山第3次再審闘争は、大きな山場を迎えている。この間、36回にわたる三者協議がひらかれるなかで、弁護団は202点にもおよぶ石川さんの無実を証明する新証拠を提出した。もはや、石川一雄さんを犯人とする論拠・確定判決は崩れ去り、無実は明らかになっている。
部落差別にもとづく権力犯罪であるえん罪・狭山事件を許さず、青年が狭山闘争の先頭に立ち、石川さんの無実を晴らすために、事実調べ・再審開始をかちとろう。
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部落差別の現実を語り、そして、知る。また、今日の社会に矛盾を感じ、差別のない人権が確立された社会を創造するために、自分たちが何をすべきか、仲間と力を合わすことの大切さや、自分の生き方を確認する場が全高・全青だ。
全国の仲間たちと、大いに語り、大いにきずなを深め合い、部落解放-人間解放の夢を語ろう。そして、この集会に参加してよかった、地元に帰って頑張ろう、と思える集会を創造していこう。
全国各地から高校生・青年の仲間が神戸に結集し、活発な意見交換や実践交流をおこない、各地の運動の発展につなげていくことを期待する。各都府県連・支部で、多くの高校生・青年に積極的によびかけをおこない、兵庫集会の成功をかちとろう。
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