「解放新聞」(2018.09.17-2875)
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「戦争法」が強行採決されて3年が経過しようとしている。
安倍晋三・首相は8月12日、地元・山口県で講演をおこない、「憲法改正は立党以来の党是であり、全ての党員の悲願でもあります。誰が総裁になろうとも、その責任を果たしていかなければなりません」とのべ、「憲法改正」への強い意欲をあらためて示した。
また、「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」として、憲法改正案をつぎの国会に提出できるよう、とりまとめを急ぐ考えを示した。
安倍政権での「改憲」、そして、憲法に自衛隊を書き込むことに反対している国民は、半数をこえている。主権者である国民の反対を無視して、「改憲」しようという姿勢は、立憲主義を踏みにじるものであり、絶対に許すことはできない。
2
沖縄は、6月23日、太平洋戦争末期の沖縄戦での犠牲者らを追悼する「慰霊の日」を迎えた。沖縄本島南部の沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園では、沖縄全戦没者追悼式がひらかれた。翁長雄志(おながたけし)・沖縄県知事(当時)は平和宣言で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をすすめる政府の姿勢を厳しく批判した。
沖縄戦での旧日本軍の組織的戦闘は、1945年6月23日に終わったとされ、県民と日米の軍人らをあわせた死者数は20万人以上といわれる。摩文仁は激戦地の一つで、平和祈念公園内にある「平和の礎(いしじ)」には、沖縄戦の犠牲者や県出身戦没者たちの名前が一人ずつ刻まれている。
翁長知事は平和宣言で、戦後73年をへても、国土面積の約0・6%にすぎない沖縄に米軍専用施設の約70%が集中している現状を強調。昨年来、米軍ヘリの不時着・炎上や窓落下、米軍機の沖合での墜落などがあいついでいることもふまえ、県民が過重な負担に苦しんでいると訴えた。史上初の米朝首脳会談があったことにも言及。東アジアの緊張緩和に向けた動きのはじまりと指摘し、普天間飛行場の辺野古移設を「唯一の解決策」とする日米両政府の方針について「沖縄の基地負担軽減に逆行しているばかりではなく、アジアの緊張緩和の流れにも逆行していると言わざるを得ず、全く容認できるものではありません」とあらためて批判した。平和宣言に普天間飛行場の辺野古への移設問題を盛り込むのは、知事就任以来4年連続となる。
安倍首相のあいさつは、沖縄戦の戦没者に哀悼の意を示し、沖縄の大きな基地負担について「何としても変えていかなければならない」とのべたが、辺野古への移設には今年もふれなかった。
浦添市立港川中学校3年の相良倫子(さがらりんこ)さん(14)が、沖縄県平和祈念資料館が募った第28回児童・生徒の平和メッセージ詩部門中学校の部の最優秀賞に選ばれた詩「生きる」を朗読。先人たちに不戦を誓った。
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広島・長崎に原爆が投下されて73年を迎えた。長崎市の田上富久(たうえとみひさ)・市長は、平和宣言で、核兵器による軍事力強化の流れに強い懸念を示したうえで、1年前に国連で採択された「核兵器禁止条約」に賛同するよう日本政府に求めた。また、国連トップとして初めて長崎の平和祈念式典に参列したアントニオ・グテーレス・事務総長は、あいさつで、核保有国が核兵器の近代化に巨額をつぎ込む一方、核軍縮が遅遅としてすすまない現状に懸念を表明した。また、「広島と長崎の原爆を生き延びた被爆者の方々は、ここ日本のみならず、世界中で、平和と軍縮の指導者となってきました」「私たちみんなで、この長崎を核兵器による惨害で苦しんだ地球最後の場所にするよう決意しましょう」と語った。
しかし、安倍首相はあいさつで、政府として「非核三原則を堅持し、核兵器国と非核兵器国双方の橋渡しに努め、国際社会の取組を主導していく」とのべ、「唯一の戦争被爆国」を名乗りながら「核兵器禁止条約」に反対している。
「平和への誓い」を読みあげた日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳(てるみ)さん(86)は、核兵器禁止条約に署名・批准しない考えを明言し続ける安倍首相を正面から批判した。13歳のとき、爆心地から3・2キロメートルの自宅で被爆した田中さんは、「浦上地帯の地獄の惨状を私の脳裏から消し去ることはできません」と語り、「全国に移り住んだ被爆者たちは、被爆後10年余り、誰からも顧みられることなく、原爆による病や死の恐怖、偏見と差別などに一人で耐え苦しみました」と訴えた。昨年、「核兵器禁止条約」に署名・批准しない考えを明言した安倍首相にたいして、「極めて残念でなりません」とのべ、「国家間の信頼関係は徹底した話し合いで築くべきです。紛争解決のための戦力は持たないと定めた日本国憲法第9条の精神は、核時代の世界に呼びかける誇るべき規範です」と多くの被爆者の思いを政府にぶつけた。
安倍首相は、二人の「平和の詩」「平和への誓い」をどんな思いで聞いていたのか? いや、二人だけの思いではない。戦争や原爆で家族や友人を亡くしたすべての人たちの反戦・平和・反核を願う思いを、踏みにじろうとしていないか?
安倍政権は歴史修正主義をもって戦後日本社会が選択した平和主義を破壊し、戦争する国に変えるため「秘密法」「戦争法」「共謀罪」をつぎつぎ強行採決で成立させ、ついに憲法を改悪しようとしている。そして、「戦争する国」づくりのため、米トランプ政権の要求に応え防衛省の予算を拡大し、自衛隊が海外で無制限の武力行使ができるよう道をひらくため、憲法9条改悪を狙っている。このような動きを、けっして許してはならない。
「戦争法」の廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回とともに、平和を希求し、核兵器のない世界を求める世論と運動を発展させよう。
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