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NEWS & 主張

日韓交流の意義を再確認〜水平社博物館20周年シンポ

「解放新聞」(2018.12.03-2885)

博物館同士の交流に期待

公益財団法人奈良人権文化財団の川口正志理事長が開会あいさつ(10月27日・奈良県橿原市)

公益財団法人奈良人権文化財団の川口正志理事長が開会あいさつ(10月27日・奈良県橿原市)

 奈良県御所市の地に水平社博物館が1998年5月1日、水平社歴史館として開館(99年4月1日、水平社博物館と改称)してから20周年を迎えたのを記念して、国際シンポジウム「水平社創立の思想を世界へ」が10月27日、同県橿原市・橿原文化会館小ホールでひらかれた。県内外から200人が参加した。

 水平社博物館を運営する公益財団法人奈良人権文化財団の川口正志・理事長が「22年で全国から33万人をこえる見学者にお越しいただいた。水平社創立当時とどう違うのか、そこにどんな尽力があったのか、歴史を知らずに明日は見通せない。改めてのご協力とご活用をお願いしたい」と主催者あいさつ。来賓として、村井浩・奈良県副知事があいさつしたのち、吉田育弘・奈良県教育長、奥山博康・奈良県議会副議長、秋元直樹・御所市教育長、伊藤満・奈良県連書記長が紹介された。

 奥本武裕・奈良県立同和問題関係史料センター所長の司会で、栗原祐司・京都国立博物館副館長から「人権博物館の国際発信-「世界の記憶」登録の意義」と題し基調提案。水平社博物館が国内30団体が加盟する人権ネット(人権資料・展示全国ネットワーク)に加え、世界で約100館が加盟する国際人権博物館連盟(FIHRM)にも日本で唯一加盟している意義、水平社と衡平社の交流・連帯を記録した水平社博物館所蔵資料が、ユネスコのアジア太平洋地域「世界の記憶」に登録された意義などを語り、「政治外交関係とは別に、日中韓の博物館同士の平和的文化交流に期待したい」としめくくった。

日韓で共同の実証研究を

コーディネーターの井岡康時さん

コーディネーターの井岡康時さん

 シンポジウムは井岡康時・天理大学講師のコーディネートで、3報告を受けて討議した。報告①「全国水平社創立の世界史的意義」を朝治武・大阪人権博物館館長が、報告②「‘京城(キョンソン)地方法院資料’の現況と活用」を韓亘煕(ハン・グンヒ)・国史編纂委員会史料調査室長が、報告③「水平社と朝鮮衡平運動-交流・連帯の歴史とその問題点-」を水野直樹・朝鮮衡平運動史研究会代表が、それぞれ担当。

 人権ネットに加盟する大阪人権博物館は自主運営を続けながら大阪市との裁判を闘っていると前置きした朝治さんは、①帝国主義体制と社会主義体制②帝国主義国と民族解放勢力③帝国主義国家間④国内の資本と労働、の4つの基本矛盾を、差別撤廃と結びつけようとしたのが水平社の世界史的意義だとまとめた。アジア太平洋地域「世界の記憶」に登録された水平社博物館の資料に関連資料をさらに追加し、「世界の記憶」国際登録に向けて尽力している韓さんは、『朝鮮衡平運動史料集』にも収録された衡平社・水平社の交流記録を中心に、国史編纂委員会と高麗大学校が所蔵する1900年代前半までの「京城地方法院資料」を紹介した。朝鮮衡平運動史研究会で新史料や未刊資料類を史料集続編として翻刻・編纂中の研究会代表として水野さんは、「白丁(ペクチョン)」の歴史を高麗時代から衡平社運動、水平社との交流へと辿りつつ、水平運動と衡平運動の交流を具体的に明らかにし、問題点を検討する資料の意義をのべた。

左から朝治武・大阪人権博物館館長、水野直樹・朝鮮衡平運動史研究会代表、韓亘煕(ハン・グンヒ)・国史編纂委員会史料調査室長

左から朝治武・大阪人権博物館館長、水野直樹・朝鮮衡平運動史研究会代表、韓亘煕(ハン・グンヒ)・国史編纂委員会史料調査室長

 討議では、水平社と衡平社の交流に植民地支配した側とされた側の意識の違いがあったことを認める必要があること、日韓での基礎資料の発掘・共有と実証的研究が重要であること、崩し字とハングルの判読で日韓が相互に長所を発揮できること、などについて認識が共有された。予算配分の偏りで博物館の文献・資料の管理や公開が厳しい状況にある日本で、水平社博物館は重要性を増しており、国境を越えて盛りあげていきたい、とまとめられた。

水野さんが韓国で学術賞

 水野さんは6月27日、韓国・全南大学校で後廣(フグァン)学術賞を受賞し、「人権の歴史学」をテーマに特別講演をおこなった。

 日本で近年、とくに東アジア関係史の領域で勢いを増している歴史修正主義に抗し、日朝の近現代史や在日朝鮮人の歴史、なかでも日本による朝鮮にたいする植民地支配、「創氏改名」、在日朝鮮人の参政権などについて研究を続けてきたことが評価された。

 同賞は、金大中・元大統領の精神を受け継いで、民主・人権・平和の実現のため優れた貢献をした世界各地の研究者・団体を表彰しようと、同大が設けたもの(後廣とは金大中・元大統領の号)。

 

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