「解放新聞」(2018.09.24-2876)
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大阪北部地震、台風や西日本を中心にした豪雨災害、北海道の震度7を観測した大地震など、全国で自然災害によって多くの犠牲者が出た。それぞれの地域では、いまだに復興の途上であり、とくにこれから冬に向かう北海道では、電力供給、道路整備など、生活再建に必要な課題を最優先にした支援が必要とされている。
2011年3月の東日本大震災では、大規模な公共事業が優先される政府の復興支援策で、住民の生活再建はいまだにすすんでいない。しかも、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのために、原発事故での放射能除染が終わっていないにもかかわらず、避難指示区域の解除と住宅支援策の打ち切りによる強制的な帰還政策がすすめられ、原発事故があたかも収束したかのような政府の姿勢である。しかも警戒情報が出されているなかで、議員宿舎で平然と宴会を繰り広げているような首相や閣僚が、被災住民の生活支援を真剣に考えることができるわけがない。
この安倍政権がすすめてきたのが、「特定秘密保護法」や「戦争法」の採決強行であり、「戦争をする国」づくりをめざした戦争推進政策である。とくに、沖縄・辺野古の新基地建設強行でも明らかなように、日米軍事一体化と米国追従のもと、社会保障費の削減をおこなう一方で、軍事防衛予算を増大させている。
さらに、「働き方改革」での裁量労働制導入の根拠としたデータのねつ造、森友学園に関する公文書の改ざん、イラク派兵での日報隠蔽、加計学園問題でのメモ発覚、財務省事務次官のセクハラ発言擁護など、まさに、ごまかしと隠蔽、居直りを続けてきた。安倍政権は、増大する首相自身や政権にたいする不信、不満をかわすために、日本銀行の「異次元の金融緩和」による株価高騰だけを成果とするアベノミクスで、景気回復を演出してきたのである。まさに政治と経済の私物化である。
しかし、アベノミクスの失敗はすでに明らかであり、実質賃金は上がらず、非正規労働者が増え、格差が拡大し固定化している。「一億総活躍社会」「女性の輝く社会づくり」なども、当然ながらまったく成果があがっていない。
今日、多発する差別事件や人権侵害の背景には、こうした閉塞化する社会への不満や不安があるのは明らかである。
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「LGBT(性的少数者)のカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり生産性がないのです」と、月刊誌に寄稿文を掲載した自民党の杉田水脈・衆議院議員は、賛同してくれる国会議員も多いと居直っている。当然、自民党本部にたいする彼女の辞職を求める大規模な抗議行動がおこなわれたが、まさに国策に協力することを強制する戦前回帰の政治こそ、安倍政権の本質である。その安倍政権がめざすものが、憲法第9条に自衛隊を軍として明記する憲法改悪である。さらに沖縄県知事選挙では、女性政策として「女性の質の向上」を公言する候補が与党の支援を受けている。
われわれは、こうした人権と平和の危機に抗して、「部落差別解消推進法」の具体化をすすめてきた。この間、法の周知では、自治体の広報紙での紹介、ポスターやリーフレットの作成など、全国的なとりくみを実現してきた。法の周知は、部落差別がいまなお存在し、部落差別撤廃に向けた広範なとりくみによって、部落差別のない社会づくりをすすめることを広く訴える活動であり、これからも継続していかなければならない。
さらに「部落差別解消推進法」に明記されている相談体制の充実や、教育・啓発の推進などは、国と自治体が一体となってとりくむことが求められている。しかし、「部落差別解消推進法」の制定をふまえて、施策を推進するべき法務省、文部科学省、厚生労働省、総務省などが、これまでの施策を漫然と続けているのが実情である。とくに法務省は、地方法務局と自治体との連携もなく、「部落探訪」など、インターネット上の差別情報への対応でも、いまだに具体的な方策もなく、鳥取ループ・示現舎による悪質な部落差別も放置されたままである。
「部落差別解消推進法」第6条にある部落差別にかかわる実態調査の実施に向けて設置された「6条有識者会議」からの提言にもあるように、まずは、インターネット上の差別情報、全国の法務局、自治体で集約されている部落差別事件を正確に把握し、部落差別撤廃に向けた施策をすすめるために、しっかりと分析することが必要である。
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「部落差別解消推進法」は部落差別がいまなお厳しく存在することを明記し、許されない社会悪として、部落差別撤廃に向けた社会づくりをめざすことを目的にしている。法律だけで部落問題が解決するわけでないのは当然であるが、われわれは、この「部落差別解消推進法」を活用して、部落解放行政の推進をかちとっていくために全力をあげなければならない。
「部落差別解消推進法」にたいして、「部落差別の固定化」につながるなどと反対することは論外として、いまだにこの「部落差別解消推進法」制定の意義を正しく認識できずに、厳存する部落差別と向き合うことを放棄するような言動がある。しかし、隣保館や支部での相談活動の強化、自治体での相談体制の充実、部落差別撤廃に向けた教育・啓発、とくに学校現場、自治体、企業での啓発活動などは、部落問題解決にとって、これまで以上に重要なとりくみ課題であることはいうまでもない。
さらに部落差別にかかわる実態調査についても、部落差別事件の集約はもちろんのこと、生活実態からあらわれてくる部落差別もきちんと把握するべきである。実態調査は、たんなる部落差別事件の調査ではなく、部落差別の実態を集約する調査であるべきだ。「特別措置法」が失効したからといって、歴史的社会的に存在してきた被差別部落がなくなるはずがない。行政施策のみに依存し期待する姿勢では、事業対象地区のなかにしか部落問題は存在しないのだろうか。
しかし、「部落差別解消推進法」は被差別部落だけを対象にした法律ではない。この国に存在する部落差別を撤廃していくための法律である。そのために、部落解放運動が、この「部落差別解消推進法」をしっかりと具体化し、活用することが求められているのであるから、われわれが、部落解放に必要な施策を要求することは当然である。そのための財源確保についても、この間、全国知事会、全国市長会、全国町村会にたいして要請行動にとりくみ、それぞれの政府への要望事項にも取りあげられた。
法の具体化という課題では、まだまだ大きな成果はあげられていないが、兵庫県たつの市、愛知県津島市、福岡県小郡市や飯塚市などで、「部落差別解消推進法」をふまえた条例にかかわるとりくみがすすめられてきた。
第2次中央集会では、この間のこうした成果をふまえ、これからの「部落差別解消推進法」の具体化に向けた活動の方向を確認し、政府交渉、要請行動を実施する。第2次中央集会に結集し、「部落差別解消推進法」具体化のとりくみを大きく前進させよう。
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